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初めてのオンライン合同面接会

私は現在、転職活動中の30代女性である。

4月までに仕事を決めることを目標に頑張っているが
なかなか成果は出ないまま、時間だけが過ぎていく。

 
私は1月に、某合同面接会に参加した。

早めに入口で受付をしようとしたら、テレビカメラを持った方やマイクでインタビューをしている人がいて

クルッと私はUターンした。

 
私はマスコミが苦手である。

というのも、私が小学生・高校生・大学生の頃に
学校にマスコミが押し寄せる事件があり
私はそれで嫌な思いをしているからだ。

街中でインタビューをしていたりしても
私は全力で逃げる。

 
物陰からコソッと見ていると
求職者に色々インタビューしているようだ。

 
うわぁ………やだなぁ。
だけどあそこを通り過ぎないと、会場入りできない。

 
私はしばらくウロウロし、マスコミが引いたところで
受付を済ませて、会場入りをした。

 
 
会場は超満員!だった。

ソーシャルディスタンスの関係で事前予約制であり、少人数定員だったにも関わらず
会場には定員の5倍以上の求職者がいた。
予約制と定員の意味が全くない。

なんということだ。

遅くに会場入りした私が指定された座席は通路側で
マスコミは会場内をジックリジックリカメラで回している。
通路側だとマスコミが近い。

ヤダヤダヤダヤダ…

と、内心私はブーブー言っていた。

 
「今日はテレビ局からの取材が入っています。皆様の顔にはモザイクをかけますのでご安心ください。」 

 
とかなんとかアナウンスがあったが
モザイクがあるとかないとかそういう問題じゃないのだ。何を安心しろというのだ。
私はコロナ禍の中、職を求める人の不安や現状を食い物にされたくないのだ。
やめていただきたい。

 
そんな中、私の隣の方は年配の方で

「プロフィールシートの書き方が分からない。」
「資料が邪魔。」
「早く始めろよ。」
「俺は資格をたくさん持っていて、色んな仕事をしてきたんだから、こんな小さい欄に書き切れないんだ。」

と、わめきちらした。
座席は指定なので、私は逃げられない。

 
 
合同面接会が始まり、今日の流れを司会の方が話していたが
左隣の男性が騒ぐので何を言っているか聞き取りにくいし
右隣にはマスコミがウジャウジャいるから気が散るしで
私は合同面接会前から憂鬱になる。

 
コロナ禍の為、当日参加キャンセルした企業もいくつかあり
企業数に対して求職者の数は明らかにおかしかった。
面接は一人15分だし、人数と企業数を見ると、明らかに時間内に聞き終わらないことが明白だった。

 
その日、めちゃくちゃ気になる企業はなかったが、参加企業の中に福祉で大手の会社が参加していた。
その会社のAさんは、いかにも福祉に携わっています!という感じのできるオーラを身にまとっており
明るく朗らかで、笑顔で聞き取りやすい声で企業説明をした。

 
その合同面接会は、まず、参加企業が簡単に自社アピールをして
その後求職者が面接に行くスタイルだった。

 
面接開始の挨拶の後、人は群がり
そういった様子をすかさずマスコミはカメラで映し
相変わらず隣の男性はひたすらに文句を言っていて
私はプチンッと来た。

 
今日は収穫なし。
帰ろう。
企業資料はもらえたし(そこにURLが載っているから個人連絡もできるし)、今日面接はできなさそうだし、テレビに絶対写りたくない。

 
私と同じく感じた人もいたのだろう。

何人もの人が席を立ち、会場から出た。
一旦出ただけかもしれないし
私のように二度と戻るつもりもないのかもしれない。

 
タイムイズマネー。
ここにいるのは時間が勿体ない。他のことをしよう。

 
そう、私はせっかちだった。

 
  
私はその足で近くのハローワークに行き、新着求人をチェックした。

 
 
 
 
Aさんとの再会は思いがけない場所であった。
なんと、この次の日に再会したのである。

この合同面接会の次の日は、人生初のオンライン合同面接会だった。
コロナ禍の中、とても今風である。

 
転職活動自体は人生初だが
私は大学の時に一般就活を、専門学校の時に福祉就活を行っている。
就活のくくりなら人生3回目になり、それなりに合同面接会には参加してきたが
オンライン合同面接会は初めてである。

 
 
オンライン合同面接会は、今流行りのZoomとやらを使うらしく
自宅からパソコンやらスマホやらで参加が可能であるらしいが
難しい場合は、10名までなら某会場にパソコンを用意するので、会場まで来てくださいと言われた。

