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【tinderの片隅にある不倫】大学生の特別なおもてなし

冷凍庫をあけた。
そこには必ず買ってきた有料の氷と炭酸水がある。

「買ってきた氷で飲むお酒って特別に美味しいよね」

そうみかが言ってから、みかが来る日には必ず氷が買ってある。
有料の氷は大学生の彼のおもてなしなんだろう。

本当は外で会ったっていい。
でもこうやって彼のトレーナーを借りて、部屋のお酒を飲みながら、ご飯をつくってもらって、セックスしたり、アマプラを見たりして過ごすのが好きで「見つからないように念の為にお家デートにしよ」って言ってある。

私はこの部屋に来るたびにスラムダンクを1巻読んで、それが今日で5巻目になる。

「今日は油淋鶏にしようと思ってる!買い物行ってくるね」

私にビールを買ってきてねと2千円渡す。

彼がアパートの扉を開けて少し。表通りを歩くころ、ベランダのドアをガラッと勢いよくあける。
そしたら彼がこっちをむいて手を振った。

テレパシーかな。

普段鳥胸肉しか買わない彼が鶏ももをかってきた。
私のプレモルとハーゲンダッツがあった。
そのハーゲンダッツを口移ししながら食後に絶対始まるな。と思いながら薄暗い柔軟剤の匂いのするキッチンで、冷凍庫にしまう。
私も同じ柔軟剤を使っている。

ビールを飲みながらご飯が出来上がるのを待つ。

「僕の油淋鶏には刻んだきゅうりが入ってるんだよ」

そうキッチンで言う彼の声を夢の入り口でききながら「ご飯できたよ」ってキスで起こされるまでちょっとだけ寝ようと潔く睡魔に負けた。

ここが私のアナザースカイ。


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