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お163話・こんな長い距離肩車してくれた女の子初めて〜女の子におんぶしてもらいたい男子

 クミは、ボクを肩車したまま、道路沿いの公園に入ると

「私、これから部活に合流するんで」と降ろされてしまった。クミの所属してるハンドボール部の部活練習が、この公園の奥に隣接する運動公園で始まるところで。しかし、もうクミは、ボクを全力疾走おんぶして肩車してで、体力消耗しきっていたので、どうしようかなぁ、もう汗でびしょ濡れだし・・。

「そうだ、部活のみんなと合流するところまで、ボクを肩車してって合流し、他のみんなを驚かしてやっちゃえば? 体力へろへろの口実にもなるし、汗でびしょ濡れの説明にもなるし、いいじゃん」と。

 ボクは、無言のままのクミを地面にしゃごませて、クミの後ろ首の上に跨るようにドッカリと座った。もう、さっきのバス停での実績から、クミは小さいながらも、ボクの体重を地面から持ち上げられるであろうことは想像ついていたので、ボクは安心して余裕の気持ちで、クミの上に座り「立ち上がれるよね」と。

 クミは無言で足腰に力を入れ込むと、小声で「うっうっうー」と言いながらも、ボクを乗せて立ち上がってくれた。女の子の肩車の上から眺める公園散歩の景色は、なかなか花園チックでイイ感じ。桜の花は散り、青々とした葉になっていたが、低い小さ目の木の点在する公園なので、肩車してもらってる高い目線からの景色の立体感がなかなか感動的。女の子は、運動公園の合流場所に向かって、黙々と歩いてくれているので、上に乗ってるボクが、この花園チックな光景にシアワセを感じてる、なんて心は読めてないかもしれない。

 女の子にしてもらう肩車の良さは、上で能天気に幸せを堪能してるボクと、下で重いボクを支えて重労働している女の子の、両者の脳内が、ぜんぜん違う世界にいるところ。おんぶのように、お互いの身体の接触面積が広くないので、女の子の大変さが、上に乗ってるボクには、あまり濃くは伝わってこない。

 ただ、前話でも記したように、女の子の頭に手を触れると、ものすごく体温が熱くなっていることから「女の子にとっては、かなり大変なこと、させてるんだろうな」という想像はできるが、あくまで、想像であって実感ではないので、能天気に上に乗ったまま、あまり罪の意識も持たずに、シアワセを堪能していられる。

 運動公園のフェンスを越えると、部活のみんなとの合流地点は、コートの向こう側だったので、さらに意外と遠く、こんな長い距離、クミは肩車で行けるだろうか、との不安もあったが、クミもそう感じたようで、急ぎ足で向こう側に向かって歩き始めてくれた。ゆっくり歩いて長い時間ボクの重みに耐えるよりも、頑張って早くゴールインを選ぶところ、さすがスポーツ女子。

 合流場所にいる4~5人の女子たちは、ボクたちの肩車姿に気づいて

「クミ~、誰を肩車してんのよ? なんでなんで?」とワイワイ盛り上がり。こうなってしまったら、スポーツ女子のプライドとして、、途中で肩車を降ろすわけにはいかない。「うわー、凄い。男の人を肩車してきてるー」

 そんなこんなな盛り上がりの中、クミはボクを肩車したまま、みなさんに合流することができた。クミはすぐにボクを降ろそうとしたが、

「待ってクミ、スマホで記念写真撮ってあげる。あれっ、動画になっちゃったー、

ちょっと待ってぇ、動画もありでいいっかぁ」と。

 そんなこんなで、ボクは女の子の肩車に乗ってる時間がどんどん長くなってゆくのはサービスタイム的。クミは「重いのよ、もう限界ぃぃ」と言いながら、ボクは、ついに降ろされてしまったが、公園からここまで、かなり長い距離を肩車してもらってきたことになる。なんと、お得な・・、ハンドボール女子たちとの出会いだろ。他のハンドボール女子にも乗りたいなんちゅー浮気心は封印して、ボクが乗るのはクミちゃんだ、と心に。

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