ライブハウスのこと

ライブハウスのことについては、なかなか書きにくい。ライブハウスは困ってる というのは本当の本当だけど、そんな事言うと、「もっと困ってる人、たくさんいるわ」なんて矢が知らない人から飛んできたりして、どうもやりにくい。でも困ってるんだ。他のたくさんの業種で困ってるが人たくさんいるように、ライブハウスも困ってる。

外だけでなく、ライブハウス界の内側でも、各店によって考えが違う。いち早く自粛していた店、最後まで音は止めないぞとばかりギリギリまで営業していた店、すでに完全に閉じることを決めた店、じっと緊急事態宣言があけるのを待っている店。

何かを言った結果誰かを傷つけるのは本意ではないけど、今、何が起こってるかくらいは言えるので、お伝えします。

安倍首相も小池知事も「ライブハウス」って言葉を口にするようになった。その度にギクっとしたり、アングリしたりする。

コミケの話するんならコミケに行ってからしろ って気持ちなんだろうか。あなたがたにライブハウスのことを語られたくないって意味なんだろうか。どっちも不遜ですねスミマセン。けど多少ある。

国でも自治体でも要請の中に「ライブハウス」って言葉が盛り込まれるようになったけど、現場の意見としてはキャパ250人の下北沢CLUB Queと、キャパ2800人のZepp Tokyoを同じ言葉で語ることに大きな違和感がある。そりゃ自粛要請は受け入れるけど、それぞれにそれぞれの役割があり、えっ、ソコとココ一緒にするの?それアリ?大雑把すぎじゃね? そんな程度の理解の人とは話できないよって気持ちもある。着席で50人の弾き語りカフェ、風知空知は一体どうすりゃいいんだ。

まだまだ、人が集まって話してたり飲んだりしてよかった頃、下北のいろんなバンドマンが口を揃えていってた「満員の日なんて滅多にない。特に平日はとても少ないお客さんの前でやってる。スペースがら空き。距離とってるよ。スーパーオオゼキのほうが混雑してる。」それ聞くたびに、そんな屁理屈言ってんじゃないよって混ぜっ返してたけど、今になって思うとオオゼキの方が密っていうのは、案外ほんとだったかも。でも、生活費需品は必需品なんだからいいんだよ。

悲しいかなライブハウスは医療、生活必需品、物流のあとのあと。まずはコロナ。まずは命と生活。この環境での優先順位は下がって仕方ない。もちろん受け入れる。

今はオオゼキのほうが大事だよ。

2011年の東日本大震災のとき、アーティストもスタッフもいろんな人が、何かできないかって思った。音楽で何かできないかってそういう活動をした人もいるし、音楽以外で、力仕事でもなんでもしますって形で支援した人もいた。

いろんな人がいろんな考えた方でいたんだけど、当時僕の胸に一番響いたのは清水音泉の清水さんのつぶやき

「16年前の経験も踏まえると生きるのに最低限満たされていない人に音楽で出来ることは何もない。しかしそれを越えた状態になった人に対しては心の支えになれることが無限にあります。音楽を生業にしてる人も今は個人で何が出来るか?だと思います。」

16年前というのは阪神大震災のこと。

もちろん、今回のコロナ禍は阪神大震災とも東日本大震災とも違う。電気があるから家で音楽聴ける。でも日常がすごく制限されているって意味では重なるところもある。音楽は、ライブは遅番主義。遅番の出番はいつくるんだろう。

5月に入って、新規感染ゼロの自治体が出てきた。徐々にいろんな規制が緩和されるんだろうか。ついつい規制って言葉を使ってしまうけど、規制じゃなくて自粛なんだった。この言葉遣いの歯がゆさは、なんとかなんないだろか。

お金の話。

東京で200人から300入るライブハウスの家賃は月に50万から100万以上。場所にもよるから一概には言えない。話を進めるために100万としよう。従業員の給料は?これまたアルバイトが多いのか社員が多いのか、1日何人のシフトで回してるんだとか、個別の事情がありすぎるけど、簡単にするために、月20万の人が10人いたら200万。そして、エキスパートは必要だ。ブッキングでも音響でも照明でも。昨日入ったアルバイトと一流の職人が同じ給料ではそれこそが不公平というものだ。というわけで人件費は月に300万と一旦見積もろう。

