勧誘恐怖症

あらゆることに勧誘されたくない。無駄に歳を重ねてしまったので、必然、酒の席へ誘われる事が多くなってきた。いい歳したおっさんだから、そういう場では何かしらの顔を作らなくてはならなくなって、次の日の朝、自分が醜悪だと嫌悪する。

ガキの頃、家族はオレがクラス会に行かないことを責めた。「誘われてるうちが華」らしい。お前たちはまぁそうなんだろうが、オレは違うんだ。しかしその時は根拠も自らを語る言葉も持っていなかったから仕方なく全く行きたくない所へ行って全く面白くない話題に全く心のこもってない相槌を打っていた。それから十余年経って思うのは、オレは人間と接するのが壊滅的にヘタクソだということだ。あの頃のオレが今のオレを見たらどう思うだろうか。ゴミカスを見る様な目をするだろう。今のオレと同じ様に。

生きることは疲れる。年月を経れば経る程、顔面を作らなくてはならない場面が増えてきた。オレは人生を拷問の様に感じる。わけも分からず投げ出されてクソみたいな頭でひねり出した下らない理屈に従って走り回り、最期は虚無に帰る。途中で投げ出す事は難しくて大概絶望的なお節介が現れて自分の足枷がどれ程ピカピカしているか語り出す。お前は足枷を磨くのが好きなのかも知れないが、オレは消え去りたいんだ。配られたカードで勝負するしかないと人は言うが、オレは勝負を降りたり、違うゲームで遊んだりする選択肢が欲しかった。誰かが途中でチップがなくなって名残惜しそうにテーブルを離れるのなら、代わりにオレのチップを一つ残らずくれてやりたい。

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