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塗装現場からのメッセージ《第19回》塗料起因の塗料不良|内容・対策・塗料の管理

本コーナーでは、豊富な経験と実績を誇る茨城県稲敷郡阿見町の塗装専業メーカー、㈱技研・代表取締役 宮本勇気(みやもと ゆうき)氏が、塗装現場におけるさまざまな課題解決のためのヒントを伝授します。

※本記事は「塗装技術」誌に掲載されたものです

製造業における塗装工程は重要な部分であり、その品質は製品の最終的な外観と耐久性に大きな影響を及ぼす。
塗装工場内での塗装不良は、さまざまな要素が結合して生じる可能性がある。その要素を大別すると以下の5 項目が挙げられる。その中でも塗料自体の不具合について少し深く掘り下げてみる。
塗料の不具合は、塗装不良の原因に自社で管理できない項目もあることで、見落としやすいものの1つと言える。
ここでは、「塗料の状態や質の見極め方」「塗料製造時に発生しやすい不具合や事例」を、自社のケースを参考に紹介する。


塗装不具合の5つの分類

⑴異物の付着

塗装面の異物、ゴミの付着(当社でいちばん多い不良内容)。

《対策》
・塗装前の素地をきれいな状態で塗装する
・塗装前の洗浄や塗装作業場所は定期的に清掃し、ダストフリーを保つ

⑵塗装環境

塗装作業時の湿気や温度が適切でない場合、外観や塗膜性能が設計通りの塗膜ができない。

《対策》
・塗装作業場所の温度と湿度を定期的にチェックし、塗料の製造者が推奨する範囲内に置く

⑶塗料の質

質の低い塗料を使用することで、表面が均一でない/色が不均一である/早く劣化する、等の問題が生じる。

《対策》
・高品質な塗料を選び、保管方法と調整に関する塗料メーカーの規格内で使用する

⑷塗装方法

適正な塗装方法でない場合(塗料が多すぎる、少なすぎる、均一でない等)、見た目や塗装の耐久性に影響を及ぼす。

《対策》
・作業者の塗装技術が重要
・必要に応じて塗装ロボットを導入することも有効

塗装ロボット

⑸塗料の選定と行程

素材に合わせた塗料を選定されていない場合、塗膜の付着不良や、塗料が剥がれやすい等の問題が発生。

《対策》
・適切な塗料を使用する
・適切な前処理を行う
・研磨、洗浄し、必要に応じてプライマーを塗布する


塗料が起因する不具合と対策

⑴塗料中の異物

塗料の製造方法に誤りがある場合や、輸送中の保管の際に汚染がある場合、不具合が発生する。

《対策》
塗料を十分に撹拌することが大前提。塗料の保管等に問題がなければ、塗料をろ過することで解決できる場合が多い。ろ過フィルターの粗さ等は塗料に合わせて適宜選定していく。
【ポイント】メタリック塗料の場合、フィルターの番手によってはメタリック粒子をろ過することになる。この場合は外観色に影響が出てしまうため、フィルターなどの粗さに注意が必要。

⑵保管管理による塗料の変化

塗料を長期間保管した場合、塗料の分離・固形化・色の変化が発生する。塗料調合時の見た目に変化がなくても、成膜時にはハジキ・異物のような現象が発生する。

《対策》
塗料は樹脂や顔料など複数の成分から成り立っており、時間の経過と共にこれらが自然と分離する傾向にある。よって塗料メーカー指定の保管と管理方法、定期的に塗料を撹拌することが重要。
また、塗料メーカー推奨の保管を行っていた場合でも、不具合の発生する事例もある。できる限り早く塗料を使い切る/自社の基準を作る/信頼できる塗料メーカーを選ぶ/塗料メーカーと情報共有や連携をする、等が理想である。

⑶メタリック粒子の凝集・変色

メタリック塗料には金属粉末が含まれている。一時保管されたものはその金属粉末が塗料内で凝集し、一塊になる可能性がある。また、メタリック自体が酸化などにより変色してしまう場合もある。

《対策》
定期的に塗料を撹拌する、凝集しやすい場合は塗料を塗装直前でろ過することである程度防ぐことが可能。

メタリック塗料の使用例

塗料を購入し、使用する塗装業者としての役割として、安定した高品質の塗装製品を一貫して顧客へ提供することであると考える。そのためには、塗装の適切な実施だけでなく、塗料を含めた塗装行程全体の最適化にむけて、継続的な改善に取り組む必要があると考える。

㈱技研…1985 年1 月創業。シリコン加工・テフロン加工・金属およびプラスチック部品の塗装・印刷・組立その他加工全般を手掛ける。
取扱品目は製菓、製パン用天板、住宅関連部品、自動車部品、弱電部品、時計部品、その他関連商品・各種部品。

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