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【読む大ナゴヤツアーズ vol.1 後編/フリーライター・大竹敏之さん】名古屋の和菓子はすごい!

ガイドさんの“その道への愛”をたっぷり語ってもらい、読みものとしてお届けする「読む大ナゴヤツアーズ」。第1回は、名古屋の食や文化に詳しいフリーライターの大竹敏之さんが登場! 

純喫茶めぐりやはしご酒などさまざまなツアーでガイドを務めている大竹さんですが、なかでも「食べ比べやお買い物が楽しい」と評判なのが和菓子名店めぐりツアーです。

前編では、大竹さんの“和菓子愛”を感じるお話を聞きながら、「山田餅本店」で製造現場の見学や試食を楽しみました。後編では、どんな和菓子店に案内してもらえるのでしょうか?


驚きのもちもち食感! 手作りういろうが自慢の「御菓子司 菊屋」へ

やってきたのは、地下鉄千種駅・車道駅近くにある「御菓子司 菊屋」。昔ながらのまちの和菓子店といった佇まいで、看板に大きく書かれている通り、ういろう(※菊屋では「ういろ」と表記)が名物です。

大竹「ここは、午前中に来ると、できたてほかほかのういろうが売っているんですよ。温かいういろうって、食べたことない人が多いんじゃないですか。駅の土産店に並んでいるものとは違った味わいですよ」

「よう来てくれたね!」とカウンターから顔を覗かせたのは、店主の小山孝さん。「大竹さんが紹介してくれるもんで、いろんな人に広まってお客さんが増えましたよ」と話す笑顔から、気さくな人柄が伝わってきます。

2階に工房があるということで、案内してもらいました。

小山「毎朝、5時15分に起きてすぐ、ういろう作りに取り掛かるんです。2時間かけて蒸していますが、昔に比べたら10分ほど蒸し時間を短縮できたんですよ。これのおかげです」

そう言って見せてくれたのは、プラスチック製のせいろです。木製のせいろから替えたところ、耐久性に優れていて、ういろう作りに向いていると分かったことから使い続けているのだそう。

小山「普通、ういろうは蒸してそのまま包装すると思うんですが、うちでは銀紙に包んでからオーブンで加熱しています。熱処理をすると、余計な水分が飛んで味がしっかりまとまるんです。たまたまここにオーブンがあったもんで、ちょっと入れてみようかと試したのがはじまりですね」

加藤「たまたま…!? 元々は何に使っていたオーブンなんですか?」

小山「カステラ用に買ったものなんです。普通のオーブンとは違って、遠赤外線ヒーターが付いています。直火だと焦げちゃう。電気オーブンだと乾燥しすぎちゃう。ちょうど良い条件がそろったのこのオーブンのおかげで、ういろうがよりおいしくなりました」

「ちょっと召し上がってみます?」と出してくれたのは、定番の白ういろう。まだ温かくて、手に持った瞬間から柔らかさを感じます。やさしい舌触りともちもち食感がたまりません!

大竹「冷めてもおいしいんですよ。食べる直前に30分くらい冷蔵庫に入れるのがおすすめなんですよね?」

小山「そうです! 大竹さんもういろうの食べ方を極めてきたね」

加藤「こんなに柔らかくてふわふわなのは、作り方にコツがあるんですか?」

小山「これが本当に難しくて。とにかく正確な分量で作ることですね。ちょっとした量の違いで、味や柔らかさが変わってしまうんです。年に1〜2回くらいは、今日のういろうはだめだ! と一から作り直すこともありますよ」

菊屋のういろうは、「白」「抹茶」「桜」「黒糖」の4種類。それぞれで細かく分量を調節しているそうです。

小山「黒糖ういろうには、沖縄の西表島産の黒砂糖を使っているんですよ。スーパーで売っている普通の黒砂糖とは全然違うので、ちょっと味見してみてください」

ひとかけ食べてみると、濃厚でコクの深い甘味が口いっぱいに広がります。

小山「15年ほど前、和菓子組合の広報活動をやっていたときに、14〜15店舗のういろうを集めた試食会を開催したんです。食べ比べてみたら全部違う味で、こんなにもいろんなおいしさがあるのかとびっくりして。それから、ういろうをもっと研究しようと力を入れるようになりました」

小山「一昨年くらいに製粉会社が変わったときは大変でしたよ。粉が変わると、ういろうの味に大きく支障が出てしまうもんで。理想の粉を作ってもらえるように、成分表を見ながらやりとりしました。粒子の大きさにこだわりがあって、上用饅頭に使うものより少し荒い米粉を使っています」

大竹「長年お店をやっていても、いまだに工夫を重ねる姿勢がすごいですよね。菊屋さんみたいに、名古屋にはごく当たり前においしさの追求を続けている和菓子店が多くて、だからこそクオリティの高い和菓子が生まれるのだと思います」

最後に、ういろうを2本購入。取材している間にも次から次へとお客さんが来店していたため、この日ラストのういろうです……!

店主の孝さんの隣に並ぶのは、ともに店を守る妻の美幸さん。「ういろうはお昼くらいに売り切れてしまう日が多いね。大変だけどありがたいです」と笑います。


今後のツアー情報

ここまで読んだあなたはもうすっかり、ういろうが食べたくなっているのではないでしょうか。次回、2023年2月18日(土)開催の和菓子名店めぐりツアーで菊屋のういろうを試食できます! 

「万年堂」で干菓子の“紅”を入れる作業を見学したり、「坂角総本舗葵店」であの名古屋土産の裏話をこっそり教えてもらったりと、3店舗をハシゴしながらそれぞれ特徴の異なる銘菓を楽しめるツアーです。
名古屋の和菓子名店めぐり 万年堂・菊屋・坂角総本舗 編
~できたてホカホカういろう試食!名古屋の茶の湯文化に欠かせない干菓子、お土産の大定番えびせんべい~

また今後、他の和菓子店でのツアーも企画していく予定です。さらには和菓子名店めぐり以外にも、名古屋の文化を愛する大竹さんによる魅力的な案内でさまざまなツアーをお届けします! 以下リンクから最新情報をチェックしてみてください。
大竹さんのツアー一覧はこちら

最後に、今回の取材で買ったおいしい和菓子の写真をお裾分け。お腹が空いたあなたは和菓子屋さんへ♪


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