 
私は基本的に自宅でパソコンをやらない。
長時間パソコンをするのに適していない環境なのと
私のパソコンよりも、職場のパソコンの方が使い勝手がよかったからだ。

引っ越す前はパソコン部屋があり、使い勝手がよく
しょっちゅうパソコンをしていたが
社会人になってからは
パソコンで何かをする時は職場パソコンでほぼ全ての用事を済ませた。

今はスマホで動画が見られるから、仕事をやめてからも、パソコンがなくても日常生活に困りはしなかった。

 
だが、Zoomとなると話は変わる。

 
流行りに乗っかり、去年何人かとスマホでZoom等ビデオ通話をしたが
画面がフリーズしたり、画質が悪かったりと
なかなか上手くいかなかった。

また私の部屋だと配置する場所に困ったり
部屋の様子が見られてしまうので
私はオンライン電話が嫌いだった。

 
もともと、電話は好きだが、私はビデオ電話が昔から苦手だった。
なんとなく気恥ずかしい感じがした。
ビデオ電話をするくらいならただの電話がいいし
ビデオ電話をするくらいなら普通に会いたい。

 
合同面接会となると、上手くアクセスできなかったり、ワタワタしてしまうと印象が悪くなりそうだなぁ…

と、思った私は
会場にてオンライン合同面接会に参加することを即決し、申し込みをした。
定員は10名だが、無事予約できてよかった。

 
 
そのオンライン合同面接会の会場は、先日、ソーシャルディスタンス婚活パーティーに参加した場所だった。
婚活だったり、合同面接会だったりと
私はいつもここに出会いを求めてやってくる。

 
受付に行くと、受付表が置いてあり、それにより今日の参加はわずか5名と分かる。
しかも、そのうち一人は×がついていたので、当日キャンセルしたのだろう。
正式には4名の会場参加だった。

 
さすが現代っ子。
まぁ普通はみんな、自宅からパソコンやスマホから参加するわな。

 
私は納得をしながら、受付を済ませた。 
どうやら会場入り求職者は私が第一号らしい。

 
通された部屋は接続が悪かったらしく
別部屋に私は通された。
これだからオンライン面接は怖いのだ。

 
 
通された部屋にはパソコンがたくさんあり
巨大モニターがあり
何やらコードが複雑に絡み合っていた。

スーツを着た女性がヘッドホンをしながら
何やら指示をしたり、打ち合わせをしたり、接続をしていた。

 
すごい!アニメの秘密基地みたい!

 
と、私は内心はしゃいだ。
メカだらけで、巨大モニターに映る人とやりとりをするなんて近未来だ。

 
 
オンライン面接会でも、まず最初はプロフィールカードを書いたり、資料を見る流れは変わらず
私は言われるがままにそれらを行った。

どうやら、まずは自宅(個人スマホやパソコン)から参加の求職者が企業と30分やりとりし
その後、会場の求職者は企業とやりとりするスケジュールらしい。

 
張り切って早々と来た私はやることが終わり
眠気に誘われた。
昨夜は転職活動仲間と遅くまで電話をし
愚痴り合ったり、情報交換をしていた。

睡眠時間は四時間である。
普段七時間寝る私にとっては寝不足である。

 
暖房のきいた部屋で私は眠気と戦っていた。
眠気と戦う私の前では、合同面接主催会社がパソコンで接続と戦っていた。
やはり大多数の人と繋げているので、不具合が派生したり、上手くいかなかったりしていたらしく
なかなか大変そうだった。

 
やっぱり、会場のパソコン使うことにしてよかった…!

 
と、私が思ったあたりで、他の求職者二名がやってきた。
一人は遅れて来るらしい。

 
 
オンライン合同面接会は、通常の対面合同面接会と比較すると参加企業が多かった。

会場参加者は三社まで受けられるらしいが
どちらにせよ、話を聞きたい企業は私は三社しかなかった。

 
まずは各企業、個人求職参加者が巨大モニターにドーン!と写った。
自宅からの参加者は非常に多かった。

 
企業はさすがオンライン面接会に慣れているらしく
背景で企業アピールしたり
無難な部屋で参加していたが
一般求職者は、いかにも自宅にいます、という部屋でほぼ全員が参加し
しかも全員フルネームで表示されていた。

 
うわっ…
一般求職者、部屋の情報と顔と名前が全バレやん………

 
会場参加の場合、最初の顔合わせはあくまで主催会社の方がやる上
名前は名字しか表示されない。
背景も白い部屋だから無難である。

 
本当に、会場参加にしてよかった…
フルネームと顔と部屋が見知らぬ人達に晒されるとか私は嫌だ…

 
私は眠気が吹き飛んでいった。

 
 
まずは、各企業が簡単に自社アピールをした。 

なんとその中に、昨日合同面接会に参加したAさんがいた。

聞き覚えがありすぎる自社アピールと見覚えのありすぎる資料に笑えてきた。
まさかの昨日の今日である。
昨日、速やかに帰った選択は正しかった。

 
オンライン合同面接会では、各企業が対応する時間枠が決まっており
通常の合同面接会のように、本命企業から攻めるとか、空いているブースから攻めることはできない。

 
まずは、教育関連の会社の面接会だ。
私は参加を希望し、会場の方と共に参加した。
パソコンにはヘッドホンが繋がれ、一人一台使用である(主催会社の方は小まめに消毒をしていた)。
私と企業側と参加者がパソコンにバッと映し出される。

 
おぉぉ!近未来的だ!!

