見出し画像

第11号 光遺伝学を初めて人間に医学応用したという驚きの成果、意識を機械にアップロードした世界では、食欲や睡眠欲や性欲といった人間の欲求は満たされるのでしょうか?

// 2021年6月19日 第11号
// 1. 今週の注目ニュース:光遺伝学を初めて人間に医学応用したという驚きの成果
// 2. 質問コーナー:意識を機械にアップロードした世界では、食欲や睡眠欲や性欲といった人間の欲求は満たされるのでしょうか?

こんにちは、東京大学の池谷裕二研究室で脳・老化・人工知能の研究をしている紺野大地です。

アルツハイマー病の新薬アデュカヌマブがアメリカで承認されましたね。
かなり大々的にニュースになっており、私も友人(非医療系)から
「これでもうアルツハイマー病は治る病気になったんだね!」
などと言われました。

ですが残念ながら、個人的にはかなり懐疑的な印象を抱いていいます。
この新薬は「従来の薬の2割増しの効果」と言われていますが、従来の薬(アリセプトやメマリー)が進行をごくわずかに抑える程度でしかなく、その2割増しと言っても臨床的にどれほど意味があるのか、と思わずにはいられません。
そのくせ、薬価は格段に上昇し、1人あたり1年間で数百万円かかるとも噂されています。

もちろん、この薬1つを創るために膨大なお金がかかっているので、なんとかその費用を回収したいという製薬会社側の気持ちは痛いほど分かるのですが、それでも効果と医療費とのバランスを考えると心から応援はできないなというのが正直な気持ちです。

とはいえ、アルツハイマー病が世界的に喫緊の課題であることは疑いようがありません。

実は私が脳に興味を持ったのも、もともとは「アルツハイマー病をこの世からなくしたい」という思いがきっかけでした。

一日でも早く、真の特効薬が開発されることを願うばかりです。


少し暗い話になってしまいましたが、今回も始めていきましょう!

1. 今週の注目ニュース:光遺伝学を初めて人間に医学応用したという驚きの成果

今回取り上げるのは、
「光遺伝学を初めて人間に医学応用した」という驚きの論文です。

いったいどんな内容なのでしょうか?
また、将来的に光遺伝学を人間の(網膜ではなく)脳に適用する日は来るのでしょうか?

ここから先は

3,322字 / 1画像

¥ 250

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?