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ここが新しいスタート AZKi 7th LiVE 「Stand at the crossroads」レポート

2021年4月11日、 AZKi 7th LiVE 「Stand at the crossroads」#AZKiの分岐点がYouTubeにて全編無料で配信された。本公演は公演終了後1週間のアーカイブ公開、その後はメンバーシップ限定での公開になるとのこと。

配信ページの概要欄には下記のような意味深なことが書かれていた。

ルートαからルートβへ、もっと大きな夢を見るために選んだ道
これはAZKiと、共に歩く開拓者にとっての大きな決意

AZKiの分岐点とは、ルートα、ルートβとは一体何なのか、AZKiはどんな道を選んだのか、それをライブのレポートとともに紐解いていく。

・オープニングアクト

本公演で初めての試みとしてオープニングアクトとしてAMOKAの3人(あいぽ、もいさん、からし明太子)がゲスト出演した。彼らは普段主にVRChatで音楽活動をしており、2021年3月19日~2021年3月21日に行われた「音楽を止めるな3」に参加した縁で今回オープニングアクトを務めることになった。

最初に披露された「不完全存在」を見て、これほどの才能が埋もれていたのかと驚かされた。あいぽの澄んだ女性的な歌声ともいさんの中性的な歌声、からし明太子のDJが見事調和し三位一体となっていた。オープニングアクトとは思えないほどの光線とタイポグラフィの本気のVJが歌に華を添え、一気に視聴者のテンションが熱を帯びていた。

続く「7 layers train」では、AMOKAの振り付けで「7」を描くところでコメントに「777」という弾幕を催促したりと、彼らがバーチャル空間でのライブに慣れている様子がうかがえた。

オープニングアクトのラストの曲「Find Yours」でもラララと両手を振りながら、視聴者にも一緒に手を振るように促したりと、ライブに参加している人との交流を楽しむ姿を見て、彼ら自身のライブも見てみたいと素直に思った。

「AZKiちゃんのライブ楽しんでくださいね!そしてAMOKAの曲が少しでも気に入った人はチャンネル登録お願いします!」と見事なMCも織り交ぜつつ、AMOKAは見事オープニングアクトをやり切った。

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オープニングアクトで目を見張ったのはAMOKAだけではない。今回の会場のバーチャルENTASの再現度にも驚かされた。ステージのサイズ感をはじめ、バーカウンターの位置や天井からつるされたモニタの位置まで、完全にリアル世界の秋葉原ENTASを再現している。

AZKi 6th LiVE「Re:Creating world」で「BACK TO ENTAS」と発表された本公演は、当初はリアル世界の秋葉原ENTASで開催したかったのかもしれない。しかし世界はまだ不安定で、オンラインでの開催するという判断をしたのだろう。ここまで完璧にリアルENTASを再現したバーチャルENTASを作ったAZKiチームの、今回のライブを何としてもENTASで開催したかったという気概が感じられた。

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・Overture

そしていよいよ始まるAZKi 7th LiVE 「Stand at the crossroads」。AZKiのライブで幾度となく聞いたOvertureと相まって、本当にENTASでライブを見ているかのような錯覚に襲われる。

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始まりは「FEEL ALiVE」「Reflection」「Intersection」とAZKiの曲の中でもクラブサウンドに分類される曲を3曲連続で披露した。これまでENTASは様々なVtuberのイベントやクラブイベントが開催されており、この3曲はその熱狂を思い出させてくれた。いつかリアルENTASでまた盛り上がりたいと思うと同時に、バーチャルENTASにも行ってみたいと思った。

MCでは「今日はライブの中でみんなに伝えたいことがたくさんあるので、最後まで見ていって欲しいです」とAZKiからお願いがあり、どんな内容でもきちんと受け止められるよう襟を正した。

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・ENTAS生まれENTAS育ちのAZKiの軌跡

続く曲は「mirror」「世界は巡り、やがて君のものになる」。どちらも「さめのぽき」が作詞作曲した曲だ。この2曲を歌いながらAZKiの背後のスクリーンではこれまでAZKiがENTASで行ったライブの写真が映し出されていた。