 
今までオンライン電話は三人までとしかしたことがないから
大人数がパソコンに表示されてビックリした。

 
自分の声の大きさが適度かが分からなくて不安だし
目線の合わせ方にはやはり戸惑った。

 

驚いたことに、その日会場にいた求職者四名は全員がその企業の説明を聞いた。
オンライン合同面接会の中、一番人気はその企業だった。

 
その企業の塾に私はかつて通っており
更に言えば大学四年生の時に最終面接で塾の講師に落ちた経緯があるが
今回は30代以上の転職者対象の求人であり
当時とは募集職種が異なった。

 
さすが教育関連の企業なだけあり、プレゼンは非常に上手かった。

 
 
その後、私の興味がない企業の面接会が始まるわけだが
パソコンで他の求職者が話している時
カメラの配置と私の指定された席の都合で

私はしっかりと顔が映るという最悪の事態だった。

 
え?何これ…
私、他の求職者が話している時はどうしたらいいの?
笑顔?真顔?
正面向いていた方がいいの?
メモをとるフリして落書きしていていいの?

 
うっわ、この待機時間の使い方、微妙………

 
私は非常に、ソワソワした。

 
 
 
その日のスケジュール上、Aさんの企業との対話は一番最後だった。

その時、私以外に希望求職者は誰もいなかった。

 
「こんにちは。●●社のAです!」

 
昨日も、そして今日の自社アピールの際も感じたが
やはりAさんは素敵な方だった。
私は実は昨日もお会いしたことを話し
Aさんと昨日の合同面接会の話で盛り上がった。
やはり、多数の求職者を受け入れた結果
私が帰ってからもバタバタしていて収集がつかなかったらしい。

 
Aさんとは会話が弾んだ。
私達は笑いながら話が盛り上がった。
Aさんの企業は高齢者福祉事業を幅広く展開しているので
うちから通える範囲にデイサービスの正職員求人はあるかを尋ねた。

 
どうやら、二箇所のデイサービスで求人が出ているらしい。
ただ、現在も選考中であり、決まる可能性もあることも教えてくれた。

本社での研修に加え、二箇所のデイサービスでの見学に参加するかを提案され
私は前のめりになり、「お願いします。」と頼んだ。

 
しかし、Aさんは本当に話しやすいし、聞き上手だ。
他の企業との合同面接会は質疑応答をしても時間内に終わったが
Aさんとの会話は時間内に終わらなかった。
オンライン合同面接会の場合、直接その場でプロフィールカードを渡せない為
どこ住まいだとか資格だとかを話していると
時間はあっという間に足りなくなった。

私は携帯番号を伝え、後日連絡を頼んだ。

 
司会者「はい、終了10秒前!10、9、8……」

 
私「Aさん、本日はありがとうございました!電話お待ちしています!」

 
A「こちらこそ、本日はありがとうございました。後日連絡をします。」

 
(プツッ)

 
早口で最後の挨拶をしたところで、強制終了となり、モニターは真っ黒になった。
これもまた、オンライン面接会ならではだ。

 
他の求職者は気になる企業面接会がとっくに終わり
私がヘッドホンを外した時は
他の求職者はいなくなっていた。

 
 
最後にアンケート等を提出し、私は会場を後にした。
 
 
 
 
私はAさんが想像以上にいい人であり、またデイサービス見学の話にこぎつけたことで
その日は達成感があった。

 
その次の日もAさんは合同面接会でマイクを握っていた。
三日連続で合同面接会でAさんを見掛けた。
なかなか、合同面接会で三日連続で同じ人と会うことも珍しい。
というか、初めてだ。

Aさんは三日間、疲れを見せず
笑顔で明るく朗らかに企業説明をしていた。

 
私はAさんからの連絡を、大人しく待った。

 
 
