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暗黙知が運転する自転車 70

 皆さんは自転車の乗り方をどのように教わりましたでしょうか。まさか自転車の乗り方理論をテキストや黒板に書いてもらい教わった人はおらず、ほとんどの人が実践的な練習で、最初は父親に自転車を抑えてもらいながら、徐々に平衡感覚を掴んで行き、最後にはひとりでバランスを取れるようになったのでは無いでしょうか。
 そして人は一度乗り方を覚えてしまうと体に染み付いてしまい、時が経っても乗り方を決して忘れる事がありません。
また、その時の経験を基にして、次の新しい何かにもチャレンジする力として使えるようになるのです。
自転車を乗りこなすには数々の難しい技術があるのにもかかわらず、決して忘れないのです。
つまり人の身体には、表面化はされないものの、暗黙のうちに複雑な制御を実行する過程が無意識に作動しており、自転車の制御を可能にしているのです。
これこそが暗黙知tacit knowledgeなのです。
日本企業の強みの一つに、この暗黙知が有ります。
暗黙知とは「知識というものがあるとすると、その背後には必ず暗黙の次元の「知る」という動作がある」ということを示した概念なのです。
この意味からすると「暗黙に知ること」と訳したほうがよいのかもしれません。
 ハンガリー出身の学者マイケル・ポランニーが著作「暗黙知の次元」において、タシット・ノウイング(英: tacit knowing)という科学上の発見(創発)に関わる知という概念を提示しました。
ポランニー氏の用語を利用した理論に、ナレッジマネジメントの分野で使用される、一橋大学名誉教授、野中郁次郎氏の「暗黙知」があるのです。
野中氏は「暗黙知」という言葉の意味を「暗黙の知識」と読みかえた上で「経験や勘に基づく知識のことで、言葉などで表現が難しいもの」と定義し、それを「形式知」と対立させて知識経営論を構築したのです野中氏が定義したSECIモデルとは、個人が持つ暗黙的な知識は、「共同化」(Socialization)、「表出化」(Externalization)、「連結化」(Combination)、「内面化」(Internalization)という4つの変換プロセスを経ることで、集団や組織の共有の知識となることなのです。
「共同化」とは、経験の共有によって、人から人へと暗黙知を移転することなのです。
「表出化」は、暗黙知を言葉に表現して参加メンバーで共有化することなのです。
「連結化」は、言葉に置き換えられた知を組み合わせたり再配置したりして、新しい知を創造することです。そして「内面化」は、表出化された知や連結化した知を、自らのノウハウあるいはスキルとして体得することなのです。
 ナレッジ・マネジメントとは、SECIのプロセスを管理すると同時に、このプロセスが行われる「場」を創造することなのです。
 日本人はこの集団や組織の共有の知識を組織や製品化において活用するのがとても上手な民族であり、それが日本人のとてつもないアドバンテージとなっているのです。
 これらのプロセスを「ヴィジョン」と重ね合わせると、より一層「ヴィジョン」の重要性が府に落ちてくるようになる筈なのです。

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