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【読書感想文】愛するということ ーエーリッヒ・フロム

【概要】

1900年にドイツで生まれた精神分析屋さんのおっちゃんが書いた本だ。

本書は、愛するとはなにかという問いからはじまり、愛の理論を展開し、愛する技術を身につける方法について書かれている。

途中、宗教の観点で難解な箇所もあるが、全体としてはよみやすい本。恋愛の愛にかぎらず、人を愛するということにグッと深める時間になる。

【解釈】

━━━━━━━愛するとは技術か━━━━━━━

フロムさんは「愛は技術である」という前提を言い切っている。

まず第一に、たいていの人は愛の問題を、愛するという問題、愛する能力の問題としてではなく、愛されるという問題として捉えている。

と言う。なるほど。確かにぼくらはつねひごろ、どうやったら愛されるか、を考えている。幼少期は母親から気にかけてもらうためにアピールをするし、今ではすきな人に振り向いてもらうために試行錯誤する。

だが、フロムおっちゃんからすると、それの何に意見があるのか。

おっちゃんはこう言う。

人びとは、どうすれば愛される人間になれるかをもとめて、男性は社会的地位を築き、女性は外見を磨いてじぶんを魅力的にする。

これが、ある権威や、多数の人びとがそう言っているというだけの理由で、なにかを心理として受け入れている。つまり、自分を信じていないじゃないか!ということらしい。

愛する技術を体得するためには、信じることの習練が必要だ、という主張だ。

また、おっちゃんは愛することをこう表現している

愛は、人間の中にある能動的な力である。人をほかの人びとから隔てている壁をぶち破る力であり、人と人とを結びつける力である。愛によって、人は孤独感・孤立感を克服するが、依然として自分自身のままであり、自分の全体性を失わない。愛においては、二人が一人になり、しかも二人であり続けるというパラドックスが起きる。

おお。パワーのある言葉じゃないか。

━━━━━━━愛するとは━━━━━━━

上記のように、愛とは、能動的な力だ。と言っているわけだが、つまり、愛するとは、能動的な力を発揮する、ということだ。

能動的な力を発揮すること。それを、与えることだと言い換える。


おじちゃまは、与えることをこう誤解されていると論じる。

与えるとは、何かを「あきらめる」こと、剥ぎ取られること、犠牲にすること、と誤解されている。

ぼくなりの解釈では、自己犠牲という言葉を見て、少なからず清さや正義の感覚を覚えること。これが、ぼくが与えることを誤解していることに繋がるかもしれない。

ここでも、おじいさんは力強い表現をする。

与えるという行為が自分の生命力の表現である。

まじで、師匠。仙人。聖人の言葉のように、まぶしい。

と感じると同時に、生きることは与えることなのかもしれない、という逆説的な考えも浮かぶ。

もし、そうなら、世界はすごく豊かだ。


与えることについて、もうひとつ紹介したい師匠の意見はこれ。

貧困は人を卑屈にするが、それは貧困生活がつらいからだけでなく、与える喜びが奪われるからである。

そうであれば、苦しみにうちひしがれている人を救うだけでは活路はみいだせない。その人に与える機会を得てもらうことが、生きることなのだろう。

そしてぼくは、与えることの連鎖をおこす関わりこそ、能動的な力を発動する、つまり愛するということなのだと解釈した。

━━━━━━━愛の習練━━━━━━━

エーリッヒ・フロムは本書の後半で、怒涛の訴えを表明しているように感じた。

たいていの人は「あなたはこうしたら良いですよ」という処方箋をほしがる。だが、自分の中にある体験、感覚、信念に意識をとぎすまさなければ、愛するの本質にはたどり着けない。

愛の習練に関する議論になにができるかといったら、愛の技術の前提条件とアプローチについて論じることだけである。目標への階段は自分の足で登っていかねばならない。決定的な一步を踏み出すところで、議論は終わる。処方箋を期待することをやめた人にとってはそれでじゅうぶんな助けになる。

答えを知りたければこの本は閉じよ。自分の足で進む意志をもつのであればその第一歩の手助けをしよう。というわけだ。

なんか、厳しくも優しい、愛に溢れた言葉じゃないか。尊敬。


そして、その第一歩として、愛の技術の体得のために「信じる」ことの習練について論じている。



ここまで読んでくれた方には、ぜひ本書を読んでほしい。最後の40ページで、フロムの信念が伝わるはずだ。

【学び(Tips)】

・愛は能動。
社会の主義に沿って愛されることを求めるのではなく、己の生命力を発揮せよ。それが愛することにつながる

・自分を信じている者だけが、他人にたいして誠実になれる。
→ありのままの自分を捉え。その根底は変わらないのだと確信を得ることで、他人もそのままであって良いのだと心から思える。これが、個人の全体性であり、他者との一体感だ。


【おわりに】

たった今、愛は能動的な力だ、と諭されたばかりだ。ここで理解にとどめず、ぼくの生命力を表現する活動をしていきたい。

まずは、語ろうじゃないか。愛するということについて。

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