
【読書感想文】コーチングが人を活かす 鈴木義幸
はじめに
本書は、日本を代表するコーチングの会社「コーチ・エィ」の代表、鈴木義幸さん著で、2020年6月30日初版の新しいコーチング入門書です。
コーチという仕事、コーチングという概念を最近耳にする機会がふえました。コーチングが流行るにともなってうまれている誤解をとき、本質をとらえなおす必要があるね。といったことがはじめに書かれています。
コーチングをする上でのマインドセットとしてはもちろん、入門者にとって具体的な問いの出し方や、クライアントとの関わり方のハウツー本としても活躍するでしょう。
サマリー
コーチングは”相手の言葉を引き出す”ものではない。
問いを二人の間に置き、一緒に探求しながら発見を促す。
引き出す側と引き出される側という立場ではなく、一緒に考えていこうね、というスタンスが前提なのだということ。
その前提にたって、本書は7つのテーマにそって進みます。
①相手と自分の発見を促す
新しい発見には、今までとはちがったものの見方が必要です。その方法の1つが具体と抽象を行き来する(チャンクダウン/チャンクアップ)。もう1つは視点を変える。
ー具体と抽象を行き来する
チャンクダウン:かたまりをほぐす。
例えば、勉強が分からない。といったときに「どの科目がわからないのか」「わかることはあるのか」「どの問題がわからないのか」などものごとを具体化することで、取り上げていく話題の焦点をしぼっていきます。クライアント自身も、なにが分かっていないのかを捉え始めます。
チャンクアップ:かたまりにする。
要素をあつめて、抽象的な概念を抽出すること。これをチャンクダウンといっしょに使うと
クライアント「勉強がわからない...」
コーチ「分からない科目はある?」←チャンクダウン
クライアント「特には英語かな」
コーチ「わからない問題はどれだろう?あと、わかることはある?」←チャンクダウン
クライアント「英語の△△の問題がわからない。でも〇〇はわかるんだけど」
コーチ「OK。この英語の問題がわかるようになったその先には何を望んでいるの?」←チャンクアップ
クライアント「志望校に合格する!」
ざっくりこんな感じですね。
これで、最終目的地が明らかになり、次の行動が見えてきます。
勉強がわからない、という状態に焦点があっていたところから、最終目的地といまなにをしたら良いのかが見つかりました。
ー視点を変える
例えば、いつもイライラしている上司に「イライラしてばっかりでこっちにも影響があって困る」という視点から「あの上司がニコニコしてるときっていつだろう」「家ではどんな感じなんだろう」という視点で問いをおくこと。
あとは、究極の質問をおいてみること。究極の質問とはかんたんにいうと、背水の陣をひいたときに自分はどんな行動をとるのか、という問い。
問いによって今の視点を引き剥がし、異なる視点でものをみたときに新しい発見が生まれるものです。
②相手と信頼関係を築く
ここではコーチングの基礎知識と、コミュニケーションのとりかたで、相手と信頼を築くことについて書かれています。
コーチングの基礎として、あいづちとオウム返し。それからCAPSというタイプ分けについて書かれています。
コミュニケーションのとりかたについては「承認はI(アイ)メッセージで」「相手の望みを聴く」ことについて書かれています。
相手の望みを聴く、というのはぼくも忘れてがちになるポイントです。
コーチングの経験を積むほど「この場面はこうしたほうがいいだろう!」という考えが定着してくるのですが、クライアントがいま、何を求めているのかは慎重に聴く必要があります。「今日はどうやって進めていきましょうか」と思い切ってきくものありだということです。
といった感じで、7章まで話が進んでいきます。
全部かいてると長くなるので、本書で衝撃を受けたポイントを記しておきます。
・行動のプロセスではなく、そのさきの結果をイメージする
・"not want"を話したあとは"want"がでてくる
・妥協、未完了、境界線の切り口で盲点を発見する
・クライアントにコーチになってもらう
・落としどころを用意しない
まとめ
コーチングという概念の広さと深さを感じました。スキルを磨くことは大事であると同時に、コーチがどんなスタンスで臨んでいるのか、それをクライアントはマッチしていると感じているのか。その視点をもちなおす機会になりました。
僕がコーチングを仕事にしているからでしょうか、今回の読書感想文はすごいポジショントークになった気がします。笑
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