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常識や慣習を打ち破る社員数21名のベンチャー会社 -鎌倉 長谷のウェディング会社Daiyuの経営戦略‐

ウェディング業界で異色の会社がある。

数年前から、世の中では結婚しても結婚式を挙げない「ナシ婚層」が増え、更にここ2年間はコロナウィルスという猛威に、業界全体に激震が走った。「結婚式」というサービス自体の是非が問われ、大手企業の倒産、買収、大規模な人員削減、別事業に力を注ぐ方針変更といったニュースが相次いだ。

そんな中「レストランウェディング(1チャペル1バンケットの貸切型)」という事業形態で、コロナ前とほぼ変わらず、年間200組様のご婚礼を行っているのが、株式会社Daiyuである。

《ゼクシィ調べによる会場のお客様来館回復率データ(コロナ前2019年比)》首都圏平均44%、神奈川県平均50%、湘南鎌倉エリア平均66%。
Daiyuが運営する会場「萬屋本店」は92%


株式会社Daiyuは鎌倉 長谷にある社員数21名のベンチャー企業だ。
自社会場「萬屋本店」は都内や横浜に比べ、決してアクセスが良いとはいえない場所にも関わらず全国から結婚式のお問い合わせがあり、自社instagramアカウントのフォロワーは2.8万人にものぼる。

ここで結婚式を挙げたお客様はこんな風に感想を綴っている。

この式場を選ばなければ、結婚式、そしてこれからの二人の人生についてこんなに深く考えることはありませんでした。スタッフみんながあたたかくて、本当にここで結婚式を挙げて良かったです!
わだかまりのあった兄と、こんなふうに笑い合える日が来るなんて思ってもみませんでした。結婚式が家族の再出発になりました。
「自分という人間に生まれて良かった。」
そう、思えた結婚式でした。

そして実は、この記事を書いている私本人が、Daiyuで結婚式を挙げた元花嫁(現在Daiyuの人事担当)でもある。

なんだかちょっと一味違う会社
その独自の経営戦略をお伝えします。

Daiyuのウェディングの特徴

主軸サービスである「ウェディング」の特徴をお伝えすると、【コーチング×ブランディング×もてなし】といった3つの要素が独自の強みだと思います。
それぞれを、解剖してお伝えします。

1:コーチング ‐結婚式のプランニング‐

コーチングとはコミュニケーション手法の一つで「対象者の自主性を促し、能力や可能性を最大限に引き出しながら、自己実現に向けてモチベーションを高める」ことが目的です。
近年ではスポーツ、ビジネスマネジメントの場で多く取り入れられていますが、実は、この手法を結婚式のプランニングに取り入れています

結婚式の準備を進めるカウンセリングは通常だと「こんなお花を持ちたい」「こんなドレスが着たい」などお客様のニーズを聞くことが必要とされます。
しかし、Daiyuではそれ以前に「何のために結婚式を行うのか?」ということから対話を重ね、お客様自身が結婚式、そして今後の人生にとって、潜在的に希望されていることが何なのかを見つけることを大切にしています。

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ご家族やゲストとの関係、思い出、伝えたい想いをカウンセリングで深く掘り下げ、一つのテーマに収束する。
そうしてお客様の本質に触れることで、結婚式をきっかけにお母さんと5年ぶりにちゃんと話す時間が持てたとか、それによって自分自身を許せるようになったとか・・・お客様の生き方自体に変化が起こることさえあります

お客様と私たちが出会ったことで起こせる介在価値を追求しています

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2:ブランディング  ‐会場の世界観‐

自社会場の「萬屋本店」は創業200年の老舗酒問屋をリノベーションしているのですが、そのまま建物を引き継いだだけでなく、この場所の歴史やストーリー・文化を汲み取り、コンセプトメイキングを行っています。
そしてコンセプトである「大正ロマン」「それは、美しいもてなしが許された場所」のもと、衣装やアイテムを取り揃え、ここにしかない世界観を構築しています。


ウェディング業界の主流は、お客様の様々なニーズに応えられるよう多種多様な商品ラインナップを用意し、自由に好きなものを選べる幅広いアイテムを展開することですが、Daiyuでは反対に、本当におすすめできるもののみに厳選しています。
「なんでも揃う」ではなく、「本当におすすめできるものしかない」というお店、つまり、セレクトショップの考え方です。

