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本との遭遇覚書・教室に並んだ背表紙

何故新刊書店にはYAコーナーがないのだろう?

YAとは中高生・10代をターゲットにした本のことです。児童書の区分として扱われるものもあり、それは新刊書店では児童書のコーナーに並んでいます。
でもね。
児童書のコーナーに中高生は行かないのですよ。
児童書コーナーに足を運べばわかるのですが、入り口には可愛い絵本や図鑑が並び、小さい子向けのキャラクター物や赤ちゃん絵本があり、小学生向けの児童文庫や学習まんががあり、古典名作が並び、その奥の奥にこっそりYAが並んでいるのです。知る人にしかわかりませんよ。

またYAに属するものは児童書に限らず一般文芸や他のジャンルにも及びます。
でも膨大な数の中から中高生が「自分たちの本」を見つけ出すのは大変です。小説ならまだしも、ノンフィクションや科学哲学芸術関係の本となると見つけ出すのは至難の技です。

図書館にはYAコーナー(ティーンズコーナー)があります。
膨大な本の中から中高生に届けたい本をまとめて並べてくれています。
でも館に寄るのですよね。やはり奥の奥の方にひっそりと並べられていることも。

だからこそ、YA専門の新刊書店やYA専門の図書館があればいいなと思うのです。

『教室に並んだ背表紙』(相沢沙呼)と遭遇。
ミステリだと思って手に取ったのです。学校図書館を舞台にした日常の謎ものかなと思って手に取ったのです。
しかし読んでみると、YAど真ん中の青春小説でした。
居場所がない、周りとうまく馴染めない、劣等感を抱いているなどでしんどい思いをしている子が、学校図書館の司書の言葉を経て、顔を上げ一歩踏み出す物語。
ああ、一般文芸でこのようなテーマの本が出ているんだと嬉しくなりました。本がメインではありませんが、本が好きな人の心にスッと入っていくような物語でした。
物語の中で司書の「しおり先生」が悩める子に本を勧めるシーンがあります。そのようにこの本を勧めてくれる大人がいればいいなと思ったのです。

だからこそ、YA専門の新刊書店やYA専門の図書館があればいいなと思うのです。

既存の書店や図書館でも中高生に向けてのアプローチはあります。
でも、「あなたたちのために書かれた本がここには並んでいます」と言える場所があってもいいじゃないか。
子どものための図書館と銘打った場所ができました。でもそこにYAはほとんどなかったのです。「子どものための」の中に中高生が含まれていなかったのです。

大吉堂はYAをメインにした古本屋です。
所謂YA作品の他にもライトノベルやミステリ・ファンタジーのようなジャンル小説にも力を入れています。図書館のYAコーナーのようになればいいなと本を並べています。
でも古本屋でできることと、新刊書店や図書館でできることは違います。
だからこそ、YA専門の新刊書店やYA専門の図書館があればいいなと思うのです。
力さえあれば自分でやりたいとの思いは強いです。でも力がない。力が欲しい。
今は小さな古本屋でできることをやります。
YAというジャンルがあるのだと伝えます。中高生にあなたたちのために書かれた本があるよと伝えます。

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