AZKi 1st LiVE「The Shitest Start」から2nd「A GOODDAY TO DiE」、3rd「レペゼンエンタス」、そして対バン企画「LAST V STANDiNG vol.1」「LAST V STANDiNG vol.2」の思い出が蘇る演出は、古くからのAZKiを応援してきた開拓者ほど涙なしには見られないだろう。

「mirror」は「LAST V STANDiNG vol.2」の時、出演者のAZKiとエルセのために作られた曲で、それぞれのソロVerと2人のデュエットVerが存在する。今回AZKiがソロで歌っていたが、AZKiの背中合わせにエルセがいるように感じた。

「世界は巡り、やがて君のものになる」について以前「さめのぽき」が「この曲はAZKiになる前のAZKiから今のAZKiへの祝福の歌」と述べていた。今日分岐点を迎えるAZKiを祝福するにふさわしい歌は、この歌以外にないだろう。

MCではAZKiが開拓者と実際に出会ったのは1年以上前の「LAST V STANDiNG vol.2」が最後なこと、それまで当たり前のように毎月行っていたライブやイベントができなくなり積み上げてきたものが無くなってしまう感覚になったこと、この1年を通じて世界中のたくさんの新しい開拓者に出会えたことを振り返っていく。

そしてAZKiから「たくさんの選択肢の中でAZKiと出会ってくれて、AZKiを選んでくれてありがとうございます」と感謝の言葉が贈られた。

「もうすぐしたら本当にみんなと会える気がしています」と嬉しい匂わせがあり、次に歌う3曲はリアルライブの空気を忘れないために歌うことが告げられる。

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・思い出せ!リアルライブの空気!

宣言通り「ERROR」「コトノハ」「Fake.Fake.Fake」とカロリーの高い曲が立て続けに披露される。ロックなサウンドとAZKiの攻撃的な歌声、客席を煽る「はい!はい!」というAZKiの声に触発されて、ライブに行って全力で盛り上がりたいという欲求が体の奥底からフツフツと湧いてきた。いつかリアルライブで声を出して全力で応援ができる日まで、この欲求を忘れずにいたい。

思い返せば、今こうして振り付けありで歌ったり観客を煽ったりと、ライブを盛り上げる動作をAZKiは自然にしているが、こうしたライブの空気の作り方も、彼女がこれまで積んできた経験の賜物だろう。もちろんVJの演出も過去に見たAZKiのどのライブよりも進化しており、既存の曲でも見応え十分で一瞬たりとも目を離せない。

MCではAZKiから、これからも開拓者と一緒にたくさんの時間を過ごしていきたい、一緒に新しい世界を築き上げていきたいという思いが語られる。そんな思いを込めて歌う次の曲は「あすいろClearSky」。

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・がんばるあなたの背中を押すことができますように

「あすいろClearSky」はホロライブの新しい全体曲で、最初聞いた時はホロライブメンバーが一緒に切磋琢磨していく青春を歌った曲という印象を受けた。しかしこの日聴いた「あすいろClearSky」はAZKiと開拓者が一緒に進んでいく歌のように感じた。コーラスもAZKiの声になっており、まるでこの日のために作られた曲のようだった。

そして「発光体ソーラーサイクル」「キラメキライダー☆」とアイドルらしい曲が続く。3rd衣装で明るくポップな曲を歌うAZKiは、これまで以上に可愛さを発揮していた。また「キラメキライダー☆」のラスサビ「ここにいるよ 見つけてくれたから」に込められたAZKiの想いには強く胸を打たれた。

