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新千夜一夜物語 第34話:令和とパラダイムシフト

青年は思議していた。

第99代目の内閣総理大臣に任命された、菅義偉についてである。
某新聞社のアンケートにて、彼の他に岸田文雄と石破茂の2名が有力候補となっていたが、魂の属性の観点から判断して、今回の人選は望ましい結果なのだろうか。

一人で考えても埒が明かないと思い、青年は陰陽師の元を訪れるのだった。

『先生、こんばんは。本日は菅義偉について教えていただけませんか?』

「今回の自民党総裁選のことじゃな」

そう言いながら、青年の質問に、陰陽師が応じる。

「はい、4選の目もあると言われていた安倍首相の辞任に基づく、自民党の総裁選のことです」 

「そういえば、令和の“ねじれ”によって、残念ながら安倍晋三が辞任する流れになってしまったのう」

『え、令和ですか。安倍元首相の辞任と令和が何か関係あるのでしょうか』

そう言い、大きく眼を見開く青年を片手で制し、陰陽師は続ける。

「話がそれてしまったの。今回のそなたの質問は総裁選の話なわけじゃから、令和の“ねじれ”については後で話すとして、総裁選の話をするとしよう。じゃが、そなたの質問に答える前に、以前政治家に適した魂の属性について説明したと思うが、そなたは覚えておるかな?」

陰陽師に問われ、青年はしばし黙考した後に、口を開く。

『転生回数期が2期で十の位が4、すなわち240回代の魂3:武士・武将、あるいは転生回数期が1期で十の位が4か7、すなわち340回代か370回代の魂1:王侯・僧侶の人物と記憶しています』

青年の言葉に対し、陰陽師は小さくうなずいてから口を開く。

「そうじゃな。与党、さらに言うと首相になれる資質を持つ人物の魂の属性はあらかじめほぼ決まっているのと同じ様に、野党に所属している国会議員の魂の属性もほぼ決まっておると話したのじゃが、それについて覚えておるかな?」

『転生回数期が2期で十の位が3、すなわち230回代の魂3:武士・武将と、転生回数期が2期で十の位が“大山”の7、すなわち270回代の魂4:一般庶民です。もちろん、自民党を離党し、前民主党政権で首相となった鳩山由紀夫などは2(4)-3、すなわち240回代の魂3:武将ではありますが』

青年の説明に陰陽師は満足そうにうなずいてから、紙に書きまとめていく。


・与党側の多く、首相の魂の属性:1(4)−1、1(7)−1、2(4)−3
・野党側の多くの議員の魂の属性:2(3)―3、2(7)−4


『ところで、菅義偉と岸田文雄と石破茂は、それぞれどのような魂の属性でしょうか?』

青年に問われた陰陽師は、鑑定結果を紙に書き記していく。
陰陽師が手を止めると、結果を眺めた青年が口を開く。

菅義偉SS

『菅義偉はアンケートで最有力候補でしたが、転生回数が240回代の魂3:武将と首相になれる条件を満たしてしますね。それに、大局的見地が95(SS)で仁が90(S)とかなり高く、総合運もほぼ全ての数値が9で、加えて頭が1と、文句なしの結果と思われます』

青年の言葉に対し、陰陽師は小さくうなずいて口を開く。

「血脈の先祖霊の霊障の“17:天啓”の相とチャクラの6と7の乱れの影響によって、時折自分勝手な判断をし、周囲を振り回してしまう可能性が考えられることと、チャクラ4が乱れていることで、安倍晋三のように体調を崩さぬか、ちと気になるところではあるが」

『そういえば、菅義偉は70歳を超えていて高齢ですので、健康面では気をつけていただきたいですね』

「そなたの言う通りじゃが、それを言ってしまうと二階俊博は80歳を超えているわけじゃから、まだまだ老骨に鞭を打って頑張ってもらわねば、という考え方もあるにはあるがの」

