柴犬を探しに行ってZARDになるオトン
僕が小学生の頃。
バリしょぼい狭小スペースを有効活用した個人経営のペットショップで、生後2週間足らずの柴犬(てつ)と出会いました。
てつを見た瞬間に心を奪われました。
横にいたオトン&オカンも、そうだと思います。
なぜなら、小声で話す両親の会話の断片から〈買う方向で話し進んでるやん感〉が滲み出ていたからです。
決め手になったのは価格も大きかったと思います。
当時の柴犬は15〜20万以上することもざらでした。
そんな中、てつは小屋付きで75,000円(内税)。
「費用対効果エグすぎ犬」です。
僕達は、てつとの出会いに幸せを噛み締めました。
問題はここからです。
河本家は犬と暮らすのが初めて。
飼い方を知りません。
当時は今ほどネットも普及していません。
ということで、オトンが店主からご指南を賜ることに。
店主は70〜80代ぐらいのジイさん。
その横に、同じ年齢ぐらいのバアさんもいました。
ジ「この子(てつ)は凶暴やからな」
バ「そんなことないわ!優しい子やわ」
ジ「初めて犬飼うっちゅうて、柴はむつかしいけどな」
バ「そんなことないわ!この人らやったら大丈夫や」
ジ「メシは夜に1回だけでかまへんからな」
バ「そんなことないわ!3回やらなかわいそうやんか」
正しい知見を吸収したいのに、オジイとオバアの意見が真っ二つに割れて話しが前に進みません。
立場上の店主はオジイですが、実質的に権力を握るのはオバアという、ねじれ国会構造になっていました。
でも、オトンは必死に聞いていました。
店主の言った事を忘れまいと、
ジ「生後1ヶ月は、むやみに外へ出さない」
父「生後1ヶ月は、むやみに外へ出さない」
店主が喋るたび、ブツブツと復唱していました。
店主がすべてのポイントを喋り終えると、暗記できたかを確認するためにオトンが1人で言わされていました。
父「生後1ヶ月は、むやみに外へ出さない」
ジ「(うなずく)」
...なんなん、この時間?
父「ご飯は、3回?」
ジ「メシは夜1回!」
父「あ...メシは夜1回」
父「散歩は.......」
ジ「20分!」
父「あ、すんません。散歩は20分」
ジ「ええ加減覚えんかいや!」
父「すんません」
ジ「はい、もういっぺん最初から!」
父「ごはんは3回」
ジ「1回!」
待って、落語家さんの稽古やってない?
オトン、店主のこと師匠や思てない?
すると、痺れを切らしたもう1人の師匠が
「そんなことないわ!朝・昼・晩の3回に分けてあげたらええんやんか」
収拾がつきません。
その後も延々と続く、指南という名の水掛け論。
オトンは、犬風亭ジイ太と、林柴バア子の間で板挟み状態でした。
僕達は素人なので、どちらの意見も間違いとは言えないし、両者から犬愛はヒシヒシと伝わるし。
信じるべきはどっちなん?
オトンは、実にZARDだったでしょう。
しかし、流派の違う犬風亭一門と林柴一門ですが、1つだけバッチリ合った意見がありました。
それは「愛情をもって大切に育てる」ということ。
今そんなんええねんと思いました。
師匠方を疑っていたわけではありませんが、てつを連れて帰った数日後、念のため動物病院の先生に相談。
長年の経験に基づく師匠方の意見、そして医学的根拠に基づいた先生のアドバイスを聞き、数学力に長けたオトンが河本家オリジナルの育成方針を作り上げました。
そして、てつは元気に育ちましたとさ。
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