広々とした空間はリフォームでは難しい
劇的なリフォームを実現するテレビ番組、
古い住宅をトコトン解体して自由に造り替えるSNSや動画、
などを見ていると、
建築物って後からでも何でも出来るような印象を持つかもしれません。
エンタメと現実は異なりますのでどうかご注意ください。
■柱や壁を抜くのは簡単に考えてはダメ
1 安易に柱を取って良いと言う人は信用してはいけない
建築の技術者は建築物の構造が弱い方向へ移行することを嫌がると思います。
自分が携わった良く知る建築物であれば、まだ良いですが、他の技術者が建てた建築物であれば慎重になるのが普通ではないかと私は思います。
床や壁、天井などを剥がしたり、図面を精査したり、することをせずには安易に判断できないと私は考えています。
むしろ、常に±0になるように考えていますので、
どこかの柱を取ったら、どこかに追加することを考えます。
そうなると、わざわざ無理をして柱を取ることが必要かどうかを考えながら改修計画を設計していくことになります。
お客さんが部屋を広くしたいとの要望を叶えるためとは言え、安全性を全く考慮せず、柱や壁を取り払ってしまうのは建築のプロの仕事ではないと私は考えます。
2 昔の住宅はむしろ足したいくらい
現代の住宅は計算に基づいて壁には合板や筋交いがビッシリ施工されていますので、取ってしまうことが難しいですが、
そうした計算に基づいた設計がなされていない昔の住宅はそもそも現代の耐震基準に達していませんので、
取ってしまうのではなく、足して増やしたいくらいです。
弊社でも、つい先日、
築30年超の木造戸建て住宅のリフォーム現場では、
柱を新たに取り付けたり、
シロアリ被害でボロボロになった柱を入れ替えたり、
壁を耐震補強したり、
して少しでも住宅の耐震性を高めるリフォームを行いました。
構造躯体を減らすことなど微塵も考えようがありませんでした。
昭和56年以前の旧耐震基準で建てられた住宅では、加える事はあっても、減らすことは避けたいですね。
3 抜いても大丈夫だという基準
既存住宅の場合、構造計算を行うにしても、床下や天井裏などの様子が全て見るためには骨組みを残して全て解体しないと正確な情報を入力することが出来ないため、安全側で計算せざるを得ません。
そうするとなおさら躯体を減らす行動はとりづらくなります。
そのため、計画上、どうしても柱を撤去、移設したい場合には天井を解体して上階の梁組みや小屋組みを見て、どのような荷重を受けているかを確認する必要があります。
そして、減らした分をどのように補うかがセットになります。
■新築時に将来のことを考えて設計しよう
1 家は10年、20年先のことも考えておきたい
今は一人一人の部屋がたくさん必要かもしれませんが、将来はどうなるでしょうか?
空き部屋が納戸のような開かずの収納部屋に成り下がり、
窓やカーテンすら開けられずに朽ちていった様子を何度もお見掛けしてきました。
個室なら個室の使い道も考慮しておくと良いと思います。
また、前述した通り、個室の仕切りを取り払うのは簡単ではありませんが、予め、取り払うことを想定していれば可能かもしれません。
家族の変化に合わせて、家も変化していけるような家づくりも良いと私は考えています。
2 ただただ空間が広がっている家は使いづらい
SNSなどでよく見かける横にも上にもつながっているとにかく体積の広い、広すぎる空間は使いこなすのは簡単ではありません。
そもそも、吹き抜けの上の方の窓やブラインド、梁の上の掃除などはどうやってやりますか?
照明器具の交換はどうします?
冷暖房機器はかなり大きな容量が必要ですよ!
いつも家族が一緒に過ごしたいご家族なら広々空間だけで良いですが、
リモートワーク、勉強、趣味、などで一人で集中したい場合などには不向きの空間かもしれません。
誰かの理想の家があなたたちご家族の理想の家とは限りませんので、
憧れに少し現実を加えて考えてみませんか?