『なるほど、政治の世界には、定年などという概念はないのですね…』

真剣な表情でそう言う青年に対し、陰陽師は小さく笑って見せてから続ける。

「本来であれば安倍総理の任期は2021年9月末までなわけじゃから、暫定的に彼の後を継ぐ期間は約一年となる。ゆえに、菅首相がさらに3年続投できるかどうかは、彼がこの一年でどこまでの実績を残せるかにかかっておるわけじゃな」

陰陽師の言葉に青年は小さくうなずいて見せ、再びスマートフォンを操作した後、口を開く。

『菅義偉は、“令和おじさん”の愛称や、おやつに3,000円のパンケーキを食べるなど、政治以外の面でもメディアに注目されていましたが、高校を卒業した後に上京し、都内の段ボール工場に住み込みで働くものの、一念発起してアルバイトをしながら受験勉強をし、同級生に比べて二年遅れで大学に入学するなど、苦労人という印象です』

「そして、27歳に衆議院議員の小此木彦三郎の秘書となり、39歳から横浜市会議員を2期務めた後、45歳で衆議院議員に当選と、政治の世界ではその才覚を遺憾なく発揮してきたようじゃな」

陰陽師の言葉に青年は感心した様子でうなずいた後、再びスマートフォンを操作して口を開く。

『“菅総理には菅官房長官がいないという問題がありますが”と言われるくらい、安倍前首相からは評価されていたようですね』

「魂の属性だけでなく、実務的な面から判断しても、今の自民党の中では、首相に相応しい人物と言うことができるじゃろうな」

陰陽師の言葉に納得の意を示すように大きくうなずいた後、青年は問う。

『ところで、他の2人の魂の属性はいかがでしょうか?』

岸田文雄SS

そう言い、青年は再び鑑定結果が記された紙を眺めた後に続ける。

『岸田文雄は、転生回数が340回の魂1:王侯・僧侶ですから、魂の種類だけで見れば首相に適しているとは思います。しかしながら、大局的見地と仁が80(A)と菅首相に比べて低いですし、人運が7ですから、この数値はトップに立って政党をまとめる人物にとっては致命的でないかと思われます』

そう言い、青年は再びスマートフォンを操作してから、重々しい口調で続ける。

『それに、暴力団元幹部の人物との握手写真が流出するというスキャンダルがあり、世間の目からすると良くない印象をあたえているのもちょっと気になります』

「たしかに、頭が2であることも含め、首相の器というにはちと厳しいようじゃな」

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『次は石破茂ですが、彼は転生回数が240回代の魂3:武将で、首相に適している魂の属性ではありますが、岸田文雄と同様に頭が2で人運が7であり、大局的見地と仁の数値を鑑みるに、菅首相には素質では及ばないと思われます』

「また、親中・親韓派であることから、米中を主軸として昨今の国際情勢を鑑みるに、彼が首相になった場合、安倍元首相が築いてきたアメリカとの友好関係にヒビが入りかねないという危惧もある」

陰陽師の言葉に青年は真剣な表情でうなずいた後、口を開く。

『彼の人気の理由は、人柄や志や思想が評価されているというよりも、“党内野党”と言われる政権批判というか反骨精神みたいなものが、反安倍政権の意見を持つ人々から支持されていただけではないかと思うのですが』

「昨今のメディアが親中・親韓に傾きつつあることを考えると、幾ら3位だったとはいえ、一定数の党員票はメディアの影響という見方もできるじゃろうな」

陰陽師の言葉を聞いた青年は、腕を組み、苦い表情で口を開く。

『つまり、メディアが魂4を煽るような報道を意識的に行い、党員票が石破茂に集中するように仕向けたというわけですね』

「仮に党員票が完全な形で総裁選に反映されていたとしたら、トップにはなれなかったとしても、岸田氏には勝っていた可能性が高かったことから考えると、そういう結論になるじゃろうな」

