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地方の小さな町工場が無理してでもD2Cブランドをやっている理由。

皆さんこんにちは。
静岡県裾野市でMANUALgraph(マニュアルグラフ)というソファ専門ブランドを運営している鈴木大悟と申します。
祖父の代から続く小さな家具工場の3代目として仕事をしています。

今回は、うちの様な無名の小さな町工場がなぜ自社ブランドをやっているか、またブランドを始めて7年が経過し、実際どうなのかをまとめてみました。

昨今、日本でもアパレルを中心に様々なD2Cと言われるブランドがたくさん存在する様になりました。
D2Cの定義は様々で、うちのブランドがD2Cブランドなのかと言うと、ちょっと違うとも思っていますが、日本のものづくりにとってD2Cと言う手段はとても素晴らしい手法だと思っています。

我が社が自社ブランドを通じて実現したいこと、そしてどうなりたくて、7年たった今どうなったかを赤裸々にまとめてみました


1、日本のものづくりを再定義したかったから。

僕がブランドを始めた1つ目の理由は、日本のものづくりを再興したかったからです。

戦後日本はものづくり大国として繁栄してきました。
弊社も祖父の代から家具を作り続けて来ました。

しかし、バブル期以降日本は国内で生産することを徐々にやめ、人件費の安い海外での生産が中心となりました。

デフレで物価が下がり安い物しか売れない国内市場では、日本人がつくる製品は高くて売れなくなったからです。
皆さんの身の回りを見回してみて下さい。
果たして純粋に日本で作られた物は一体どのくらいあるでしょうか?

家具の世界でも同様で、国内で作る生産者は減り、アジアを中心とした海外製品が主流となりました。

そんな中我が社は、先代の努力もあって細々とですが国内の自社工場での生産を続けてきました。しかし、その生産量は減り、僕が帰ってきた頃にはピークのバブル期の1/3の生産量に減ってしまっていました。しかも安く作らないと他社の海外製品には価格競争に勝てず、自分たちや職人の賃金を削ってでも安く作ることを実践しないとならない状況でした。

本来ものづくりは「つくり手」と「使い手」双方が幸せにならないといけないと考えています。このままではつくり手が疲弊していく一方だと言う状況でした。

そこで思いついたのが「自分たちで作った製品をダイレクトにお客様にお届けする」と言ういわゆるD2Cという手法です。ブランドを立ち上げた当時はD2Cという言葉はなく(知らなかっただけかもしれませんが...)「卸をせず直販する」ブランドとして本当に小さく立ち上げました。

ファクトリーが直販すると、中間マージンを省くことで実際の販売価格より確実に安く販売することができます。

そして無理に品質を下げたり、自分たちの賃金を下げる事なくお客様に高品質な製品を適性に安く販売することができます。

単純なことですが、小売もましてやブランドなど運営もしたことのない小さな地方の町工場にとってはハードルの高いことですが、この手法でしか我が社も、日本のものづくりも生き残って行く手段は他にない、とさえ思って実行してます。

2、地域を発信するコンテンツとしてのブランドになりたかったから。

以前のNoteでも書きましたが、僕は我が社のあるここ静岡県裾野市で生まれ育ちました。しかし中途半端なこの田舎なまちがどうも好きになれず、高校を卒業と同時に地元を離れ、憧れの東京で暮らし始めました。

そのまま約15年ほど東京で暮らし、結婚して妻と子供と共に充実した都会暮らしを満喫していましたが、2011年の東日本大震災をきっかけに家業を継ぐためここ裾野市に帰ってきました。

帰ってみると、嫌いだったはずの自分の地元がだんだんと好きになり、いつの間にか地域を活性化させる活動にどっぷりハマる様になりました。

そして、本業である家具製造業を通じても何か地域に貢献したいと思う様になりました。

裾野市は人口約5万人の小さなまちです。
最近ではTOYOTAさんがコネクテッド・シティを市内の工場の跡地に作ると発表し話題となりましたが、元々何か観光の目玉があったり、有名な特産物がある訳ではありません。

でも、何より富士山の雄大な景観があったり、人々が暖かったり、もっともっとこの地域の良さを知ってもらい、もっと多くの人々にこの地域に訪れていただきたいと考える様になりました。

全国の人々がこの地域を知るきっかけとなるコンテンツが今一つ少ない中で、「裾野市ってあのソファブランドMANUALgraphがあるところだよね!」と、うちのブランドがこの地域に訪れるきっかけになれたらいいな、と思ったのがブランドを始めた2つ目の理由です。

