30代の酒トリガーはマザコンでした。

40歳になってしまった。
コロナ禍の行動制限で失った30代後半はかなり早かった。
目新しいことも何もやらず、とりあえず働いて税金抜かれて日本に生まれた義務を最低限こなした。

2014年
30歳なりたて。
母親が子宮体癌になった。
俺はというと、この一年ほど前に一度現職場を退職している。
理由はまあ、疲れていたのと自分の心の病と向き合いたかったのと自由にいろんな場所に行きたかったから。
まだ贅沢に使える金は残っていた。
そんな中で母の闘病生活は始まった。
運が良かった。
家族の中で多少寄り添える位置にいれた。
検査の結果はステージ1だろうということで、摘出してしまえば一安心だろうと。
(癌に100%安心ということはないのだけど。)
他の臓器や器官と違って還暦を迎えた母には必要のないものだった。
あとは経過を見て退院した後に検査通院がしばらく続くのかなと思っていた。

摘出した子宮のリンパを調べたところ転移が確認された。

癌のレベルがステージ3に上がってしまった。
本人が一番ショックだったと思うが自分もショックだった。
もし他の臓器に転移してたら?
既に進行しているのではないか?

母は6ヶ月間の抗がん剤治療を選んだ。

ここで自分の中の何かが切れてしまった。
緊張を感じると別人格のようにポジティブでいようとして変にテンションがあがる。
その踏み台をはずされて盛大にコケた。
精神が荒れ狂い、酒に逃げるようになった。
意識を失うまで飲んだりとにかく人がそばにいてほしかった。
自分が人を支える限界を知り、無力さを知り、何も出来てない怒りをすべて酒で逃した。
人にも迷惑をかけ続け、愛想も尽かされた。

髪の毛が抜け落ちて、布団で横になっている母親の近くに二日酔いの自分が何もせずに寄り添う時間は長かった。

抗がん剤が効いたのか、その後の度重なる検査でも転移は見られなかった。

あれから10年経った。

今では何もないのに酒を飲む腐った独身こじらせ初老が残った。

肝心の母親はピンピンしている。
甘いものを食べ過ぎて太っている。

でもまたこれからどうなるかわからない、
いい年だから突然倒れていたなんてこともあるかもしれない。

そんな不安を打ち消すように、また酒に逃げるのか。

すべてが悪い夢で終わればいいのだが。

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