『たしかに』

一つ頷いた後で、青年は続ける。

『ところで、この3名以外で、魂の属性から注目している人物はいらっしゃいますか?』

青年の問いに対し、陰陽師は湯呑みの茶を一口飲んでから、重い口を開く。

「強いて挙げるなら、我が国初の女性首相という意味合いも含め、稲田朋美じゃな」

初耳だったのか、青年は手早くスマートフォンを操作し、リサーチを始める。
その間、陰陽師は彼女の鑑定結果を紙に書き足していく。

稲田朋美SS

『稲田朋美は弁護士出身ですし、顔つきから魂2−4という印象を持っていましたが、転生回数が大山の370回代の魂1:王侯・僧侶なのですね。総合運は菅首相と同じですし、大局的見地が90(S)と高いことからみても、たしかにバランスはよさそうですね』

「とは言え、令和のような激動の時代には、やはり魂1が望ましく、彼女は頭が2であることから、今の時代に即したトップではないのかもしれないがの」

陰陽師がそう言った後、青年はスマートフォンの画面を見ながら口を開く。

『ネットで見るかぎり、彼女はさまざまな問題発言や問題ある行動を起こしていたようで、自衛隊の南スーダンの国連平和維持活動(PKO)の日報問題をきっかけに防衛大臣を辞任しています』

「彼女にはそうした面があることから、現時点では力量不足であると言っておるわけじゃが、将来的には、首相となるポテンシャルを秘めているも間違いない。仮に菅首相がもう一期総理大臣を続けるようなことがあれば、その間に実力をつけて、4年後、101代総理大臣に就任する可能性も皆無ではないじゃろう」

『なるほど。僕なんかには想像もつかない話で、正に目から鱗です』

そう言い、頭を下げる青年を横目に、陰陽師は続ける。

「仮に彼女が首相に就任したら、米中戦争が勃発した際に自衛隊を派兵してしまう可能性は飛躍的に高まるはずじゃ。さらに言えば、戦争でアメリカが勝利した暁には、その功績をもとに自衛隊が正式に軍隊とする可能性もじゅうぶんあり得るじゃろう」

陰陽師の言葉に青年は目を見開き、おそるおそる尋ねる。

『そうなると、いよいよ憲法9条の改憲となるわけですね。自衛隊が軍隊になると、また日本が戦争に巻き込まれる可能性が高まり、物騒な世の中になりそうです…』

「ということは、そなたは憲法9条の改憲に対して反対なのかな?」

陰陽師にそう問われ、青年はしばらく黙考してから口を開く。

『不勉強で恐縮ですが、憲法9条を改生してしまうと、日本は戦争に巻き込まれやすくなってしまうのではないかと危惧しています。この世が地上天国ではないことから、戦争そのものがなくなることはないと理解していますが、昔のような大規模戦争が少なくなっているとは言え、日本が戦争に加わることに対して賛成することは難しいです』

「なるほど」

そう言い、陰陽師は湯呑みの茶を一口飲んだ後に続ける。

「実は、安保法制には、たしかに“専守防衛”、“不戦の誓いを基調とした平和憲法”という側面も存在するのじゃが、別な角度で見ると、現行の憲法には、第二次世界大戦で軍部の暴走を許した日本国に対し、その軍事力に恐れをなした戦勝国側が、二度と同じ事態を引き起こさせないようにと、軍隊の保持を禁じたという側面が存在する。それが、憲法9条の基本的な“趣旨“でもあるわけじゃが」

真剣な表情で黙ってうなずく青年を横目に、陰陽師は続ける。

「戦後70年という時間が経過した結果、憲法9条をめぐる状況は、大きな曲がり角に差しかかろうとしている。アメリカ・イギリスを中心とした戦勝国側が、軍隊の保持を認めただけでなく、国連決議による国連軍派遣といった事態に際し、日本に対して金銭のみならず汗を、汗のみならず血を流すことを求め始めたという世界情勢に基づく構造変化が起きているのじゃ」

