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塗装現場からのメッセージ《第10回》「工場見学」その意義とメリット

本コーナーでは、豊富な経験と実績を誇る茨城県稲敷郡阿見町の塗装専業メーカー、㈱技研・代表取締役 宮本勇気(みやもと ゆうき)氏が、塗装現場におけるさまざまな課題解決のためのヒントを伝授します。

※本記事は「塗装技術」誌に掲載されたものです

普段の業務の中で、新規の客先等から「工場を見学させてほしい」と言われることが多々ある。数年前までは、客先の業種や規模・取引内容に応じて、場内の見せる範囲や内容を精査して制限したり、見学そのものをお断りしていた。しかし現在は、要望があれば基本的には全ての部分を公開する形で案内している。
今回は、当社(㈱技研)の工場見学に関する考え方の変化と現状を簡単にまとめた。

工場見学は歓迎!

取引中のお客様はもちろん、初めてご来社いただいた方も、率先して工場内に案内している。
塗装工程や作業内容、管理内容を見ていただき、お預かりした製品がどのように塗装され、どのような管理のもとで完成していくのかを伝えていく。
見て、感じていただくことが、顧客への安心感や信頼が得られるものと考えるからである。

技研工場の外観

これまで工場内を見せたくなかった理由

以前は自社のノウハウが他に流出するのを防ぐ目的で、取引の始まる前のお客様はもちろん、取引のあるお客様でも工場内への立ち入りをお断りしていた。
作業現場には、創業以来から積み重ねてきたノウハウや工程・治工具などさまざまなものがある。また、塗装の知識がある人間が見ればすぐにノウハウがわかってしまう事柄や、他社にできない塗装品の課題解決のヒントや答えもたくさん存在する。

  1. 工場見学をすることで情報が漏れ、同業他社に真似をされてしまう

  2. 工場見学で得たノウハウからお客様自身で内製化してしまい、受注が減ってしまう

以上が工場見学をお断りしていた主な理由であり、実際、そのような事例もあった。

なぜ工場内を見てもらおうと思ったか

工場見学を受け入れるようにした理由は、以下の通りである。

  • 近年ではインターネットなどの情報化も進み、調べればわかるようなことが増えてきた

  • 工場見学をしていただくことで、他の塗装会社との違いをアピールできる

  • 完成品を見ただけではわからない過程や思いを伝えたい

  • 塗装会社としてのこだわりや、知識・ノウハウがあることを見てもらいたい

  • そもそもノウハウも見ただけでは、簡単に真似できない技術を持っているという自負がある

  • 近年の塗装業界の技術レベルや立ち位置を考え、メリットがデメリットを上回ると判断

完成品を見るだけではわからない付加価値を伝える

工場内を見ていただくと、見学者に、

  • 他社との違い

  • 塗装品1つひとつにどのような手間をかけているのか

  • どのような雰囲気で進めているのか

  • 塗装された完成品を見るだけではわからない付加価値

などを伝えることができ、他社との差別化・独自性・自社のカラーを打ち出せる。
工場見学の際、顧客の感想として「いい雰囲気でお仕事をされていますね」と、お褒めの言葉をいただくことがある。これも会社としての付加価値であると考える。

ここで述べてきた内容は、塗装業者に限ったことではなく、「ものづくりを行う会社全てに共通すること」とも考える。高品質や短納期がもはや当たり前の時代である。自社の製品に関する知識や経験や思い、その製品が完成するまでの一連の過程を含めた1つの価値として捉えてもらい、工場見学やインターネット発信といったものを通じて顧客や社会に伝えていくことが大切である。

㈱技研…1985 年1 月創業。シリコン加工・テフロン加工・金属およびプラスチック部品の塗装・印刷・組立その他加工全般を手掛ける。取扱品目は製菓、製パン用天板、住宅関連部品、自動車部品、弱電部品、時計部品、その他関連商品・各種部品。


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