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・AZKiからの手紙

「光」をBGMにこれまでのAZKiの活動の写真と、AZKiの手紙の文字が映されていく。

うまくいかないことがあったり
世界が悲しみに溢れてしまったり
思い通りにならないことがたくさんある世の中だけど
いつだって傷つき涙を流す君が
幸せだと思える世界になるように
私は歌を歌い続けたいと思っています
それがきっと歌を歌い続ける意味
今楽しいことや、今嬉しいことも
きっと長い時間が経てば色褪せてしまうもの
だけどそんな思い出の中に
私の歌や、一緒に過ごした時間があって
そのことを思い出して
あの頃は楽しかったなって
思い返してくれるような
そんな歌が届けられているといいな
私達がいなくなった10年後も20年後も
あなたの心のなかで
音楽は生き続けます
そんな音楽の一つに
私の歌が入っていると嬉しいし
それが私達の生きた証になると思っています。
これからの未来に生きるあなたへ
いつかステージにたつあなたへ
私は何かを届けられていますか?
変化し続ける世界の中で
きっと変わらないものもあって
つらいときや悲しいときに
寄り添える存在になれてるといいな
今この瞬間が、
遠い未来のあなたがふとした瞬間に思い出して
もう一度戻りたくなるような
かけがえのない時間になりますように

この手紙を読んで連想したのはAZKiがこれまで歌ってきた曲たちだ。AZKiの「Creating world」「いのち」「from A to Z」「発行体ソーラーサイクル」「in this world」などの曲たちに込められた想いをまとめたような手紙だと思った。ただひたすらに前向きで真っ直ぐな想いではなく、少し陰がある不器用な前向きさがAZKiらしく愛おしい。

この手紙によって湿ったライブの空気をさらに畳みかけるように、AZKiは「いのち」「青い夢」「petal dance」と開拓者を床にする曲を歌う。「いのち」「青い夢」のAZKiの感情を乗せた歌声が胸をえぐるこの2曲は、定番の「開拓者全滅コンボ」と呼ばれているが、その後に「petal dance」を入れることで春の芽吹きのように新たに生まれたような気分だった。

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・今日一番伝えたかったこと

そしていよいよAZKiの口から今日一番伝えたかったことが語られる。詳細はライブのアーカイブをぜひ見て欲しい。要約すると下記の通り。

・AZKiプロジェクトはずっと前から終わりの時間を2022年7月に決めていた
・2年半AZKiチームと開拓者と一緒に過ごしていく中でいつか実現したい夢がたくさん生まれた
・だから今日この場所からルートαからルートβに、決めていた終わりの向こう側へ進んでいきます
・みんなと初めて会ってたくさん思い出ができたENTASから新しいスタートを切りたかった

この想いを伝えているとき、AZKiのフェイスペイントが消える。ほんの一対のフェイスペイントが消えるだけで、彼女の素の表情と心を垣間見ているようでドキリとした。

AZKi 7th LiVE 『Stand at the crossroads』#AZKiの分岐点_ 1-55-42 screenshot

AZKi 7th LiVE 『Stand at the crossroads』#AZKiの分岐点_ 1-55-44 screenshot

そしてAZKiにとって開拓者はかけがえのない存在という想いを込めて「without U」と「from A to Z」が披露された。

かけがえのない存在と言われて「without U」「I need you」と歌われるのはファン冥利に尽きるだろう。「from A to Z」の「かけがえのない開拓者よ」や「これから起こるすべてのことを一緒に見よう」や「ここがスタート」という歌詞も、この日のために計算されて作った歌ではないかと思うほど、この瞬間の文脈に寄り添っていた。

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今日みんなの前で歌って話すことができて幸せでした、これからも付いてきて欲しい、とAZKi。そして最後の曲は「ちいさな心が決めたこと」。今日この場所から新しいスタートを切ると宣言したAZKiが、力強く「ここで生きていくと決めたんだ」と歌っていた。本当に今日この発表にピッタリと合うセットリストには感服するばかりだ。

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・アンコール!アンコール!