『つまり、今まで日本は経済支援で主に対応していましたが、今後は軍事面でも加勢するよう、まさかの国連から求められているということでしょうか?』

青年の問いに対し、陰陽師はうなずいて見せてから口を開く。

「“イデオロギー”から“経済”へと世界が大きなパラダイムシフトを始めたとはいえ、問題解決の手段として戦争がこの世から簡単に一掃されない以上、我が国も自衛隊といった目的のはっきりとしない機関(それさえも憲法による規定がないのだが)ではなく、たとえ“防衛軍”といった名称であっても、正式に軍隊を呼称すべき時期に差しかかっていることだけは間違いあるまい」

陰陽師の説明に対し、青年はうなずいてから意見を述べる。

『正当防衛のための軍事力の延長という意味でしたら、自衛隊が防衛軍となることに納得できます』

「この世に“職業の選択の自由”が存在する以上、警察官/消防士といった職業が、他の職業に比べ、生命の危険にさらされる可能性が高くなることは言うまでもない以上、自衛隊に明確な称号と権利を付与することこそが、“命を賭して”職務を遂行している自衛隊員に対する最大のオマージュと考えることもできるわけじゃしな」

『たしかに。大規模な災害時に人命救助にあたるのは自衛隊ですし、警察官や消防士と同等かそれ以上の社会的評価と待遇を得てもおかしくは、ないと思います』

青年の意見に対し、陰陽師は小さくうなずいてから口を開く。

「繰り返しになるが、安保法制とは新たな侵略戦争に道を開く法案ではなく、国連安保理事会の決議が戦争という手段以外の解決策を見出せなかった場合において、世界第三位の経済大国としての義務を果たすための法案なのだ、という認識を国民一人一人がもう一度考え直す時期に来ているのではないかと、ワシは思う」

『おっしゃる通りですね。軍隊を持つイコール、戦争をしかけて軍事的に侵略する、ということになるとは限りませんからね』

「それにじゃ、昔のような武力による争いだけが戦争ではなく、スパイやハッキングによる情報戦争や、経済政策によって相手国に損失を与える経済戦争のように、戦争の手段が変わってきておる」

『そう言えば、先日、米国が“違反商品保留命令”を発令し、中国製の衣服やコンピューター部品などの品目の輸入を禁止しましたが、大きな貿易相手国である米国にそうした対応を取られると、中国は経済的に大打撃を受けますね』

「もちろん、最終的に雌雄を決するのは武力による戦争となるのじゃろうが、既に米中戦争の前哨戦は始まっていると言えなくもないわけじゃし、今回のコロナ禍においても、金を使ってWTOを丸め込もうとせず、問題が明らかになった時点で、あらゆるデータを開示していればまた違った展開になっているかもしれぬわけじゃからの」

陰陽師の言葉に対し、青年は暗い表情で顔を伏せながら口を開く。

『なるほど。以前説明していただきましたが、そもそも戦争とは、二国間の利害の不一致・衝突が話し合いのレベルを超えた段階で想定される最終行動/意思表示(※第4話参照)ですから、一般庶民が知らない水面化で戦争の準備が着々と進んでいるわけですね』

「もちろん、米中双方の持つ核兵器で、地球全体が何度も吹っ飛ぶ時代じゃ。そう簡単に戦火を交えることもないじゃろうが、現在の経済/IT分野における小競り合いは、新しい形の戦争と呼ぶこともあながち間違いではないのじゃろうな」

『令和の問題をひとまずこちらに置いておくとして、そしてこの世が地上天国ではなく“修行の場”という問題もこちらに置いておくとして、この世から“争い”がなくなることはないのでしょうか?』

「仮にこの世から軍事的な意味での戦争がなくなったとしても、夫婦間の対立やイジメもといった、人間同士の争いがなくなることはないじゃろうし、そのような争いを通じて魂が磨かれるという側面がある限り、この世から人間同士の争い、戦争がなくなることはあるまい」

