たいしたことではないけれど9「瑕疵が有るか無いのか分からない古書を買う気にはならない」

先日、某新古書店のネット通販部門で本を購入したところ、読むのには問題がないレベルだが、書き込みがあった。私が知る限り、某新古書店は基本的に書き込みがある本を売っていなかったし、あった場合でも発送前の段階で気付いた時は事前に連絡が来ていた。しかし、今回は気付けないレベルの書き込みでもないのに事前に連絡がなかったので驚いて、問い合わせをしたところ、今は「若干の瑕疵のある商品」もあるらしい。HPを見てみると、瑕疵があっても売っている場合があることも書かれていた。


「日本の古本屋」「Amazonの中古」「ヤフオク」でも瑕疵あり商品が出品されている。あるべきはずの函がない場合、カバーがない裸本、目次や本文に鉛筆以外の書き込み(消しゴムでは消せない)がある古書は、基本的に買わない。ただし、希少性が高かったり、「瑕疵なし」だと異常に高価だったりする場合は、妥協する。蔵書印、B印、著者のサインなどは、それよりも抵抗がすくない(著者のサインを嫌がる理由が分からない)。だから、「瑕疵なし」が絶対だと思っていない。Amazonではカバーに多少の傷があるアウトレットも購入している。要は、瑕疵の内容も含めて総合的に判断してのことだ。瑕疵があっても買う場合はいくらでもあるのだ。


だから、この某新古書店が瑕疵あり商品を売っていることについては驚いたものの、状況を考えれば仕方ないな、という感じだった。以前にも、ほかの記事で書いたけど、古書の供給が減っているように感じている。個人で簡単に本が売れる場所が増えた(ヤフオクもAmazonもそう)。また、新刊書が売れる数が減ってきている。1990年代半ばには年間で9億冊以上売れていたのに、今は6億冊ぐらい。ピークの3分の2だ。売れた本が減少している以上、従来の古書市場に流れてくる本も減っている。古書にならない電子書籍の普及も、古書の減少の後押しをしている。電子コミックの売り上げは2020年が3420億円もあるが、これが古書市場に一切流れない。要するに、玉が減ってきているのだ。しかも、多少の瑕疵があっても読める本を捨ててしまうのはもったいない、という考え方もある。


ただ、問題なのは、瑕疵がある商品を購入するかどうか検討するときに、その情報を提供されずに判断しなければいけない、ということだ。この価格でこの瑕疵なら、新刊を買った方がいいと考える時もあれば、逆の場合もある。しかし、それは瑕疵が「ある」こと、そしてどのよう瑕疵かを分かっていて判断している。瑕疵が「ある」のか「ない」のか分からないで判断するのは難しい。「日本の古本屋」「Amazonの中古」「ヤフオク」でも瑕疵の見逃しはあるし、詳しくない場合もある。しかし、見落とすことなど考えられないレベルの「書き込み」だと注記がある場合がほとんどだ。だからそのことに全く触れない、というのは理解できない。それと、「Amazonの中古」「ヤフオク」に某新古書店が出品している商品もあるが、こうなると、その商品にも「瑕疵」があるかもしれない、と考えるしかない。某新古書店の場合、商品の取り扱い量がけた外れに多いので「瑕疵」に関する情報をすべて明記することは難しいかもしれない。しかし、中には数千円の商品もある。それを購入して、扉にラインマーカーで書き込みがあった場合は、どうだろうか。読むには影響ない、と言われて納得できるだろうか。定価より安くても、新刊を買えば良かったと後悔する人が多いと思う。


私は、今回の件を受け、某新古書店の入荷情報に登録していた本を、大幅に削除した。極めて希少性が高いもの、もしくは多少瑕疵があったとしても、かなり安く買える場合だけ登録に残した。もちろん、瑕疵が「ある」という情報が提供されるようになれば別だが、分からない状態で一定の価格以上の本を買う気にはならない。


だからもう一度書いておくけど、問題なのは瑕疵が「ある」ことではなく、「ある」こと、もしくは「ない」ことを購入前に知るすべがないことなのだ。

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