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課題を解決するものづくりとは?

皆さんこんにちは。
静岡のソファ専門ブランドMANUALgraphの鈴木です。

この度当社では、長野の株式会社わざわざさんとコラボソファ「TSUGU」を数量限定で販売する運びとなりました。
どんな経緯でこのソファを開発することになったかは、わざわざさんのnote
に詳しく書かれていますので是非こちらをお読みいただければと思うのですが、

補足的に今回のコラボソファでソファブランドとして何を実現したかったのか、どんな課題を解決したかったかを僕の視点で書きたいと思います。

様々な課題。

ものづくりの現場にも様々な「課題」があります。

僕たちは人間として生きていく上でも、そしてものづくりを通じたビジネスを行う上でも、様々な課題を抱えながら日々を生きています。そしてその課題を解決することに生きていく上でも、ものづくりを行う上でも日々向き合っているんだと思います。
課題があることはネガティブな要素もありますが、それを解決することはとてもクリエイティブな活動だと思います。
お客様の課題を解決することこそがマーケティングだとも言われたりします。

僕がここで言っている「課題」は、その対象によって以下の3つに分類されます。それは、

・社会の課題
・お客様の課題
・自分たちの課題

です。ものづくりをする上で、自分たちの課題はもちろん、そもそもお客様の課題を解決しないとビジネスは成り立たないし、同時に社会の課題にも向き合わないと企業としての責任は果たせません。
この3つを商品やサービス、ものづくりを通じて同時に解決したいと常に思い、これまでも挑戦してきました。

そして今回このコラボソファ「TSUGU」では、わざわざ代表の平田さんとの出会いで、ソファづくりを通じて様々な課題を解決する商品開発をすることが出来ました。

社会の課題

冒頭にご紹介したわざわざさんのnoteにもあるように、まず今回解決に取り組んだひとつ目の社会的課題は、「廃棄の問題」です。
僕たちもソファメーカーとして常に新しいソファを作り続けないと商売は成り立ちません。場合によってはお客様に新しいソファをご購入いただくにあたり古いをソファを自ら引き取って処分することもあります。

MANUALgraphは立ち上げ以来「丈夫で長持ちするソファづくり」を心掛けてきました。ヨーロッパの様に出来れば末長く、直しながら家具やソファを使い続けて欲しい、と言う思いからです。
当社は工場直営のブランドなので、当然ソファの修理や張り替えは容易に出来ます。ブランドを立ち上げて9年ですが、今のところご購入いただいたお客様からの修理依頼はほとんどなく、でも今後それに対応できる体制は整えています。
しかしそこでネックになるのは配送コストです。大型のソファを工場に持ち込み、またお客様に送り返すだけで場合によっては修理代以上のコストが掛かってしまいます。近隣のお客様には自社配送で低コストで対応も可能なのですが、全国対応ともなるとそうもいかないのが正直なところです。

この課題を何とか仕組みやデザインで解決できないかとずっと思っていました。

簡単にパーツをバラせられる「TSUGU」ソファ。

それをデザインと仕組みで解決できたのがこの「TSUGU」ソファです。
平田さんや僕らのアイデアと、それを今回プロダクトデザインで参加してくれたマイグラントさんのデザインの力で解決することが出来ました。

このソファは土台と背中、座面をパーツごとに簡単にバラすことが出来ます。例えば長年使っていただいた上で「座面がヘタった」「生地が汚れてしまった」などの場合、バラして必要なパーツだけMANUALgraphに送っていただくことが出来ます。そうすることで配送コストを抑えて修理することが可能です。当社のソファは中身にこそ拘っているつもりで、経年劣化で生地やウレタンが破損してもその中身の木枠とバネは本当に何十年も耐久する作りをしていると自負しています。

丈夫なソファの中身については是非こちらのnoteをご参照ください。

今回のデザインとアイデアによって、配送コストを軽減させ低コストで「直しながら末長く使う」と言うことが実現でき、社会的な課題である「廃棄をなくす」と言うことに少し寄与できたのではないかと自負しています。

そして廃棄の問題はもうひとつあります。これは自分たちの課題でもあるのですが、ものづくりの現場で必ず発生する木材や生地の端材の廃棄問題です。

年々たまっていく生地のハギレ

当社の工場内にはこれまで長年にわたり日々の生産の中で少しづつ発生する生地のハギレや、また木材の端材が大量に溜まっていました。

木材や木クズはなるべく無駄にしない様に、薪にしたり近所の農家さんに肥料として引き取ってもらったりと工夫はしていますが、それでも大量に発生するのでコストを掛けて廃棄しています。
生地のハギレもポーチなどの小物にして店頭に並べたり、時にはハギレ市を開催してハギレのまま販売したりしています。(これが結構人気だったりします)
特に生地のハギレ、僕らは敬意を込めて「ハギレくん」と呼んだりしていますが高価な生地のハギレも大量にあったりして本当にもったいないんです。

今回そんなハギレくんたちに目をつけてくれたのが平田さんです。

工場内を歩くやいなや、すぐにその大量なそして貴重で価値のあるハギレくんたちを見つけて「これを(彼らを)使ってソファにしましょう!」と言ってくださいました。

工場内に残ったハギレでできたソファなので当然数量は限定です。ハギレの在庫m数によって1台しか作れないのがほとんどです。それを今回平田さんがハギレの生地1枚1枚(一人ひとり?)を吟味してくださり、組み合わせを考えてくれました。

そして次に木材の廃棄問題。
こちらをご覧ください!

