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【社内報の作り方】アウトソーシング①

 社内報の制作において、外部の制作会社をパートナーに迎える必要があります。しかしどう選べば良いのでしょう。その前に重要なのは、何を委託しようとしているのかを整理すること。今回は紙媒体を前提に、業務範囲を工程ごとに紐解きます。

作業工程を知る

 社内報を作ると言っても、その工程は多岐にわたります。まずは、工程を知るところから始めましょう。

企画:特集やコーナーの企画立案、ネーミング、誌面構成などを考え、形にする作業。ここは会社のことを良く知らないとできないので、安易にアウトソーシングできないかもしれません。

編集:ライターが書いた原稿を、企画の意図に沿っているか確認したり、手直し(リライト)したりする作業。取材先の調整や、企画実現のための雑務もすべて行います。社内報の良しあしはこの編集次第と言っても過言ではありません。企画と一体だともいえる重要な業務です。企画同様、安易にアウトソーシングはできませんが、ここの労力が異常に高く、社内スタッフの疲弊につながりやすい部分でもあります。

取材:原稿の材料を取る作業。社内報の場合、メインは社員への取材です。

撮影:原稿の材料となる写真を撮影する作業。プロに依頼するケースもあれば、編集者やライターが取材時に自分で撮影することもあります。写真のクオリティをどこまで求めるかは、会社によって大きく違いますが、ここの差は見た目の差にはっきり表れるので、あまり渋りたくないところです。

原稿執筆:取材した内容や、資料を基に原稿にする作業。編集はこの原稿が企画意図に沿っているかを確認し、必要に応じて小見出しやタイトルも編集側で付けたりします。編集が原稿執筆まですべて行うケースもありますが、作業としては別なので、編集のできないライターも多く、分けて考えましょう。

アートディレクション:デザインの方向性を決めたり、仕上がりをチェックしたりする人です。これについては以前の記事をご覧ください

デザイン:誌面のデザインレイアウトの作業です。社内報の場合、読み物なのでエディトリアルデザイナーと言われる人が最も適任です。ここは、ほぼすべての会社がアウトソーシングしています。なお修正作業はデザイナーではない、DTPオペレーターという人が担当することもありますが、ここではその作業も含めてデザインと呼びます。

レタッチ:画像を補正する作業です。実はプロカメラマンでも撮りっぱなしの画像では、あまり奇麗でなかったりします。また、印刷適正にあっていないため、PCの画面よりはるかに暗い仕上がりになることもあります。印刷会社は、印刷コスト競争になると、この工程を削りがちですので、クオリティにこだわるなら、必ず残したい項目です。

色校正:色だけを確認する校正です。これもクオリティにこだわるなら必要項目で、2回分は見ておいた方が良いです。

印刷製本:印刷し、本にする作業です。

委託範囲を決める

ここまで工程の項目を見てきましたが、ここからはどの項目を委託するかです。ここではクリエイティブをアウトソーシングする代表的な3パターンを紹介します。

①企画からすべて

②デザインとリライトと撮影

③デザインのみ

①は編集プロダクション機能を持った会社でないとできませんので、自ずと絞られます。広報部であれば、統合レポートや広報誌を担当している会社が身近なところでしょう。広告制作会社やデザイン会社では、得意ではない分野です。今は出版社も対応してくれますが、コスト的にはかなり高くなりがちです。

②は自分たちで企画をし、原稿を書いて、デザインをしてもらうパターンです。写真はプロを起用し、書いた原稿も変なところがあったり、文字数が多かったり、少なかったりしたら調整くださいというパターンです。この場合、雑誌のエディトリアルデザインを専門にしているデザイン会社が適任です。慣れているので、広告制作会社より早くて安いです。但し、リライトができないと断られるケースもあるかもしれません。もちろん、編集プロダクションなら問題ないです。

③は、デザインのテイスト次第なので、制作会社であればどこでも参戦可能です。

困ったときの印刷会社

編集プロダクションも、デザイン会社も知らない…。どうしよう?そんなときは印刷会社に相談するのが良いでしょう。大抵の会社は名刺、封筒などで、印刷会社が出入りしています。クリエイティブ部門がある会社、すべてアウトソーシングの会社など、それぞれですが、きっと力になってくれるでしょう。なぜなら、最終的には印刷があるのだから。総務や購買部が詳しいはずですので、ぜひ相談してみてください。

今回の一冊

吉村昭著
零式戦闘機

記録文学の大家が描く零式戦闘機が生まれて消えるまで。国家からのいわば究極のアウトソーシングを受け、無理難題をクリアしていく姿が、しかし淡々と描かれ、却ってその凄みに圧倒される一冊です。軍からの要望は無理難題ですが、緻密。こうした与件が整理されてはじめてクリエイターは本領を発揮します。このお盆にどうぞ。

社内報の作り方|創刊編 各記事はこちら

VOL.01 発行目的を決めよう
VOL.02 コンセプトって、どう決めるの?
VOL.03 媒体を考える
VOL.04 ルールを決める編集方針
VOL.05 デザインを決めよう
VOL.06 経営計画盛り込めていますか?
VOL.07 ページネーションを決めよう
VOL.08 コーナー企画は数が命?
VOL.09 協力者はいますか?
VOL.10 アウトソーシング①
VOL.11 アウトソーシング②
VOL.12 アウトソーシング③
最終回 誰が決めるの問題

Connecting the Booksは、これまで培ってきたクリエイティブディレクター、コピーライター、編集者としてのノウハウを公開するとともに、そのバックグラウンドである「本」のレビューを同時に行うという新たな試みです。