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Coaching Note

「若いスポーツコーチの教育:経験的にサポートされたトレーニングプログラム」
Educating youth sports coaches : An empirically supported training program.
Frank L. Smoll and Ronald E. Smith

ユーススポーツとは「6~18歳までの若者向けであり,大人が組織し管理するプログラムである.大人の指導者や監督の下で参加者は練習し,定期的に試合に参加します(Smoll and Smith,2002).」これらのプログラムは,世界中の社会の一部として確立しており,青年や成人になるまでの過程に影響を与えると言われている(De Knop,Engstrom,Skirastad,and Weiss,1996).また物理的には,スポーツのスキルや健康、フィットネスの向上をさせることが出来ます.心理的には,リーダーシップスキル,自己規律,競争力,協調性,スポーツマンシップ,自身を養うことが出来ます.
しかし,悪い点もあります.例えば,若いアスリートに過度の心理的な負荷・ストレスを与えてしまう事で自発的な行動の機会を奪う事や,また卑怯なプレーを推奨する事で反社会的な態度や行動を促してしまう可能性があります.若いアスリートを通じ,親やコーチが栄光を成し遂げ,利己的利益を満たそうとするケースもあります.
本当の問題は,プログラムがどのように効果的に構造化され,好ましい結果が確実に得られるように運営されるかです.そこで重要になる要素が,コーチとアスリートの関係性だと一般的に考えられています.効果的なプログラムを開発・実施する事でコーチ行動やアスリート個人的及び社会的な幸福にプラスの影響を与えます.
この章では,経験的にサポートされたコーチトレーニングプログラムによるコーチの行動と介入に関する研究の進化について説明します.経験的にサポートされているとは,プログラムが確固たる(確実な)経験的証拠に基づいていることを意味し,研究から有効性が実証されていることです.

1.理論モデルと研究概念(Theoretical Model and Research Paradigm)
1970年代のコーチング行動プログラムでは以下の基本的な要素に表されていました.

コーチ行動→アスリートの認識や想起→アスリートの評価

このモデルは社会的認知理論による「認知革命」によって考えられました(Bandura,1969;Mischel,1973).コーチの行動の最終的な結果は,アスリートを仲介し,与える意味によって変化します.アスリートがコーチの行動をどのように認識するかは,アスリート自身のコーチへの感じ方やスポーツ体験を通じ,評価し,アスリートに影響を与えると言われています.
さらに感情プロセスと認知プロセスの相互的作用も関与してきます.アスリートの認識や反応は,コーチ行動以外にも,様々な要因が関係しており,アスリートの年齢や性別,アスリートがコーチに期待するモノ,不安や自信など特定のアスリートの性格変数が含まれます.最終的に基本的な3要素モデルは,これらの要因を反映するように拡張されました(Smoll and Smith,1989).