だが、電話はなかなか来なかった。

 
私はソワソワした。
まさか三日も連絡が来ないとは思わなかった。
まぁ…選考中とは言っていたし
合同面接会で希望者が私以外にもいて
色々調整もしているのだろう。

 
しかし、私は頭を抱えた。
同時進行で私は転職活動をしていたので
今から二箇所のデイサービスの見学の予定を早急に入れるとなると
なかなかに隙間がなくなってきた。

Aさんからの連絡が来ない間も
私の予定は一つ、また一つと増えていた。

 
連絡が来ない四日目の朝、私はさすがに嫌な予感がした。
あまりにも連絡が来ない。
これは覚悟した方がいいだろう、と身構えた。

きっと、見学はなくなったのだろう、と。

 
 
オンライン面接会から四日目の夕方、ようやくAさんから連絡が入った。
Aさんは電話でも実に朗らかで、丁寧だった。

A「連絡が遅くなってしまいまして、申し訳ありません。」

 
私「いえいえ、毎日Aさんが合同面接会でお忙しいことは分かっていましたから。忙しい中、お時間作っていただいてありがとうございます。」

 
A「それでですね、見学の件なんですが…、その、一足先に採用が決まってしまいまして……お応えできないことになりました。
申し訳ありません。

GHや特養での求人はまだ空きがありますが、いかがでしょうか?

私は真咲様の人柄が素敵だと思いまして、もしよろしければ、そちらの見学の方を案内させていただきたいです。」

 
…私は全てを聞かなくても、もう分かっていた。

四日も連絡がないというのはそういうことだ。
Aさんの会社は大手だし、合同面接会のAさんの態度は立派だ。
働きたい人はあっという間に集まったのだろう。

 
私「話しにくい話でしょうに、話していただいてありがとうございました。見学がなくなった件、了解致しました。

現在は夜勤を考えていないので、他の職種に関しては検討させていただきまして、応募の際には改めて私から連絡させてください。」

 
A「オンライン面接会では、見学や求人の話をしていたのに、このような結果になってしまって申し訳ありません。」

 
私「いえいえ、あの時にもう他の方を選考中とお伺いしていましたし、すぐに応募しなかったのは私の責任ですから、謝らないでください。

採用には繋がりませんでしたが、福祉業界に●●企業があり、Aさんという方がいらっしゃることを知れただけで私は嬉しかったです。

またどこかでご縁がありましたら、その際は宜しくお願いします。」

 
私は笑顔で電話をしていたが、切った後、フゥ………と、ため息を吐いた。
正直、落ち込んだ。

 
 
障害福祉分野で働きたいのに、この人いいな!この人と働きたい!と思える人が管理者や面接者にいなかったり
いても、様々な働く条件が、私の求めるものとは合わなかった。

 
高齢者福祉分野では、いつも思いがけずにいい人に出会う。
あぁここなら働いてもいいかな、と夢を見たり
採用担当者に気に入られても
結果はこのようにいつも惨敗だった。

私がいいなと思うくらいの施設や条件だから
人気が高いのだろう。

 
 
合同面接会で話せなくても
次の日のオンライン面接会でAさんと再会した時
もしかしたら運命かもしれないと思った。

それは私の思い違いで勘違いでしかなかった。

世の中には、私でなければいけないことなんてない。
Aさんは私を気に入ってくれていたけど
Aさんは優しい方だから
きっと色々な人に優しくて
私を気に入ってくれたなんていうのは、自惚れだ。

 
お互いに人柄が素敵だと褒め合っても
求人がないなら先に進まないし
どんなに企業や施設が素敵だと思っても
選ばれなければそれで終わりなんだ。

 
あぁ、私に体力があれば、よかった。

夜勤をやってもいいという気合があれば
変則勤務を受け入れる気持ちがあれば
もっと早く仕事は決まっただろう。

 
だけど、私にはないのだから仕方ない。

企業や施設の雰囲気も優先したいが
日勤は私の中で譲れない願いだった。
むしろ日勤にこだわるならば
福祉業界以外に転職するしかないかもしれないとすら
日に日に思うようになってきた。

 
期待して夢見ては上手くいかず
早く働かなきゃいけないというプレッシャーや
無職という現実が
私に重くのしかかって眠れなくなった。

 
早く仕事したいな。
私は何の仕事が合っているか、もはや分からない。
春までに仕事は決められないかもしれない。
私は社会不適合者だ。

 
そう、眠れない夜ほど自分を責めたり不安になるけど
仕事を決めるまではこの苦しみからは決して逃れられない。
だからしんどくても転職活動をやめてはいけないと
自分に言い聞かせて
また、今日も立ち上がる。

落ち込んでいたって、世界は何も変わらない。
自分で切り開いていくしかないんだ。

 
 
 
Aさんからの電話で、縁は途切れたと思ったが
その後別日の合同面接会でもAさんと再会した。
つまり、一ヶ月の間に私はAさんと四回会ったのだ。

 
私はAさんに背を向け、別の企業ブースで面接を受けた。

 
私は次へいかなきゃいけない。
無理矢理にでも、だ。





 







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