『戦争が必要な理由など僕には皆目検討がつきませんし、それを世直しと言っていいのかどうかさえ、僕にはよくわかりませんが、いずれにしても、令和の“ねじれ”によって米中戦争が起き、結果として自衛隊が軍隊になる流れに向かってしまっているとおっしゃるわけですね』

「目先の事象だけで見るとそなたの言う通りなのじゃが、ワシがみるかぎり、令和の“ねじれ“には、もっと大きな意味があるようじゃ」

『とおっしゃいますと?』

「冒頭に安倍元首相の辞任について触れたが、年号が令和になったことで“ねじれ”が起こり、世の中で様々な方向修正が起きておる」

『新元号が令和でなければ、安倍元首相は体調不良にならずに総理大臣を続けていたということですね』

「そなたはたかが年号と思うかも知れんが、令和という年号がついたことで、日本のみならず、その影響が世界中に伝播し始めてしまった。新型コロナウイルスによる経済崩壊、生活スタイルの変更などといったパラダイムの変換によって、世の中が大きく動き出したことは間違いないじゃろう」

陰陽師の言葉に対し、青年は腕を組み、眉間にシワを寄せて口を開く。

『元号が令和になったことでコロナ禍が起きたのが事実だとするなら、別の元号にする方がいいのではないかと思うのですが…』

「そう言いたくなる気持ちもわからんではないが、表面的に見れば、今のところ悪い現象ばかりのように見えるかもしれん。しかし、実際には、本来のあるべき世界に戻るために、令和という年号が選ばれ、その結果、今のような“ねじれ”が生じたと考えた方が実態に即しておるじゃろうな」

『それは、どういう意味でしょう。令和の“ねじれ“は、改悪というより、むしろ改善に向かっているとおっしゃっているのでしょうか』

青年の言葉に対し、陰陽師は小さく頷き、続ける。

「令和単体でみると、地震、火山の大爆発といった地球の内部からの問題よりも、今回のコロナのような疫病、天変地異、それに伴う凶作、戦争、果ては宇宙からの隕石落下といった災厄が目白押しということになるのじゃが、そもそもの原因とそれらの厄災の役割という、もう少し巨視的な物差しで令和の問題をみてみると、その原因を産業革命にまで遡らせるべきであるようなのじゃ」

『産業革命。そんなに昔にねじれが起こったと…』

「その通りじゃ」

小さく唸ったまま固まる青年を見ながら、陰陽師が言葉を続ける。

「端的に言うと、現代のあらゆる文明は、18世期半ばから19世期前半に始まった産業革命に端を発しているということができる」

『はい』

「もちろんそのすべてを否定するわけではないが、たとえば、クローンの問題や、IP細胞などの出現によって、がんにかかったとしても、他人の臓器などを移植せずに、自らの細胞を使って病気を根治させることが、もはや夢物語でないところまできておる」

『そうですね。このままいけば、不死とまではいわないとしても、寿命が今までの倍になることぐらいはじゅうぶん予想できますよね』

「仮にこの世の目指すべき方向性が、“地上天国の実現”であるのであればそれでもいいかもしれんが」

『この世が“修行の場”である以上、そして400回の輪廻転生という宿題がある以上、そのような方向性は、断固として、阻止すべきだと・・・』

「端的に言うとそういうことになるわけじゃ」

陰陽師は、一つ頷いた後で、言葉を続ける。

「つまり、令和の“ねじれ”とは、産業革命によってもたらされた物質文明、“体主霊従”の世界を、令和の“ねじれ”により、“霊主体従”というあるべき姿に戻すことを意味しており、実際、人知を超えた力がそのような方向性ですでに動き出しておるようなのじゃ」

『にわかには信じられない話ですが、いずれにしても、捉え方によっては、令和で起きている世間一般では不幸と思われる出来事は、地球にとっての好転反応だとおっしゃるわけですね』