ほかにも支払いはいろいろある。大雑把で不確定要素多いけど、家賃と人件費で月に300万から500万てとこが肌感としてある。

東京都の休業協力金は1店舗50万円。追加するという話もある。そりゃありがたい。ありがたいよ。でも月々にかかるお金は上記の肌感です。

ランニングコストの他に、開店のために費用かけた店は当然ある。まずは保証金。いまどきなら、賃料の10ヶ月が相場だろうか。防音工事の費用はピンキリだけど、住宅地に近かい物件だったりで、かなり気合いれるとかなり気合入った金額になってびっくりする。300人規模のライブハウスの防音に数千万かかったりする。音響機材、照明機材は合わせて1000万から2000万ですめば、まぁよかったって感じじゃないだろうか。もちろん、こだわにりにこだわって上を見ればキリがない。リースって手もあるけど、先に払うか、繰り伸ばして払うかって違いで、お金かかることには違いない。

ランニングコストだけでなく、そんなこんなの初期費用を取り戻すのが、ライブハウスの経営でもあります。他業種でも同じ理屈だけど、その中でもライブハウスは設備にお金かかる業種でもあるんです。そして継続的なメンテナンスにも。

下北って家賃高いから、貸店舗の移り変わりが激しい。こないだできた新店がもう閉店ってことがよくある。そんな空き物件にスッポリと入れるのがガールズバー。なにしろ、そんなに防音しないし、厨房も特に力入れない。必要なものってカウンターとカラオケか。あとは、いいキャストさえ揃えれば勝てる店になる。というわけで、最近の下北の商店街、ガールズバーが多いんですよ。

それました。ライブハウスは設備にもお金かがかってるっていう話だった。10年くらい経ってる店は知らないど、2、3年目の店ならまだ開店時にかけた費用を取り返そうとしている最中だと思う。

長くなってるのは十分承知ですが、読んでくれてる方の中にはライブハウスのお金事情を知りたい人もいると信じて、もう少し続けます。

辞めるにもお金いる話。ライブハウスで借りるような物件は住宅と違い、大体が解約6ヶ月前にに通知しなくてはいけない。逆の言い方すると、今月すぐに閉店、退去するんなら6ヶ月分の家賃を払わなくてはならない。

さらに、現状復帰の項目があって、ライブハウスがその物件を解約したけど、その後またライブハウスが入るというような、よっぽどの幸運に恵まれない限り、防音工事の内装ふくみ、すべて壊して、もとのコンンクリート打ちっ放しに戻して返さなくてはいけない。これも結構費用かかります。

進むのも退くのも重い決断なんです。

自粛を受けて4月も5月もほとんどのライブハウスが営業してない。してる店を僕は知らない。自粛要請の一応の期限は5月末までだけど、それが延長されない保証はない。6月に再開出来ることを皆願っているけど、それは願いであって、どこにも確証はない。

感染ゼロの日が続いていけば、自粛要請は徐々に緩やかになっていく。都道府県別、そして業種別に。

どっからどう考えても、「東京の」「ライブハウスの」自粛要請が解除されるのは順番的にだいぶ後の方だと思う。

さらに、仮に6月から店が再開できたとして、6月には誰が出てくれるのかって問題がある。

「今は営業できてません。6月は店が開けられるかもしれないけど、開けられないかもしれない。だけど、もし開けられたら、もし開けられたら、この日出演してください」ってこのお願い、普通のビジネスの約束としては成立してない。

あるのは、友情とか歴史とか心意気。再開を祝って、お祭りとして何日かは成立するだろうけど、それはずっとはできないこと。

ライブハウスが通常の流れになるのは、再開出来る日が確定して、その日を見込んでブッキングが出来るようになることが必要だ。再開までの仕込み期間は絶対必要。それはいつ来るのか、まだ全然わからない。

下北沢ではFLOWERS LOFTが二月に開店した。開店してすぐに今の状況。LIVE HAUSは4月にOPENしようとしてたけど、延期。うん、お互い大変だけどがんばろよという言葉しかでてこない。といってもロフトグループはとても前向きみたいだし、スガナミくんたちは「SaveOurSpace」の活動でも知られるように、すごく意欲的なんで、僕が心配してる場合でもないか。

僕が下北で働いてるから、勢い下北の話になってるけど、東京以外はさらに厳しい面もある。大きな人口差があるから当然で、経営の厳しいところも多い。東京で千人集めるバンドがその県に行ったら動員50人。という話は当たり前にある。50人なら行かなくていいや、とはならず、50人を100人、そして200人に増やす為に行く。店もバンドも少ない売り上げになるけど、それでも行くし、それでも受け入れてくれる。そんな場所がなくなったら、ほんとにどこにも行けなくなる。

