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質問という技術

最近高校生相手に授業したり、対話したことがある人はご存知かと思いますが、昔と違って結構質問してきます。特に学校が積極的に探究学習をやっているところなどは、質問が相次いで止まらないことがあります。

私たちの時代、考えてみると授業中に質問した記憶がありません。そういえば、質問の仕方って習ったことがないですよね。機会もそんなに多くありませんでした。

私の感覚ですけれど職業的に訓練していなければ、今の30歳あたりを境目に質問が得意になっていっている印象があります。そのあたりで何か変わったのかもしれません。

一方、小学生は厳しい学校でなければ素直に質問してきます。例えば学校に行って質問コーナーをすると「為末さんて何やってた人ですか?」と聞いてくる。さっきまでハードル飛んでたじゃんと思いながら、「ハードルだよ」と答えます。それを見て先生たちは慌てている。

大人はきちんと配慮します。子供は遠慮がない。配慮を身につけ、さらに知識が加わり、事情が加わり、その人との関係性が加わると、どんどん質問がしにくくなります。どれを聞いても、相手が答えにくいものになりそうで、当たり障りのない質問を探すことになります。

もう一つ講演会をされる方は一度は経験をしたことがあると思いますが、質問がいつの間にか自己主張の形に変わって演説になってしまうパターンです。高齢の男性に多い印象があります。その時代はお互いに自己主張をもっと激しくし合う時代で、相手に質問するなどなかったのかもしれません。

取材を多く受けてきた身としては、静かに質問して、質問に対してうなづき、何もコメントしない職業記者を前にすると凄みを感じます。これは政治部や社会部で訓練された記者の方に多い印象です。事実だけを淡々と積み上げていくことを徹底している。

個人的に、教育は良い質問をどれだけ提供できるかで質が決まると思っています。そして質問は訓練すれば学べる。

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Dai Tamesue(為末大)
為末にコーヒーなどを奢る制度です。 コーヒー 300円 ビール  500円 ラフロイグ1000円