青年は腕を組み、眉間にシワを寄せながら、そう言葉を絞り出す。

「端的に言うと、そなたの言う通りじゃ。そしてさらに言ってしまえば、コロナ禍によって引き起こされるであろう出来事を鑑みるに、“体主霊従”から“霊主体従”の世の中に戻るには、それくらいの方向修正が必要なのじゃろう」

『なるほど』

陰陽師の言葉に、小さく頷くと、青年は言葉を続ける。

『ところで、“体主霊従”と“霊主体従”、よく耳にする言葉ではありますが、具体的にはどのように違うのでしょうか?』

青年の問いに対し、陰陽師は紙に文字を書きながら口を開く。

「“体主霊従”は科学を中心とする、唯物論者の考えや意見が主流な現在の物質主義の世の中のこととなる。一方、“霊主体従”とは“霊”、すなわち魂や見えない存在の影響を大きく受ける、あの世の理屈が主流となる世の中のこととなる。もちろん、魂磨きの修行の場として、後者の方がふさわしいのはわかるかの」

陰陽師の言葉に対し、青年は大きくうなずいてから口を開く。

『つまり、魂7(唯物論者)の人間が主導権を握っている世界から魂3(霊媒体質)の人に主導権が移っていくイメージですね。以前、血脈の先祖霊の霊障が顕在化し始めたのも、日本の元号が令和になったからだとお聞きしましたが、“霊主体従”の世の中に向かうにつれ、先祖霊の影響力が強くなったということでしょうか?』

「塞がれているパフォーマンスの数字と霊障によって引き起こされる、特に心身の不調の顕在化を鑑みるに、そなたの言う通りであろう」

『と言うことは、令和のねじれによって、コロナ禍は言うに及ばず、これからも様々な厄災が想定されるだけではなく、最悪、戦争も起こりえるというのですね…』

「そうなってほしくはないが、その可能性は極めて高いじゃろうな」

青年の言葉に小さく頷きながら、陰陽師は言葉を続ける。

「そして、そのような激変の時代じゃからこそ、冒頭に述べたように、頭1の人間が世をまとめるべきで、そのような意味では、菅首相には後任となる人物が育つまで頑張ってもらいたいと個人的には思っておるわけなのじゃ」

『産業革命以前の“ねじれの解消”、それによる“霊主体従”の世の中へ回帰した後、頭1が世をまとめることで、どのような世界になるのでしょうか?』

「それについて話し始めると長くなるから今夜はパスするが、いずれあらためて、そなたの意見も拝聴しながら、ゆっくりと議論をすることとしよう」

『起承転結、お話を伺うかぎり、産業革命以降のおよそ250年分のねじれをまずは戻し、さらに本来の流れで進むはずだった250年、合計500年分の遅れを取り戻すために、かなり手荒い“軌道修正”が必要だというお話はじゅうぶん納得できます』

そんな青年の言葉に頷きながら、陰陽師は口を開く。

「それ故、出口なおの“お筆先”や日月神示で言うところの、“大掃除”が今度こそ、本当に起こるかも知れんわけじゃ」

そう言い、陰陽師は壁時計に視線を向ける。
それに気づいた青年も、スマートフォンで時間を確認する。

『もうこんな時間でしたか。今日も遅くまでありがとうございます』

そう言い、青年は席を立って深々と頭を下げた。

「気をつけて帰るのじゃぞ」

陰陽師はいつもの笑みで手を振り、青年を見送った。


世の中が大きく動いている中、自分はどう動くべきだろうか。
このままの方向性で科学が進み、この世から病気が一掃され、永遠の命を手に入れるのも悪い未来ではなさそうだが、この世を“地上天国”ではなく、“魂磨きの場”、“修行の場”とする限り、たしかに今の方向性は間違っているのかもしれない、そんな考えが青年の頭をちらっとよぎった。しかし…。
今の自分の使命は、そんな荒唐無稽な未来に想いを馳せて一喜一憂するのではなく、目の前の出来事を一つ一つ丁寧にこなし、魂磨きの修行に励もうと青年は決意するのだった。

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