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セレクトのポイントは「流行るかどうか」ではなく、「本物かどうか」。
物を売るためにトレンドを追いかけて商品を入れ替えるのではなく、長きにわたりおすすめできる、変わらない価値のあるものを見極めています。

また海外や日本各地への買い付けのみならず、代表の宮腰がデザイナーとなってパートナー会社と協力し、オリジナルアイテムの開発も手掛けてきました。
日本の職人技術を駆使したお着物、九谷焼き(金沢)の窯元へオリジナルオーダーしたお皿、日本人のためのメイドインジャパンのドレスなど、こだわって開発し、ここでしか取り扱えないものを自分たちの手で生み出しています。

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また、こうして自分達で手掛けてきた会場の広告撮影・媒体発信も、全て自分達の手で手掛けていることも、Daiyuならではの強みだと思います。
まず、HPやパンフレットに使用する広告写真は、普段から一緒に結婚式を創っている現場チームと共に自社で手掛けているので、お客様は広告で見た世界観を、ご自身の結婚式で実現することが叶います。

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広告撮影は、それに特化した企業や専門スタッフに委託して任せている企業さんも多いですが、私たちは、それでは広告で出しているイメージと実際の結婚式のクオリティに差が出てしまうと考えていますし、会場のコンセプトや心を表現し、お客様にお約束できる世界観を目に見えるようにすることが「広告写真」の本来の目的だと考えています。

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このように、ブランドとしてのこだわりを強めるということは、ある意味「万人受けする会場」ではなくなることだと思います。
だから認知度を広めていくよりも、こうしてこだわったサービスを喜んでくださる方に知っていただき、ちゃんと自分たちの言葉で届けたいと思い、マーケティング・PRも自社で行い、自社HP・instagram・ブログに力を入れてきました。

その結果、会場や会社の想いやこだわりに深く共感してくださった方が、わたしたちの会場を選んでくださっています。
そういったお客様たちはコアなファンとなってくれ、お知り合いにもご紹介してくれたりSNSで発信してくれたりと、リアルな広告塔となってくれています。

画像15《結婚式後もずっと応援してくれるお客様が集うDaiyuコアの会》

自社サービスは自分たちで生み出し、自分たちで発信する。
サービスのファンになってくれている人が自然とDaiyuを広めてくれる。
このようなこともあり、Daiyuの広告費は業界平均の4分の1という結果です。

3:もてなし ‐当日のゲスト満足度‐

結婚式に訪れるゲストの皆さんに心地良い時間を過ごしていただくためには、スタッフの接客というソフトな面が欠かせません。
そこで、老舗旅館のように、一度中に入ると人情溢れ、あたたかく人をもてなすお店創りをしています。
ホテルのようなスマートさ、恰好良さとは違い、少しお節介で人間味溢れるスタッフがいるのが特徴です。

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スタッフ教育において、他と大きく違うのは「マニュアルがない」こと。
マニュアルや仕組みが整えば、スタッフはある程度失礼のない接客が出来るようにはなりますが、そもそも「人」を相手にしていれば、目の前の人は年齢も性別もそれぞれで、求めていることも十人十色だと思うのです。
だから、ルールや上司の指示で動くのではなく、結婚式に携わる全てのスタッフが、目の前のお客様にとってベストだと思う答えをその瞬間に判断できるようにすることを大切にしています。

実際、これを言うことは簡単でも、形にすることは容易ではありません。でも、それを叶えていくために徹底していることが、お客様情報の共有と理念浸透です。

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Daiyuではパートナー、アルバイトさんやキッチンスタッフにまで、ウェディングプランナーが新郎新婦様の結婚式の背景、人柄、ゲストとの関係性、創りたい時間がどのような時間なのかといったお客様情報を丁寧に共有しています。
お二人のことを深く知ることで、スタッフひとりひとりが、お客様のことをずっと昔から知っていた親友の結婚式をお手伝いするような気持ちになり、自ら「お客様にしてさしあげたいこと」を行っていくようになります。
さらに、その行動がお客様に喜ばれたら、それは働くスタッフにとっても大きなやりがいとなりますし、今度はお客様からの嬉しいお声を、各スタッフから全体に共有し返してもらっています。
お客様共有は、働く人の「自主性」を引き出す取り組みだと考えています。

