厚底シューズ

日本陸上競技連盟競技規則/第二部 競技会一般規則 第143条
競技の時靴を履く目的は、足の保護安定とグランドをしっかり踏みつけるためである。しかしながら、そのような靴は、使用者に不正な利益を与えるようないかなる技術的結合も含めて、競技者に不正な付加的助力を与えるものであってはならない。

ナイキの厚底シューズが使用可能かどうかは、この”使用者に不正な付加的助力を与えている”のかどうかというのが主な論点になる。現場の感覚では衝撃吸収は問題ないが、反発はよくない。走るという行為は、能動的な行為ではなく受動的な行為で、走る際は足に圧をかけてそこで得られた反力によって自分を前方に運んでいるが、靴の反発はそれを助けることができる。

厚底シューズは厚底自体におそらく意味はさほどなく、カーボン繊維の湾曲させた板を挟み込むために一定以上の厚さが必要なため厚底になっているように思う。S字を伸ばして横に倒したような形状になっていて、その形状のカーボンを上から押すと確かにやや前方に反発する。

厚底シューズは使用できる回数がかなり少ないとされるが、それは薄いカーボンがヘタってしまうから。ではレーザーレーサーほどの助力効果があるかというと、流体力学の世界でのインパクトほどはないと思う。ただ記録をみると何らかの良い効果はあって、その程度が許容されうるものかどうか。

判断は難しい。仮にこれで使用許可が出なければ、一定の合理的な説明も必要になるだろう。それによって他のシューズも巻き添えになるかもしれないし、またはシューズの発展を必要以上に阻害するかもしれない。私は反発係数のようなものにフォーカスするのがいいと思っているがそれもどの程度にすべきか。

陸上は長らくギアに対してはさほど興味を持たずに来た。スパイクやシューズも履きやすさよりも金銭で選ぶというのが国際的にはよくある話だった。これほどに革新的なシューズが出てきたというのはある種驚きではあり肯定的に捉えたいが、履かなければそもそも勝負にならないとなると考えてしまう。

義足のピストリウス選手がロンドン五輪に出場する時私は反対したが非常に大きな反発を受けた。義足で頑張ってきたのにかわいそうではないかと。現在マーカスレーム選手が五輪出場を目指しているが、世論はだいぶ変わった。義足はずるいではないかと。要するに選手が頑張れば頑張るほど義足に注目がいく。この事を国際陸連は恐れているのではないか。

ルールでは”全てのタイプの競技用靴は、IAAFによって承認されたものでなければならない”とある。もし国際陸連が承認しなければ競技会では使えない。要するに全ての裁定は国際陸連側にある。判断を待ちたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?