まだまだ認知度の低いブランドですが、週末には毎週の様に工場に併設された裾野のSTOREに県外から多くのお客様がお越しくださっていました。
今はコロナ禍で県外からのお客様は残念ながら減っていますが、収束が見えた際にはさらにこの地域を知っていただけるきっかけのブランドとなれる様に頑張りたいと思っています。

MANUALgrapの製品はオンラインストアを除くと、裾野市の本社工場に併設されたFACTORY&STOREと、昨年オープンしたららぽーと沼津店の2カ所でしか展示販売していません。

小さな会社なのでいきなり全国に出店などできないし、卸をしないと決めているので自分たちのお店でしか販売ができません。
ビジネス的には非効率でなかなかスケールしませんが、地域に訪れていただくきっかけとなるブランドを目指す以上、当面はここ静岡県に来て実際に僕たちのものづくりを体験していただきたいと思っています。

そしてその際には富士山に登ったり、キャンプをしたり思う存分この地域の素晴らしさを味わっていただければと思います。

3、DIY精神でやりたい事を自分たちの手でやりたい。

90年代後半から2000年代初頭にかけて、僕の青春時代には裏原系のアパレルブランドや、国内外のパンク系のインディーズレーベルなど、DIY(Do It Yourself)の精神で、規模は小さいながらもカルチャーに大きな影響力を持つブランドがたくさん生まれました。

そんなブランド達の、やりたい事を資本に頼らず自分たちの手でやっている姿はとてもカッコよく憧れを覚えました。20代だった僕はそんな彼らから「やろうと思えばなんだってできるんだ」と言う精神を教わった気がします。

現代も若い人たちが小さくD2Cブランドを始める姿を見ると、何か当時と共通するものを感じますが、僕も7年前にブランドを始めたときは「なるべく自分達の手で良いものを直接お客様に届けるんだ。」と言う想いでブランドを始めました。

もちろんビジネスですし、社員も抱えていて失敗する訳にはいきません。
お客様にキチンと納得していただける製品をお届けしなければいけないのは大前提ですが、つくり手として、自分達がくわくわくする事をやらないと楽しくない。

そんな想いからブランドのモットーを「FUN LIFE,FUN SOFA」としました。
ソファを通じて、ものづくりを通じてわくわくする暮らしをお届けする。
そのためには自分達が自分達の手で納得する製品やお店づくり、そしてブランドづくりを実施し、お客様に「FUNな暮らし」をお届けしたいと思って日々奮闘しています。

4、ブランド立ち上げから7年たった今。そしてこれから。

昨年10月、裾野市の隣の沼津市に新たにできたららぽーと沼津に満を辞して、かなり無理をして直営店を出店しました。

こんな小さな町工場の会社が、大型ショッピングモールに出店するなど無謀で、周りからもだいぶ反対されましたが、なんとかやっています。

ブランドを始めてから7年、会社の売り上げも従業員数も3倍になりました。

でもブランドを始めた当初思い描いていた姿はまだまだ程遠く、もっともっと従業員にとっても誇れる会社にならなければいけないし、僕も全く満足していません。

立ち上げ当初描いた、「つくり手と使い手双方が幸せになれるものづくり」そして「地域を代表する人々を地域に呼び込むブランド」はまだまだ実現できていません。

昨今D2Cブランドと言われる様々なブランドが立ち上がり、インターネットを駆使してわくわくする体験や製品を提供するブランドがたくさん出現しました。青春時代に憧れたあのブランド達と同様、大好きなブランドもいくつもあります。

そんな現代のブランドにも影響を受けながらも、自分達の理想と、お客様の「FUN」な暮らし、そしてその先にある日本のものづくりの再興と地域の発展を目指し、ブランドという僕たちのバンドワゴンはこれからも荒野の道を走り抜けていきます。

もしこれを読んで静岡にこんなブランドがあるんだーと、興味を持っていただいた方がいらっしゃいましたら、何もソファを買ってくれとは言いませんので、コロナが落ち着いた際には、富士山を見たり温泉に入ったりするついでに、僕たちの工場とお店にお立ち寄りいただけれればと思います。

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静岡県裾野市在住。 (株)フジライト代表取締役/ソファ専門ブランドMANUALgraph(https://manualgraph.com/)代表/一般社団法人南富士山シティ代表理事 #ものづくり #まちづくり #地域 #地方創生 #D2C #ブランド #中小企業

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