もちろんこのまま終わるはずもなく、コメント欄がアンコールで埋まる。アンコール1曲目は「Dreaming Days」。この曲もホロライブの全体曲だが、歌詞の「選ぶことの無かった過去さえ大事な意味があったと気づいたよ」という部分が、選ばれなかったルートαを指しているように感じた。「あすいろClearSky」の時にも感じたが、ホロライブの全体曲は誰が歌ってもその人のストーリーに合うような汎用性を備えているのかもしれない。

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「まだあの曲をやっていませんよね?」という前振りからアンコール2曲目は「猫ならばいける」。AZKiは歌で開拓者はコメントで「にゃにゃにゃー!」と猫になっていた。ステージを所狭しと走り回るAZKiの様子はまさに猫そのものだった。

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アンコール3曲目は「Kiss me!Choose me!」。恋する乙女全開の可愛らしさを爆発させるこの曲は「好きだよ」のセリフの破壊力が凄まじく、この一言+ウインクで胸を撃ち抜かれた開拓者も多いことだろう。VJ演出もコミカルな絵文字を使ったりと、見事に曲の雰囲気に合わせたものだった。

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本当の最後の曲に行く前に告知タイム。AZKi 7th LiVE 「Stand at the crossroads」アクリルアートパネル販売開始と、AZKi 8th LiVE「Rewind & Reunion」の開催が発表された。ライブは池袋harevutaiの会場と配信の両方があるとのこと。

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AZKiが「これからもよろしくお願いします」という想いを込めて最後の曲「フロンティアローカス」を歌う。未来のAZKiから今のAZKiへのメッセージを歌ったこの曲は、今日はルートβの未来からのメッセージになったのだ。

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そして活動開始1ヵ月記念の初めてのAZKi生放送で歌った「Creating world」の映像が流された。初めての生放送ということで、歌も映像もあらゆるものが今よりもつたないが、AZKiの歌うことが大好きな気持ちと、歌でみんなを元気にしたいという姿勢、みんなと「一緒に」世界を開拓したいというポジティブな共依存というテーマは、今と変わっていない。

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・まとめ

本公演はまるでセットリストのすべての曲がひとつの物語を紡いでるかのようだった。このライブで伝えたかったことのために、楽曲を作ってきたかのような物語性の強いライブに感じた。

新しいスタートのためにバーチャルENTASで開催したのも、これまで歩んできた軌跡や作ってきた思い出を振り返りながら、未来へと進んでいくために必要な儀式だったようにも感じる。バーチャルENTASには観客はいなかったが、会場で一緒に肩を組んでジャンプしている開拓者たちの幻覚が見えたような気がした。

AZKiのマネージャーのツラニミズ氏は過去に「AZKiのゴールは決まっている」と述べていた。それが2022年7月だったのであれば、2019年から始まった怒涛の楽曲作成やライブ・イベントの開催も、終わりを意識していたからこその密度だったと今にして思う。

今回そのゴールの向こう側を目指すことになったAZKiとAZKiチームだが、もう6月13日に8th LiVEを控えており、これからも足を止める気は毛頭ないらしい。1年以上現地ライブに参加していなかったこちらとしては望むところだ。1年間オンラインライブで培った技術やノウハウが、リアルライブでどのように活かされるのか今から楽しみでしかたない。

最後に、今回開拓者たちの応援でAZKiの決まっていたゴールを変えることができたことが純粋に嬉しい。自分たちの応援が誰かを支えているという実感をここまで得られる機会は少ないだろう。この日AZKiの新しいスタートを見ることができて、いち開拓者として最高に誇らしく、そして幸せだ。

・オープンアクト(AMOKA)
1.不完全存在
2.7 layers train
3.Find Yours

・AZKi 7th LiVE 「Stand at the crossroads」セットリスト
0.Overture
1.FEEL ALiVE
2.Reflection
3.Intersection
4.mirror
5.世界は巡り、やがて君のものになる
6.ERROR
7.コトノハ
8.Fake.Fake.Fake
9.あすいろClearSky
10.発光体ソーラーサイクル
11.キラメキライダー☆
12.光
13.いのち
14.青い夢
15.petal dance
16.without U
17.from A to Z
18.ちいさな心が決めたこと
EN1.Dreaming Days
EN2.猫ならばいける
EN3.Kiss me!Choose me!
EN4.フロンティアローカス
EN5.Creating world

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