意味のイノベーションの意味

山縣先生に紹介いただいた記事が、今の関心事をとても捉えていて。

意味のイノベーションとは、機能や見た目だけでなく「プロダクトやサービス体験を通じて、ユーザーの感じる新たな情緒的・心理的価値(心地よさ、素敵な思い出、喜び、繋がりetc)を提案するイノベーション手法」のことです。この情緒的・心理的価値がプロダクトやサービスの「意味」となり、現代において、生活者がプロダクトやサービスを購入する理由だと解釈できます。

モノが余っている豊かな時代だから、こんな機能がありますってだけじゃ売れなくて、消費者一人一人にとってどんな意味があるか、どんな体験を提供してくれるか、そこまで考えないとダメだよねー、でも消費者の好みなんて千差万別だし手探りでやるしかないよねー、みたいな話です。

意味のデザインは、人間心理と密接に絡んでいるのにもかかわらず、どんな体験に人々はmeaningful(心理的に価値がある)な意味を見出すのかといったポイントについては議論があまりされていません。
絶対的な価値というのが存在しないため、デザイナー達は手探りで進めるとの共通認識でした。意味のインサイトリサーチとは、ユーザーの広い生活文脈における「意味」を探索すること、つまり、ユーザーの「価値観」を根気強く理解するアプローチだということです。

これは日本とか先進国ではだいたい共通認識だけど、途上国だとまだまだ目指すべきゴールが明確だから絶対的な価値も見つけやすい、という指摘が番外編のところに書いてありました。

先ほど書いた曖昧な価値観を理解することが難しいという話の反対で、途上国では明確であるといった主旨の発言をされています。素直にインタビューをしたり、行動観察をつぶさに行なっていけば彼らにとってのmeaningfulness(価値あるもの)を理解することは先進国ほど難しくないと言っていました。

さて、私が考える人間は、そんなに複雑なものではないはずです。個性っていろいろあるような気もしますが、全然ない気もします。血液型占いだとさすがに大雑把だけど、十二星座とか60タイプの動物占いくらいまで分ければほぼ網羅できるんじゃないかと思います。
私が気に入っている心理学のPCMという理論でも6つのパーソナリティについて、ベース(価値観)とフェーズ(欲求)のかけあわせで36通りに分類していました。
http://www.kcj-pcm.com/6/

途上国では価値観が分かりやすいけど、先進国では価値観が多様化して見つけられないというのは、要するに先進国の価値観がちゃんと見抜けていないだけじゃないかと思うわけです。
モノが余ってるのに何が欲しいかを聞いたら、みんなが千差万別の答えをするのでよく分からない、ユーザ自身も分かっていない、っていうのは、当たり前で。だって欲しくないんだもん。そこを個別ケースに落とし込んでギリギリ欲しいかもしれない線をあぶりだしていくのが大変なは当然です。

だいたい人間は誰かの役に立ちたいものです。困ってないのに誰かの助けを借りたいとは思わないものです。与えたい人が過剰で、欲しい人が希少になっています。もはや、欲しいというだけでタダでものがもらえることもあるくらいです。amazonの欲しいものリストを公開しておくと勝手にモノが送られてくる時代です。
だから、みんなが何を欲しがっているかと言えば、自分が役に立てる、何かを与えられる相手が欲しいわけです。明確な答えです。

でもちょっと待てよ。日本国内でも貧困が深刻化していて、格差はかなり広がっているというニュースも聞く。与えたい人だけじゃない、欲しい人もかなりたくさんいるはずではないか?

仮説1:与えたい人は、与えたい相手がいる。与えたい相手の要件から外れた人には何も与えたいとは思わない。
仮説2:欲しい人にもプライドがあり、何でも欲しいわけではない。

確かに、すごく貧困で困っているけれど、生活保護を受けるくらいなら死んだ方がマシだ、みたいなコメントを聞いたこともある。世の中には与えたい人と欲しい人が両方いても、何かしらの心理的要因でマッチングしないらしい。
でもそこさえクリアすれば、こんなにも明確な潜在ニーズがあるんだから、ビジネスにならないわけがないでしょう。

ということで課題図書が出ていたので私も読んでみようと思います。


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