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米余りから農業を考える

最近大豆の集荷で各地の営業倉庫に行くとどこの倉庫会社でも「今年の米が全然動かない、令和2年産の大豆を置くスペースが無い」という話しをよく耳にするようになりました。
 確かにここ近年米が余っている事は知ってはいましたが、今年は特に深刻な状況らしいので、いろいろ調べてみました。
 日本の米は1960年代およそ1,450万トン生産されていたそうです。その時代は国民一人あたり年間約120kgの米を消費していて、生産された米がほぼ一年間で消費されていた時代です。近年では生産量がおよそ半分の730万tで国民一人あたりの消費量が62kgくらいまで減少しているそうです。
 主な原因は米に変わる食生活の変化や、高齢化、人口減少などが考えられますが、今年は追い打ちをかけるように新型コロナウイルスの影響で外食用の需要が大きく落ち込んだ為、前年に比べ約22万トン消費が減ったそうです。
 全国の営業倉庫に残っている元年産の食用の米がなんと200万トンも余っている状況で、尚且つ令和2年産の食用の米が全国でほぼ例年並み取れていることを見ると、来年の今頃は400万トンの米が余っている可能性が十分考えられます。
 一言で200万トン、400万トンと言ってもわかりにくいと思いますので、大豆の消費量と比べてみましょう。日本国内で年間消費されている食用大豆の量は、国産大豆、輸入大豆を合わせておよそ100万トンです。国内で消費されている食用大豆の倍の量の米が行き先もなく倉庫に保管されているこの状況は、国や農協、農家さんだけではなく、国民一人一人が考えなければいけない課題だと考えられます。
 このような状況なので、令和3年産の米の作付け面積は減ることが予想されます。土地柄大豆や麦、そばなどを作付け可能な産地は来年以降米から大豆、麦、そばの作付け面積が増えることが予想されますが、設備の問題や天候の向き不向きの等の理由で地域によっては転作が難しいところもあると思います。米余りの為、米の価格がより一層下落していけば、高齢化、担い手不足などの理由により農業をやめる農家さんもでてくるでしょう。
 農産物全体で言えることですが、需要と供給のバランスが上手くとれないと、余剰になれば価格が下がる、下がれば生産意欲がなくなりますし、逆に不足すれば価格が高騰し、消費意欲がなくなる。この辺のバランスを上手くとっていくことが今後の日本の農業を考えていく上で大切なことだと思います。
 私も米の消費に貢献しようと、ラーメン屋さんに行ったら半ライス、コンビニに行ったらパンではなくおにぎりを買おうと決めました。せっかく痩せたけど、また戻ってしまいそうです(泣)
 最後に今年は新型コロナの影響でオリンピックの延期を始め、我々が経験した事のない大変な一年になりました。弊社も産地巡りやお客様へのご訪問を自粛させて頂いていた時期もありました。
 来年こそはどうかこの危機を脱し、今年お会い出来なかったお客様と是非お会いしたいです。来年は皆様にとって少しでも良い年になる事を祈願致します。

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