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ベナンにカレー屋さんができるまで④~レバノン商人との家賃交渉の話~

今回も、前回に引き続きベナンでカレー屋をオープンさせたときの学びを、実例を交えてご紹介します。

ボランティアやビジネスに関わらず、今後アフリカで活動しようと思っている方にとって、アフリカでの仕事の進め方や現場感覚を掴んでもらうために参考となるような記事になっています。

大家さんはレバノン商人


今回のタイトルにあるように、カレー屋さん物件の大家さんはレバノン人です。

世界的にもレバノン人は商人として有名で、西アフリカを中心に、かなり前から商売しています。

ベナンでも、ベナン人富裕層&外国人をターゲットにしたレストランの多くはレバノン人がオーナーでした。

レバノン商人である大家さんとの交渉が、本当に本当に大変だったんです😂

彼は、やはり商売がうまいですし、基本的にめちゃくちゃ強いです😂😂

彼自身も30年ぐらいベナンで商売をしているらしいので、私との経験の差は歴然ですよね。

最初の賃貸契約の話し合いは、彼がとても忙しいということで彼の車の中でした。

その話し合いの最中、本当かどうか未だにわからないんですが、電話が何度もかかってきて、「その物件はもう先客がいる」と電話相手に言ってるんですね。

私の目を見ながら😣

そして電話を切った後、「このようにお前の他にも借りたい人がたくさんいる。なので、この日までに、こちらが提示する価格で契約しろ!」と。

こんなかんじで、めちゃくちゃ交渉上手で。

そして、とにかく強いんです。。

返報性のルール


ただ、この百戦錬磨のレバノン商人にも日本男児の意地を見せてやったぞ!という事例を紹介します。

まず私が使った戦法は「返報性のルール」です。

この返報性のルールは、ビジネス界で大変有名な『影響力の武器』に書いてあります。

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是非詳細はこの本を読んでみて欲しいのですが、簡単に言うと、ギブアンドテイクですね。

『人は相手に何かをされたら、必ずお返ししなければならないと思ってしまう』

さらに、本の中では、返報性のルールが適用されるいろんな場面が紹介されています。

その中で、譲歩の場面についてこの本に載っていた一例を紹介しますね。
譲歩というのは、相手が要求を譲歩した場合に、こちらは返報性の義務を感じざるを得なくなり、譲歩してきた要求を受けてしまう、というものです。

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Aさんは、道端で、ボーイスカウトの少年と出会い、「週末のサーカスのチケットを5ドルで買ってくれないか?」と頼まれました。

サーカスに全く興味がなかったAさんは断りましたが、少年はすぐに、「それであればこのチョコレートを1ドルで買ってほしい」と譲歩した要求をしてきました。

結局、Aさんはチョコレートを2ドル分買ってしまっていたというものです。

Aさんはチョコレートが全く好きじゃないのに。。。

では、話をベナンに戻します。

私とレバノン商人の大家さんは、諸々の手続きを終え、賃貸契約を締結するための最終段階でした。

しかし、その直前に大家さんがとんでもないことを要求してきたのです。

それが、2重契約です。

詳しく説明すると、

「家賃の金額部分だけを変えた契約書2枚(本当の家賃と安い家賃が記載されているもの)にサインしろ。そして、市役所から契約書の提示を請求されたときには、安い方の契約書を見せろ。それが受け入れられないのであればお前にあの物件は貸さない」というものでした。

おそらく、それによって、彼が払う固定資産税が安くなるんでしょうね。

こちらとしては、この脱税とも言えるような行為に加担するようなことは当然できません。

しかし、ここで断ったら契約させてもらえないかもしれないので、どうするかかなり頭を悩ませていました。

その時、先ほど紹介した返報性のルールを使おう!と思いついたんですね。

そこで私は影響力の武器を読み返して、作戦を入念に考えました。

いざ決戦


そして、決戦当日。

この日、私たちは契約締結のためのサインと家賃を支払うという約束をしていました。

話し合いが始まると、私はすでに決定していた家賃の値下げ交渉を再度しました。

しかも相当しつこく。

できるだけ初期投資を抑えたいとか、改装工事費用もかかるので家賃をできるだけ下げて欲しいとか、いろいろな理由をつけて、1時間はしていたと思います。

しかも、相手が受け入れないような金額で。


当然、彼はその値下げを拒否し続けました。

ここら辺が潮時かなーと思い、ここで私はあっさり引き下がったのです。

そして、その直後に、2重契約はしないと要求しました。


ここは、本当に魂をこめて。

「私たちはベナン発展に貢献するために来たんだ。犯罪を手伝うためじゃない。私はあなたと今後も付き合っていきたいし、大切な友人として今後も仲良くしていきたい」

「だから、家賃は受け入れるから、2重契約は回避してほしい」と。


実際は、日本側からは、既に決まっていた家賃でGoするという許可は
もらっていたので、値下げ交渉をする必要はありませんでした。

つまり、家賃の値下げ拒否を受け入れることを、こちらの譲歩をアピールするためのカードとして使ったのです。


その結果は、、、

この返報性のルールがうまくいったのか、アツい想いが通じたのかわかりませんが、なんと2重契約回避の要求はすんなり受け入れらたのです。

当初は2重契約をしないと他の人に貸すと言われて、絶望的かと思われていた状況の中でしたが、何とか回避できました。

かなり探してやっと条件に見合う物件だったので、もし2重契約を断れば、また一から物件探しをしなければいけない、と胃がキリキリしていたのですが、プレッシャーから解放され緊張の糸が切れたのを今でも鮮明に覚えています。

レバノン商人との家賃交渉の話は以上です。

「影響力の武器」には、他にもいろいろとビジネスの場面で役に立つハックがたくさん紹介されているので、興味がある方は是非読んでみてくださいね。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

次回は、『カレー屋さんができるまで⑤~現場の意見だけを鵜呑みにするな!~』というテーマで書きたいと思います。

それでは。

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