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【報告】粘ずれば見える変形菌のセカイ(11/19~20) 講師/高橋和成先生

先日開催の変形菌の勉強会。サポートスタッフとして参加いただいた立石さんより報告をいただきました。ありがとうございます。

変形菌、粘菌ってなんだろう…どんな世界のものだろう…見えるのかな?変形菌がいない世界はどうなるんだろう。興味を持った大人たちが1泊2日で大山の寿庵に集まった。

初日、夕方から高橋先生の講習会。変形菌の生態からスタートした。変形菌は、系統分類では原生生物のアメーバの仲間なんだと教わる。変形菌は多細胞になることのできなかった単細胞生物で、多核を持つ不思議な存在。なにより、捕食者であるのに胞子を作り、飛ばす生き物。多種多様がこの世界にあり、それらが関わり合い地球の今があることを学んだ。

高橋先生の説明を聞きながら粘菌について勉強。

先生の用意したスライドは60枚。変形菌の生態が詰まった貴重な一枚一枚を見ながら講習は進んだ。途中、変形体の原形質流動の動きや、変形体の地図を読むような賢さを見て、皆でおおっ!って感動。

みなさん真剣に話を聞いています。

変形菌がどのような環境、樹皮、酸性度を好むか。森の構成、菌類、腐朽菌との関わり、日本の森林、杉の分布、先生の今までの50年に及ぶ研究による考察を聞きながら、1時間半の講習会があっという間に過ぎ終了。

変形菌の子実体の中にある胞子や細毛体を見ながら、
どうやって同定をしていくのかレクチャー。

夜は座談会となり、当日採取していた変形菌の胞子や細毛体を顕微鏡で見たり、変形菌や菌類との繋がり、自然とのつながりをディスカッションしながら夜が更けていった…。

翌日は森に出て観察会(大山自然遊歩道)

落葉の進んだ晩秋の森。

朝、森に入ると参加者は一斉に森にひろがり腐朽木を探し始める。まず目につくのは小さな菌類。子嚢菌の仲間との区別はやはり経験だね、と言いながら歩くと、ちょうどしっとりした腐朽木が。一人が「これ?」と指差したものが、アミホコリの仲間。

アミホコリの仲間。

周囲に集まった参加者が近くにあるアミホコリを見つけ、それからはもう、みんな変形菌の目になってきたから、「これ何?」の声があちこちで。その中にモジホコリの仲間も見つかり、一気に盛り上がる。

エツキケホコリの群生。

他の場所でケホコリの仲間(後でエツキケホコリと判明)の群生を見つけ、その近くにはマメホコリ。

マメホコリ

また、変形菌が子実体を作ろうと変化中のものや、変形体も見つけた。変形菌の変化のステージを観察会で見ることができたのは貴重で、前日に高橋先生から伝えられたことがストレートに染み込む。

森を見上げ、先生と参加者でディスカッション。森のことを森で教わるとダイレクトに伝わる。とても有意義な時間。参加者の探求する目がとても印象的な時間でした。

変形体。どこまで広がるかな?
子実体になろうとしている変形体。

樹冠(キャノピー)で生活する変形菌がいるこ。なんと、じっと獲物を待つ、ほぼ動くことがないトカゲに変形菌が出たこと。やはり、それらの変形菌はサイクルが速く、胞子から1週間程度で子実体を作り、早く胞子を飛ばして子孫を残そうとするという。森で聞くとなんだか納得できる。

バクテリアを捕食する粘菌アメーバが、どのようなところにいるか考える。樹間ならバクテリアはそれほど量も多くないだろうと思われるし、腐朽木がやはり多いだろうし、それに比例するように変形菌も腐朽木に出るものは量も多いな…なんて思いながら聞く時間。

秋の変形菌

秋の変形菌といえばキララホコリ!「これに会うことができたらいいな。メダマホコリとキララホコリは苔が好きなんだよ」と話をしていると、なんと最後に森からのプレゼント。芸術作品のような子実体が多数発生。

この模様に惹き込まれてしまいます。小さな宇宙を感じずにはいられません。

皆でルーペやカメラで見ながら、「天目模様だね」「綺麗だね」とため息を漏らし合った。

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観察中には変形体も見つかったので、それを一つ持ち帰り、変化を見たので報告します。

観察会で変形体を採取。
翌日には子実体が出来ました。
2日後には黒色に変化しました。

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その他の秋の変形菌

ブドウフウセンホコリ
キンチャケホコリ
コンテリルリホコリ

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あっという間に3時間以上が経過し、再び寿庵に戻り皆が採取した変形菌や枝、苔で粘菌テラリウム作りと顕微鏡での観察。

生物顕微鏡で見るためのプレパラートの作り方を教わった。採取したもので作り、実際に顕微鏡を覗き、細毛体や胞子を見て、 図鑑と合わせて同定をする作業を行う。「顕微鏡なんて学生以来!」と皆の表情が楽しそう。

プレパラートで胞子をみる。
キンチャケホコリの細毛体。

子実体そのものを見る実体顕微鏡で、小さな変形菌の世界を覗く人。何やら冬虫夏草のアリタケまで覗く方も!小さな世界に目が向けば、変形菌を探していると冬虫夏草もよく見つかるものだ。

顕微鏡をのぞいたり、テラリウムを作ったり。
テラリウム作り。

そして粘菌テラリウムを作る。ワイングラスに濾紙をひき、その上に枯れ枝を並べる(枯れ枝から変形体が出てくることが狙い)。そこに苔や変形菌やキノコや紅葉した落ち葉に、冬虫夏草も入 れたり。それぞれの感性の見せ所。

23℃で3ヶ月ほどすると変形体が出てくる確率は 50%。子実体になる確率は 35%。そして、ブナよりミズナラの枯れ枝が出やすいこと、桜がいちばん出やすいことも前日に学んだ。

できた粘菌テラリウムを並べて撮影。

2日間、寿庵で夜を共に過ごし、多くの話題でコミュニケーションしあった参加者 11 名と高橋先生と、わたし立石。参加前と参加後ではいかがでしたか?この時期は森の中で見つかる変形菌も、夏は家の庭でも見つかることがある。今まで目に止めることもな かっただろう場所に、このような世界があること。それらがあることで世界が作られていることが少しでも伝われば、今回の観察会を催したことの意義になったのではないかな。と思っています。参加者の皆さん、そして、寿庵の矢田さん。参加してくださり、ありがとうございました。

報告は、立石さんからでした。ありがとうございます。
先日、勉強会の後に「気づくこと」としてNoteを書きました。ただ山に登るために大山に来る…のではなく、いろいろと知って森のいろんなことを吸収してほしいって思います。寿庵では様々な勉強会をガイドさんとともに行っています。いろんな目線で大山を楽しんでほしい!これからもいろいろな勉強会やクラブを通じ、大山ファンを増やす活動をしていきたいです。

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