また、この業界では、派遣会社や登録スタッフの派遣して、当日初めましてのチームで結婚式が行われていることも珍しくありません。
お客様の名前すら知らず、決められたテーブルに決められた料理を出すという作業的なことも実際には起こっています。
私たちは、事前に面談などを行い、萬屋本店の意義やお届けしたい想いやサービスの方向性をお伝えし、それが叶えられるスタッフと当日をお創りしています。

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また、会社・会場の大切にしている考え方がスタッフに浸透するように工夫している取り組みがたくさんあります。
たとえば、スタッフ全員が業務報告を送りそれをお互いが見ることで良い影響力を与え合うこと。
たとえば、代表の宮腰や鈴木が経営を行う上での基盤になっている本をスタッフも読み、感想をシェアすること。
たとえば、婚礼前の毎週金曜日には朝礼で全スタッフの「一年間の目標」を掲げたムービーを見ること。
たとえば、アルバイトさんも全員集まる全体研修では「知っていますメッセージ」といって、日頃頑張っている方へ感謝のメッセージを贈ること。

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社員・パートナー・アルバイトさんの全てのスタッフ一人一人がその人らしく輝き、お客様を幸せにすることを目指し、「心を育む」ことを何より大切にしています

お客様満足度と、スタッフの働きがいが比例していけるよう、工夫を重ねている会社です。(こうした組織創り・社内取り組みについては、今後もう少し詳しくUPしていきたいと思います)

非効率であっても大切にしたいことは譲らない

他社と比べた時に何が違うのかをシンプルに言うならば、「非効率だけど大切にしたい部分を丁寧にやっている」のが一番の強みじゃないかと思います。
例えばですが、打合せのあとはお礼メールを送る、何か郵送する際にはお手紙を同封する、お客様がいらっしゃる際には外でお出迎えするなどといった、難しいことではないけれど大切にしたいソフトな部分は、創業当時からずっと変わりません。

また、結婚式は決まりきった進行に当てはめてしまえば行うのは簡単ですが、そうではなく、お客様お一組お一組に寄り添い、テーマをどうしたらいいかと頭を悩ませて考えるスタッフがいます。
ちょっと職人気質なくらい、各々が仕事に対して自分なりの答えを見つけようと探求しているから、起こせていることが多くあると思います。

この業界では分業化が進んでおり、「お客様の新規接客」と「打合せ」と「当日の施行プランナー」がそれぞれ別な場合が多くあります。
分業制にするメリットは、働く人の条件に合わせて採用しやすいこと、決められた役割のみレクチャーすればいいので育成が簡単なことがあげられますが、わたしたちはその方法を取ることはありません。
歯車の一つになる働き方は、スタッフの仕事が「作業」になり、お客様に本当に喜んでいただくことができないと思うからです。

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非効率かもしれませんが、この仕事で最も大切にしたいのは、人の心と心が通うこと。
手間や労力がかかっても、それを譲ることはできません。

実際にDaiyuでは、結婚記念日に毎年欠かさずプランナーに会いにきてくださるお客様、自分の子供に結婚式のテーマにちなんだ名前をつけてくれたお客様、担当プランナーと毎年お花見をしているお客様、萬屋本店でお食い初めや七五三を行うお客様…など、お客様との関係が長く続くということが起こっています。

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お客様の人生をお客様以上に想い、ご結婚式をお手伝いさせていただいたからこそ、こうした結びつきが続いているのではないかと思います。

いちばん大切な根底にあるのは「お客様本位」

ここまで「経営戦略」としてまとめてみたものの、これら全ては、ただひたすらにお客様に良い結婚式を届けたいという一心で、その都度メンバーが話し合い、トライ&エラーを繰り返してやってきたことの軌跡です。
この先、進化していくなかで、現時点で行っている取り組みが変わる可能性もあるかもしれません。

それでも絶対的に変わらないことが1つだけあります。
それは売上・利益を出すために戦略を考えるのではなく、「お客様にとってベストを追求するために試行錯誤する」という姿勢です。

現在、Daiyuは社員・アルバイトスタッフ共に、採用活動にも力を入れていますが、このような気持ちに共感する方と出会えたらいいなと思っています。

長くなりましたが、ここまでご覧いただいた方、ありがとうございました。この記事がDaiyuという会社の名刺代わりになったら嬉しいです。