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仏教的人生観を城に取り入れる民族

日本人は人生を絶えず移りゆく水の流れのようであると考えていた。

これを鴨長明は「方丈記」において、人の命を、現れては消え、どこから来たともどこへ行くとも知れない川の水に喩えている。

人生とは、二つの無限の束の間の瞬間でしかない。万事は動きであり、それも予見不可能な不確定な動きで、我々にはその動きのほんの短い、目前の部分しか知ることができない。

オギュスタン・ベルクは著書「空間の日本文化」において、江戸城は、この仏教的とも言える日本人の人生観が取り入れられている空間であると言及している。

江戸城の建物自体、部屋の配置も完全な非対称で、通路も無数の折れ曲がりに満ちている。一つの段階から次の段階へと、折れ曲がりと迂回が新たな展望を開いていく。同時に全てが見えてはいけない。段々と見えていかねばならないのだ。

これは先ほどの、人生は目前の部分しか知ることができないという人生観の表れだと彼は述べている。


縁から縁へと川のように人生は流れていく。

この概念は、巷に溢れている"人生を逆算して考える"や"キャリアプランをたてる"などの、"人生をコントロールしようとする概念"とは相容れない。

スティーブ・ジョブズが語った"connecting dots"のように、何かに夢中になったことが後に活かされたり、たまたま知り合った人がビジネスの成功に結びついたりと、偶然のような、仏教で言えば"縁"のようなものが人生を動かしていることを軽視してはいけないと思う。



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