
【読書感想文】問いのデザイン
【概要】
本書は「ファシリテーション」「ワークショップ」「創造的対話」「場作り」といったワードに関心がある人にとっては、ぐんぐん引き込まれる内容です。
ぼくの読後の感想ですが「今までぼくらがやってきた話し合いってどうやって進めていたんだっけ?」と忘れそうになるほど、良い問い、良い対話にはファシリテーターの入念な設計とスタンスが影響していることを感じさせられる1冊でした。
本書は大きく
問いってなんだっけ?
↓
問題と課題ってなにがちがうの?
↓
課題の決めかた
↓
ワークショップのデザイン方法
↓
ファシリテーションの技法
↓
こんな実例があるよ!
といった流れで進みます。
==問題と課題==
問題と課題、使い分けられているでしょうか。
ぼくはいままで使い分けずに生きてきましたが、本書でついにはっきりさせてもらいました。
問題:到達したい目標はあるが、道筋がわからず、試してみてもうまくいかない状況のこと
課題:関係者の間で「解決すべきだ」と合意された問題のこと
山(問題)はたくさんあるけれど、そのチームでどの山を超えるかを決めることが、課題を設定する、ということです。
==ワークショップの基本構造==
1.導入:趣旨の説明やアイスブレイク
2.知る活動:問いに対する情報を入れて、自分の体験を振り返る。
3.創る活動:問いに対してあたらしい意味づけを創発する
4.まとめ:つくられたものを発表する、次へのアクションを決める
基本的なワークショップの構造は↑のようになっています。
ワークショップと言えば、創る活動がメインコンテンツになるので、ここでの問いはすごく重要なのですが、問いの立てかたで重要な観点は、課題解決のために、どんな体験をしてもらうのか。その体験をしてもらうための問いを設定することです。制約をかけたり、体験を細分化することで問いを洗練させていきます。(詳しくは本書で)
==ファシリテーション==
ファシリテーションの難しさは、初心者と熟練者では異なるといいます。
初心者は、創る活動に難しさを感じ、
熟練者は、導入部分が難しいと感じます。
熟練者にとっては、ワークショップ等、プログラムをつくる段階では参加者の顔が見えないので、どんな動機で参加してくるかわからず、導入の設計が難しい、ということでした。
創る活動でうまくいかないのは、ファシリテーションそのものの技量以前に、プログラムの設計がうまくいっていないのだ、ということなので、熟練者にとっては創る活動はとくに、予め設計されていたものとどれだけズレがあるのかを測量して、調整するファシリテーションを考えています。
【学び】
本書を通して、ぼくがとくに重要だと解釈したことが3つあります。
①設計図に魂を込められているかがプロとアマの違い
②問いの切り口を持つ
③創造的対話とは、今までの意味を問い直し、再定義すること
①設計図に魂を込められているかがプロとアマの違い
プログラムで参加者のどんな課題を設定するのか。その課題に対してどんな体験をしてもらうといいのか。は事前に組み立てられる部分です。ファシリテーションの表層だけでなく、設計図を描き、プログラム当日はその設計図と照らしながら問いを調整することがファシリテーションの重要な観点であることを忘れずにもっておきたいです。
②問いの切り口を持つ
問いは、一言加えるだけで、違う思考を刺激されます。
・今日の幸せは?
・今日の刺激的な幸せは?
人によって幸せは定義がちがったり、想像が広がっていったりするものですが、「刺激的」と一言加えるだけで、いつもは浮かばなかった幸せが創発される可能性があります。
問いは、人の感情と思考を刺激する力があるので、どの確度でどの強さでどんなナイフで切り取るのか、たくさん試してみようと思います。
③創造的対話とは、今までの意味を問い直し、再定義すること
ここが、一番の学びだったのですが、ものすごく端的にまとめると、対話=意味づけだということ。意見を戦わせる必要はなく、正解を探すわけでもなく、個人の世界で定義され、分断されていた世界の意味づけを「一緒に考えなおしてみよう」というスタンスが対話を創造的にするのだ、という信念を抱いて、今後の場に臨みます。
【まとめ】
正直、問いのデザインという本はここには書ききれないくらい、重要な要素がたくさんあったので、この文章もうまくまとまってない気がします。
ただ、ひとつ言えるのは、本を読んで「分かった!」と思っているうちは身になっていないはずなので、たくさん実験して、場慣れして、使える力にしないことには、ただの紙束になってしまうってことです。
とてもおすすめな本ですが、イベントのファシリテーションや、場作りを実践したい人に届いたらいいなと思います。
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