合板1枚を無駄なく使う設計

このソファは主に国産の合板を使用しているのですが、マイグラントさんが書いてくださったデザインを僕らで寸法調整をさせていただき、材料を1枚の合板から無駄が全く出ない寸法にして材料の無駄を、そして廃棄を軽減することを実現することが出来ました。

これは僕のアイデアです(自慢w)。

このアイデアにより、1枚の合板から無駄をなくすのはもちろんのこと、細かいパーツは他のソファをつくる際に発生する端材も再利用することが可能になります。

毎日ものづくりの現場で発生する端材やハギレを目の当たりにしていつも「もったいない」と思っていました。
今回のソファではその端材を再利用出来る仕組みができとても満足しています。

お客様の課題

お客様のライフステージの変化に寄り添う仕組みの構想

汚ったない絵と字ですいません汗
これ、僕が以前から構想している「お客様のライフステージの変化に寄り添う仕組み」です。

冒頭から「ソファを末長く直しながら使って欲しい」と言っていますが、とは言えお客様の暮らしやライフスタイルは多様化し、そして変化して行きます。家族構成や、今は移住も増え暮らす環境も常に変化する人も多いでしょう。
そうなると、その変化に合わせて必要なソファも変化していきます。

その際にソファを廃棄するのではなく、工場直営のMANUALgraphのソファであれば捨てるソファを引き取って修理してリユースすることが可能です。
これはまだ仕組みが確立できていないのであくまで構想です。

今回、このTSUGUソファの最初のラフデザインを見た瞬間、この構想が遂に実現できる!と興奮して早速この汚ったない構想図を平田さんたちに提示しました。

「これがやりたかったんです!」と。
(皆さんのリアクションは若干「??」な感じだったと記憶していますが。。。)

TSUGUソファは基本的に一人掛けのソファとその他のパーツを組み合わせて使っていただくデザインになっています。
このデザインであれば将来的に家族が増えたり、暮らしが変化することによって、ソファを買い替えるのではなく「買い足す」ことでその課題を解決することが出来ます。
場合によっては「マイナスする」こともあるかもしれません。その場合は当社で引き取ってまたハギレで張り替えて再利用することも出来ます。

「お客様の変化する暮らし」と言う課題をこのソファは長くに渡って寄り添い解決することが出来るんです。

最後に自分たちの課題。

課題に向き合いながら日々ものづくりに励んでいます。

自分たちの課題はある意味イデオロギーなので、正直お客様には関係がありません。よくある斜陽産業の嘆きもしかりです。

とは言え日本のものづくりも様々な課題を抱えています
「日本のものづくりを元気にする!」と言うビジョンを掲げてる当社も正直
コロナの影響もあって「いえーい!めっちゃ元気だぜ!」と言う状況とはとても言えません。

そんな地方のものづくりの現場の課題に目をつけてくださった平田さんには感謝しかありませんが、自分たちの課題は自分たちで解決するしかありません。

その為には商品を適正な価格で販売する必要があります。

今回のTSUGUソファ、決して安くはありません。
「ハギレでつくってるんだから安くつくれるんじゃないの?」と思われるかもしれません。
でも、ハギレ1枚1枚の組み合わせを吟味し、それを一つひとつ管理し生産するには当然相当な手間が掛かります。

ものづくりはこの手間を価値に変えてお客様にお届けする必要があります。
今回は平田さんのお陰でその価値を生み出すことが出来ました。
つまりこのソファを通じて自分たちの課題も解決できたことになります。

課題解決を地方から。

プロジェクトメンバー(静岡の当社にて)

社会の課題、お客様の課題、そして自分たちの課題。
これを同時に解決することは容易ではありません。

そしてもうひとつ、「地域の課題」なんかもあったりします。

今回のこの「課題を解決するものづくり」を長野のわざわざさんとマイグラントさん、そして静岡のMANUALgraphで実現できたことは僕らにとっても本当に感慨深く意味のあることなんです。

日本の各地域には、まだまだ様々な課題を解決しそして価値を生み出す可能性を秘めたものづくりの現場が沢山あります。

今回はわざわざさんたちの力を借りて実現することが出来ましたが、僕らMANUALgraphもこれからももっともっと自力で様々な課題を解決し価値を生み出すものづくりに挑戦して行きたいと思います。

この「TSUGU」ソファ、まずは最初のロットを長野のわざわざさんで即売展示会で販売します。
1月にはMANUALgraphでも次のロットを販売予定です。

長野か静岡、どちらでも是非お立ち寄りください。

最後にチラッとだけ初回ロットの様子を。
全容は是非即売会会場でご覧いただきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。




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