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自由意志への介入による技術向上

昨日友人が、ピアニストが機械を装着し、自らの力では出せない速度を体験させることで天井効果(技術が一定の領域で止まってしまうこと。プラトー)を突破できたという論文を、教えてくれました。

https://www.science.org/doi/10.1126/scirobotics.adn3802

陸上競技では昔からトーイングと言って、腰に装着したベルトから30mほどのゴムをひっぱりそれを誰かが牽引することで自分では出せない速度を経験させるというトレーニングがありました。それと似ている発想だと思いました。

人間は、脳で準備電位が起こり、その0.3秒後ほどあとに意思決定し、そして0.2秒後に行動するという順番になっていると言われています。これはつまり自分の「自覚的な」意思決定よりも前に脳が意思決定(少なくともきっかけ)をしていると考えられます。

この0.3秒の間に何らかの形で人間に介入すると(脳への刺激、身体への電気刺激など)早すぎれば人間は外部から自分が操作されたと感じますが、遅ければそれを感じないと言われています。

私はこの0.3秒のどこかに自分では体験し得ない速度や判断を外部から介入することで、人のパフォーマンスを向上させることができるのではないかという仮説を持っています。まるで一瞬その人に達人を乗り移らせて操ることで、新たな境地を体験させるようにです。

別の視点で考えてみると実は「自分で決めている」という感覚は曖昧で、このような介入によっても刺激できますし、通常でも自分が無意識に発した言葉や行動によって、「私はこうしたかったのだ」と自らの意思を追認することも行われています。正確には追認ではなく、「行動から意思」を推測しているわけです。

私はこの無意識と意識のあわいの世界に次のパフォーマンス向上の鍵があると考えています。それをやることは許されるのかは別の話で

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Dai Tamesue(為末大)
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