札幌のコロニーが閉店を決めた。約20年前にBAZRAを初めて見たのもここだったんで、特別な思い入れもあり、寂しい。

再開するために、今は一旦撤退。コロナが落ち着いた時に再開するためにあえて、いまは閉店するって決めた店もある。キッパリした判断だと思う。

いつ再開できるのか。結局一番大きいのはそこだ。いつまで持ちこたえられるかという事は期限が決まってないと判断できないんだけど、じっと耐え忍んでいる店が多い。2年はライブやれないって決まってるんならそりゃとても悲しいけど対処のしようはある。2ヶ月後なら、大歓迎で対処する。

家賃の問題は大きいけど、人件費の問題はさらに大きい。かりに一年の間、営業できなかったとしたら、仕事そのものが無いその間の人件費を払い続けることはどこの店でも不可能だと思う。その場合、一年間は、スタッフ、社員、アルバイトには別の場所で働いてもらうしかない。そして一年後、何人の人が再開を喜んで戻ってきてくれるんだろう。個々の事情によって全然戻ってきてくれないかも。全員新人スタッフで始めるんだろうか。その場合って、一年前のあの店と同じ店って言う事はできるの? 場所も店名も同じだけど、中身が違う。スタッフみんな知らない人で、こんな店知らない店と一緒だよ。って言われるようなことは避けたい。でも、これってどうしたらいいんだろう。期限が見えないってとがこんなに難しい事態だってこと、ひしひしと感じます。おっと、これ愚痴でした。



いきなり話は大きくなって、日本の音楽業界。全盛期にくらべ圧倒的にCDが売れなくなったという事実があって、音楽業界ではライブ、コンサートの比重がとても高くなった。ライブ、コンサートの収入で多くのアーティストが暮らしている。フェスの隆盛も大いに関係ある。武道館や、アリーナ、球場でライブが出来るなんてごくごく少ないビッグなアーティストだけだったけど、最近はだいぶ多くなりました。ライブに傾斜しすぎという批判もあるけど、僕はこの流れにいいも悪いも無いと思う。たくさんの人が楽しんだ。僕にとっても楽しい場面いっぱいあった。

さらに話は大きくなって、音楽や踊りは、太古の時代からあった。どこの国の神話にも出てくる。それにくらべるとLPとかEPとか、ビニールのレコードの歴史は70年くらい。100年経ってない。CDは40年弱。最近はサブスクがデカイですね、世界的に。話がおおぶりで申し訳ない。音楽はずっとあるもので、入れ物や聞かれ方が時代によって変わっていくという事を言いたかったのです。音楽はずっとあったように、これからもなくならない。そんな事は誰でも分かってる。

音源として聞くのは、時代によって聞き方いろいろあるけど、今日の話はライブ。生で演奏してるところを見たいというあの欲求って一体なんなんだろう。自分のことを考えてみる。目の前でデッカい音がなっていることだろうか。汗とか息吹とかを同じ空間で感じたいってことだろうか。たとえ客席から一言も発しなくてもお互いに同じ場所にいて同じ空間を共有してるってことなんだろうか。

いろいろあるけど、僕の場合は、その瞬間を目撃したいし共有したいってことなのかなと思う。目と耳と肌で同時に。

突然、自分のことを振り返ると、音楽の仕事に一番最初に触れたのは、ライブハウスのアルバイトだった。渋谷のセンター街にあった屋根裏だった。仕事をする者として鍛えられたし、数え切れないほどたくさんのアーティストがそこから育って羽ばたいたり、あるいは途中で挫折したり、そんな事を見てました。はじまりの場所でもあり、まさに現場でした。

ライブハウスを通過しないでブレイクしたアーティストも増えてる。

一方では、やっぱり数多くのバンドのはじめの一歩はライブハウスだし、切磋琢磨する場所もライブハウスだ。その役割は、今もこれから先も変わらないと思います。

コロナが終わっても、コロナ的なものがまたやって来る可能性はいくらでもある。もしかしたら、全員が密になって、汗かいてヌルヌルしてって、あんな体験は出来なくなる世界がやって来るかも。そりゃだいぶ悲しい。あるいは、案外スンナリ元に戻るのかも。どちらにしても新しいマナーが必要とされるるんだろうなって予感はあります。

この事態を一方的な不運と感じ取らずに、したくもなかった経験だけど、おかげで経験値が増えたと捉えられるよう、前向きにすごしたいです。(自分を鼓舞してますが)

思いの外長くなりました。最後まで読んでもらってありがたいです。

次回、もうすこし、軽めに。




この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

ありがとうございます! これからも宜しくお願いいたします
261
下北沢で働いてます。インディーレーベルとプロダクション、ライブハウスを経営してる会社です。網羅的ではなく、自分の周りで起こったことしか話せませんが、今、音楽の仕事で起こっていることを書いていこうと思ってます。よろしくお願いいたします。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。