私のパフォーマンス理論 vol.1 -練習時間について-

これらが私の練習時間の推移となる。

小学生-週2日/1日90分

中学生-週5日/1日2時間

高校-週5,6日/1日2-3時間

大学-週5日/1日3-4時間

22-26才-週5,6日/1日5-6時間

27才以降-週5日/1日2-3時間

色々やってみて、今は1日2時間あればほとんどの練習効果は得られるという結論に至った。

アスリートにとって時間以外で最も貴重な資源はモチベーションだ。体よりも心の方が消耗品かつ直しにくく、もしモチベーションが湧かなくなれば致命傷になる。もしトップを目指したいならだいたい25-30で競技のピークが訪れるので、10歳から競技を始めたとして、少なくともモチベーションが20年切れないようなやり方をしたほうがいい。私が幸運だったのは、才能溢れた小学生、中学生時代に指導者も家族も興奮せず、練習時間を定め、友人と遊んだり(学業はほとんどしなかったが、、)家族と過ごす時間を確保できたことだ。

15歳になるまではたとえどのような競技であれ、よほどの専業プロフェッショナルになっていない限りは(いやそうであったとしても私は子供にはさせないが)、練習時間は2時間以内、週に5回以内、週の練習時間が合計10時間を超えないようにおさめるのが望ましいと考えている。私の経験では中学時代までは、練習時間がこの範囲を超えたことは記憶にある限りない。高校からは少し増やしてもいいが、これも週に5,6日、2時間以内を限度にするべきだと思う。

18-26才の間には長ければ4、5時間かけて、長時間練習した。現在の私は意味がなかったと思っているが、長時間練習により技術の定着などの底支えができたので頂点が高くなったという考え方もありえるので、本当に意味がなかったのかどうかが自分でも判断しかねている。年に数度であれば長時間練習することは限界を知る上では良いのかもしれない。けれども日常的に長時間練習をすることは割りに合わないと考えている。

長時間練習の弊害は、だらだらと力を出すことを体が覚えてしまうことだ。例えば生理学的には人間の無酸素運動の最大出力は6秒程度しか持たないと言われている。200mでは20秒程度走ることになるが、選手は全力を出しているように見えて微妙に98%程度の力の出し具合にコントロールする。200mと100mの専門家が微妙に分かれるのは、力の出し方に違いがあるからだ。このように練習時間を伸ばせば、体がその練習時間に適応し始める。ほとんどの競技において瞬間のパワーは重要なので、私は練習時間を短くし時間単位の出力を高める環境を作るべきだと思う。

もう一つのデメリットは、練習時間が長ければ何が重要な練習なのかを選手が意識しなくなる。例えば、上半身が重要だからと30分練習時間を伸ばしてウエイトトレーニングを入れることもできるが、それであれば上半身とハードル練習のどちらがより重要なのかという比較がなされない。制限がかかれば人は何を優先するかを考え始め、比較が始まり、より本質的に自分に必要なものを取捨選択するようになる。

練習の最初の1時間で練習効果の9割は得られ、そしてその1時間すぎてから徐々に怪我のリスクが高まると私は考えていた。考え方は二つに分かれる。残りの1割が勝敗を分けるのだという人と、1割の練習効果を獲得するために練習時間を伸ばすことは合理性がないという人だ。私は前者から始まり、後者に至った。前述したように前者があったからこそ合理性について敏感になったの可能性は捨てきれない。いずれにしても技術が卓越さえすれば1日1時間の練習でも十分な負荷は加えられるようになる。技術が卓越すると練習の出力がとても大きくなるので、ハードパンチャーが自分の拳を壊すようなことができてしまうので大人の練習時間は徐々に短くなる。

一つ、断りを入れておくと、競技中に強い出力を出すよりも、規律や正確性を求められるような種目は練習時間が長い方が有利な可能性がある。いわゆる練習で行うことを本番も寸分違わず行うような競技だ。新体操、アーティスティックスイミング(元シンクロナイズドスイミング)、芸術系だ。私はこの世界が全くわからないので予想でしかないが、反復により身体に覚えさせる世界は言語と一緒で壊れない範囲で長時間行うほど洗練されるのではないかと考えている。最適な練習時間がどこにあるのかはわからない。

試行錯誤した結果、陸上をやっていた私に関しては、12歳までは週に4時間、12-18歳までは週に10-15時間まで、大人になってもせいぜい週に20時間を超えない練習がもっとも効果が高いという結論に至った。

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