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塗装現場からのメッセージ《第18回》シリコーン塗装の特徴と使用例

本コーナーでは、豊富な経験と実績を誇る茨城県稲敷郡阿見町の塗装専業メーカー、㈱技研・代表取締役 宮本勇気(みやもと ゆうき)氏が、塗装現場におけるさまざまな課題解決のためのヒントを伝授します。

※本記事は「塗装技術」誌に掲載されたものです

シリコーン塗料と聞くと、ハジキや、付着不良などの塗装不具合の可能性を連想する方も多いのではないだろうか。だが、これは何の知識もなくシリコーン塗料を使用した場合である。塗料としての特徴を正しく理解しておけば、不具合なく使用することができる。
今回は、当社(㈱技研)で行っている塗装の例と対策や注意点を紹介する。

シリコーン塗料とは

シリコーン塗料はシリコーン樹脂を主成分とする塗料のことである。
耐熱性・撥水性・非粘着性・電気絶縁性などにおいて多くの優れた特徴を持ち、各メーカーからさまざまな製品が発売されている。種類としては、耐熱塗料のようにシリコーンをメイン樹脂として使用しているストレートシリコーンタイプと、補助的役割として使用する変性シリコーンタイプがある。当社でも、食品メーカーや厨房機器メーカーへシリコーン塗装の製品を納入した実績が多数ある。

代表的な特徴と用途

⑴耐熱性

熱分解温度が高いため、200℃ 以上の熱に耐えることが可能。耐熱性が求められる食品用の型や、自動車用マフラーなど各種機械設備に塗装可能。代表的な耐熱塗料の1 つである。

⑵耐寒性

-40~55℃ の耐寒性がある。条件によってはそれ以上の低温にも耐えられる。低温で使われる冷凍食品用器具などに応用することが可能。

⑶撥水性

分子中のメチル基の配向により、硬化物の表面に加工した場合に水接触角90~150°という強力な撥水性を発揮する。

強力な撥水性

⑷離型性

高い非粘着性の性質を生かして、製パン用のパン型への塗装や、塗装用ジグ、印刷用ロールシートなどに使われている。

非粘着性は食品工場において有効

⑸絶縁性

高温でも電気絶縁性の低下が小さく、広い温度範囲および周波数領域で優れた絶縁性を発揮する。電子部品や各種機械設備の絶縁材料として重宝されている。

⑹安全性

化学的に安定しているため、食品衛生法による適合品(厚生省告示第20 号)として認められている。このため、食品を扱う厨房用品や医療部品などに使用することができる。

シリコーンには、他にも耐候性・耐水性・耐薬品性・耐油性・滑り性などに特徴があり、さまざまな場面で使用されている。

その他の塗料との相性

シリコーンは撥水性や撥油性に優れているが、他の塗料を寄せ付けず、ハジキや密着不良の原因そのものになる場合がある。また、シリコーン塗料は、基本的には硬化した塗膜への上塗りや再塗装ができない。再塗装する場合は塗膜を完全に除去する必要がある。
また、その他の塗料との道具や作業者などの共有も難しいため、共有する際は注意が必要である。
シリコーンの影響を受ける代表的な塗料としては、製菓・製パン用の離型コーティング剤や、シリコーン系模様塗料のハンマートン塗料やクラック塗料がある。

製菓用の菓子型

シリコーン塗料を上手に使うために

シリコーンが含まれているからと言って、シリコーン系塗料の全てが他の塗料に影響を及ぼすわけではない。当社では、他の塗装へ影響がある場合は隔離した別な環境で使用することで対応、シリコーンの含有量やシリコーンオイルの含有量によって使用する工場を分けている。

塗料の特徴を理解し、正しく使う

シリコーン塗料に限らず、塗料の成分や特徴を理解することができれば、使い方や塗装に必要な環境がわかるようになり、さまざまな塗料への応用や不具合への対策が可能になる。
塗料を扱う塗装業者としては、材料としての塗料の特徴と成分を理解し、正しく使用することで、塗膜の性能を十分に発揮することができると考える。

㈱技研…1985 年1 月創業。シリコン加工・テフロン加工・金属およびプラスチック部品の塗装・印刷・組立その他加工全般を手掛ける。取扱品目は製菓、製パン用天板、住宅関連部品、自動車部品、弱電部品、時計部品、その他関連商品・各種部品。

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