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#2 ユダヤ教とはなにか?

前回ユダヤ教について述べるにあたり、この世界と人が生まれてそして各地に様々な言語を持つに至ったところまで述べた。どちらかというと、神話に近いような内容である。

今回の記事では、実際に預言者が現れてユダヤ教が興ったところから始めていく。宗教って、なかなかセンシティブな話なのだが、中身を知っていくと驚くほど世界の様々な事象の原因が見えてくるから面白い。

4.ユダヤ教の起こり

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しばらくして、ユダヤ民族が現れる。彼らはもともと羊の群れを追う遊牧民だったが、のちに定着農耕民となる。その際に、民族を収めていたアブラハムという族長が、神様からの啓示を受ける。

「神の地 カナン(現在のパレスチナ)に移住しなさい」

カナンに移住すればその地をアブラハムに与え、子孫に受け継がれるという話だったためにユダヤ民族はカナンへ移動する。その際に神様はアブラハムの信仰を確かめるために、自らの息子イサクを生贄に捧げさせようとする。これが「イサクの犠牲」と言われるもの。

ちなみにイサクの異母兄弟にイシュマエルという人がいて、彼はアラブ人の先祖だという風に言われている。

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しばらくの間アブラハムとその子孫はカナンに定住するも、飢饉が起こりやむなくエジプトに移動せざるをえなくなる。その際、子孫の一人であるヨセフは夢判断(占いみたいなもの)ができたためにエジプトの王様に重宝されて大臣の地位までのし上がる。

5.出エジプト記

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ところがその後、ユダヤ民族はエジプトにて奴隷の扱いを受けることになる。そこからさらに時は流れ、紀元前1300年ごろにユダヤ民族を窮地から救う預言者・モーセが誕生する。

モーセは重なる偶然の結果王の娘に育てられる。しかし同胞のユダヤ人が虐げられる現場を目撃し、虐待していたエジプト人を殺害してしまう。彼は一度は逃走するも、神様より「ユダヤ民族を救いなさい」という啓示を受け、エジプトへ戻りユダヤ民族を逃がそうとする。

逃すまいと追いかけてくるエジプトの軍隊たち。向かう先は海と、絶体絶命の最中モーセが手をあげる。するとそこで奇跡が。

なんと、海が真っ二つに別れて突如として道ができるのである。

6.十戒の存在

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割れた海を歩いて無事、カナン(パレスチナ)にたどり着く。その旅の途中のシナイ山という場所でモーセは神様から石板に言葉を刻んだ十戒(10個の約束事)を受け取る。カナンに到着する寸前でモーセは息を引き取り、代わりにユダヤ民族を率いることになったのはその息子のヨシュアである。

十戒とは?
1. 他の神を信じてはいけない
2. 偶像崇拝は禁止
3. 神の名前を唱えてはいけない
4. 安息日には休みなさい
5. 父母を敬いなさい
6. 殺人を犯してはならない
7. 姦淫してはならない
8. 盗んではならない
9. 隣人に偽りの証言をしてはならない
10.隣人の家を欲してはならない

今では当たり前の常識となっているこれらのルールは、当時からしたら規範をもたらす意味でいうとかなり画期的だったのではないだろうか。

7.古代イスラエルの隆盛

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次に彼らを待ち受けていたのは、カナンの地にもともと住んでいた先住民・ペリシテ人たちのとの戦いである。長期戦となり、ユダヤ民族が渇望していたのが民を率いる王の存在。そこで預言者サムエルが現れて、王を選抜する。

最初に選ばれた初代の王・サウルは大した実績を出せず失脚。代わりに王として選ばれたのがダビデ王。次いで彼の息子であるソロモン王の2代にわたる時代は、当時のユダヤ人にとっては黄金時代とされる。

8.バビロン捕囚

ところが、その隆盛も長くは続かずソロモン王の死後、北のイスラエル王国と南のユダ王国に分かれる。その後北のイスラエル王国は紀元前722年にアッシリア帝国によって滅ぼされ、アッシリアは非常に宗教に対して厳しい立場をとり、信仰の自由を認めなかった。

一方の南のユダ王国においても同じくユダヤ教存亡の危機が迫る。紀元前622年にヨシヤ王という人がエルサレムの神殿を回収していたところ律法の書が発見されたことにより、なんとか再びユダヤ教の火が灯ることになる。

その後、ユダ王国は新バビロニアによって滅ぼされ、人々はバビロニアに連行される。バビロニアでの生活は50年続くが、ペルシャ王キュロス二世という人が新バビロニアを滅ぼしたため、ユダヤ民族は解放されエルサレムに戻ることを許されて神殿を再建することになる。

それからしばらくして、ローマ帝国が周辺一帯を支配するようになる。当時ローマは割と属州国における文化を尊重する傾向にあったが、多神教文化が多かった中で唯一の一神教であるユダヤ民族は特殊な存在で、ローマからしたら支配の力を及ぼしにくい集団となっていた。

その結果ローマ帝国に反感を持ったユダヤ人を中心として、66年にユダヤ戦争が勃発、反ローマを掲げる人々は善戦をするものの、最終的にローマ帝国の力に屈服しエルサレム が陥落した。その後ユダヤ民族は、故国を追われ流浪の民として世界に散らばることとなる。

ちなみにイエス・キリストも元々はユダヤ教徒であった。彼が生まれた時代はユダヤ教の中でも3つの派閥が存在していた。キリストはエッセネ派だったと言われている。(諸説あり)

①サドカイ派 … 現状維持の保守的な集団(富裕層が多い)
エルサレムの神殿で祭儀を行う世襲的な祭司階級。エルサレムが陥落すると同時に滅びる。
②パリサイ派 … 律法を重視(貧困層が多い)
祭司と同じ厳格さを互いに要求する平信徒の集団。ユダヤ戦争後、ユダヤ教における主流派となる。
③エッセネ派
「義の教師」に導かれ、”新しい契約"を結んだ人々。財産を共有し終末を信じ、洞窟で祈りの生活を送る。

彼らの信仰にとって重要であったエルサレム神殿。今でもエルサレム周辺で争いが行われるのは、彼らにとってその場所が非常に重要だからである。一方でエルサレムという重要な信仰の拠点を失った彼らは、神に対する敬意を日常生活の中で示すことにした。

そのため、ユダヤ教の人々はその戒律に従って日々規則正しく行動をしている。そしてこれまで歴史の中で迫害されて規模も少数となりがちとなった背景があるため、彼ら集団内の結束がかたく自らの力で道を切り開こうとするものが多い。今日では、そうした背景もあってユダヤ教の中で成功した人は少なくない、ということらしい。

時間があれば、キリスト教・イスラム教についてもまとめていきたいと思います。(宗教の数々のエピソードは面白いけど、まとめるのに結構骨が折れる…)

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