太陽病項背強几几無汗悪風葛根湯主之

オイオイ。
タイトルに漢字なんて並べていきなりどうした。
家に篭りっきりでとうとう頭がどうかしちまったんじゃないか?
と思われそうですが大丈夫です。

ちょっとためになる話、、、かどうかはわからないですが、
最後まで読んでいただくと、
①へ〜、そうなんだ〜
②ようわからんけど、なんかおもろいやん
③ で?
いずれかの感想をもって頂けるかと思いますので少しお付き合いくださいませ。

では改めて。

タイトルの漢字の羅列はなんなんだ?ということですが、
これは、漢方の一種『葛根湯』について「傷寒論(しょうかんろん)」といわれる
中国の偉いお医者さんが作った本に記載された一文なんです。

風邪をひいたら葛根湯、日本ではCMになるくらいに知名度は高く、
結構な確率でみなさんも知っているんじゃないかと思います。

時代は江戸。

当時では現代の医療とは異なる伝統医学が主流で、
その中でも特に漢方薬主体の漢方医学が町人には支持されていました。

ここから、江戸時代 + 医者 + 葛根湯を題材にして「葛根湯医者」といわれる
落語が作られたくらいでなんです。

葛根湯医者をザックリと説明すると、
ある町医者が、様々な症状を抱えた町人に対して、
ろくに診察もせずに、取り合えず葛根湯を出しとけばいいだろうと診断する、
ヤブ医者を揶揄って作られた噺で、
仕舞いには付き添いの人にも待ち時間が暇だろうからと葛根湯を勧める始末。
要はそれくらいに葛根湯がいろんな場面で役立っていたということではあります。

話が逸れたので戻します。

実は葛根湯が風邪を治すといっても
本来の効果を出すには、
風邪の「ある段階」で用いる必要があるんです。

何やら含ませてみましたが、
そのある段階のことが漢字の羅列に書かれているのでみていきましょう。

**太陽病項背強几几無汗悪風葛根湯主之 **

まずは原文が漢文なので、和訳しますね。

ほいっ。

太陽病、項背強ばること几几、汗無く、悪風するは、葛根湯之を主る

平仮名が入り読点も打たれたので、
随分わかりやすくなったと思うのですがどうでしょうか?

確かに見やすくなったけど、太陽が病気?
は?
どゆこと?
ですよね。
出鼻を挫かれます。

見ていきましょう。

太陽病というのは、発熱性の風邪の初期段階で
主に発熱、頭痛、項(後頭部)の強張り、悪寒、 脈が浮く
などの症状がある段階を指す。

とまあ簡単にいうとこんな感じで、
つまり、「風邪の引き始め」ということになります。

ここから少し専門的な言葉がつらつらと出てきますが
ここからが面白いんです!

昔の中国のえらいお医者さんが、病気になる原因の一つとして、
天候が大きく(ほんとに大きく)関わっていて、
さらに暑さ、寒さ、乾燥や湿気といった外気の質の違いによって、
体に及ぼす影響も違ってくるのじゃ。
と言ったんですね。

この質の異なる外気にはそれぞれ名前があって、
専門用語で言うと6つの気と書いて六気(ろっき)、
「風(ふう)」
「寒(かん)」
「暑(しょ)」
「湿(しつ)」
「燥(そう)」
「火(か)」
の6つです。

通常であればこれらは木々や草花といった大自然を育てる要素となるが、
ある季節以上(太過)、または、ある季節以下(不及)の天候(気温)になると、
六淫(ろくいん)という名に変わり人の体に悪さを始める。

普段は大人しいのに急に牙を向くんです。
いつもは従順な愛犬が急に噛み付いてくるような感じですね。。

言葉ではわかりにくいかもしれないですが考え方はとてもシンプルです。

例えば、
冬のすこぶる寒い日に外で遊んだ後から
ぶるぶる震えて寒いし頭が痛いし鼻水も出るし肩も凝ってきたし熱っぽい。

典型的な風邪の症状ですね。

さらに
強い風が吹いてたりすると、
寒邪(かんじゃ)と風邪(ふうじゃ)が手を取り合い、風寒邪となり、
邪がパワーアップすることもある。
でこれらの邪がどうなるかというと、
皮膚や口や鼻、つまり外気と触れる場所から人体に侵入してくると捉える。

風寒邪のイメージは
風邪で皮膚あるいは鼻や口といった門戸をこじ開けて、
寒邪を侵入させるという実に見事な協力プレーを披露するんですよ。

風邪「寒さん!あっしが扉を開けている間に早く中に入っておくんなせえ!!」
寒邪「風さんすまねえ!この借りは必ずどこかで!!」

こんな感じのやりとりだと思います。

とまあ今は風寒で簡単に説明しましたが、
他の邪についても症状こそ違えど、
基本的には外気と触れる場所から侵入してくるのは同じなんですね。

さて、
いよいよお待たせしました、
ここでやっとこさ謎の「太陽病」が出てきます。

実は六因というのは皮膚や口鼻といった
「体の浅い部分」から侵入してくるのですが、
この浅い部分に邪が侵入して出る症状の病を太陽病といいます。(かなり大雑把)

さらに体表から侵入した邪は徐々に体の奥に入ってくる性質があります。
邪が太陽病位からさらに深く侵入すると「陽明病」「少陽病」・・・
というように、邪が潜んでいる場所によって病の名前が変わり、
お腹は下すは吐くはで、症状がどんどん重篤化していくんですね。
本来は陽明病位からも深くに潜っていくのですが、
ここで話すにはなかなか簡単にはいかないので、
興味がある方は調べてみてください。(丸投げ)

と太陽病を簡単に説明したところで、
改めて葛根湯の原文に戻ります。
和訳したものを改めて下にあげますね。

ほいっ。

太陽病、項背強ばること几几、汗無く、悪風するは、葛根湯之を主る

和訳をさらに訳していきます。

「太陽病」
は上で説明した通り、
邪(主に寒邪)が皮膚や口鼻から体に侵入して間もない状態。
次の「項背強ばること几几」
はうなじや背中がこわばる。
几几(シュシュまたはキンキン)
この訳には諸説あるのですが、翼の小さな鳥が首を伸ばして飛べない状態や
「几」とは机の古い漢字で、肩や背中が固まった様子を机の四角い様子を例えた。
とも言われていますが、
個人的にはキンキンの方が固まった感じが伝わりやすくてわかりやすいなあと思っています。

続けます。

次の「汗無く、悪風する」
は汗が出ず、悪風とは、風を嫌がる、風にあたると寒気がする。
といった感じですね。

それではついに最後の、、

とこのまま最後まで走り抜けたいのですがここで一旦足を止めましょう。
実はここで最も大切な苺が、いや一語があります。

それは「汗無く」です。

ここは葛根湯を服用するにあたりかなり重要な部分なのでしっかりとみていきます。

汗無くとは上で説明したとおり汗が出ていない状態を表すのですが、
もしも仮に汗がダラダラ出ている状態で
葛根湯を服用してしまったらどうなるでしょうか。
・・・
・・・
・・・
答えは状態を悪化させてしまう。です。
どういうことかというと、
葛根湯は、汗をかかせる
(葛根湯を形成する7つの生薬の中で、葛根・麻黄・桂枝の3種に発汗作用がある)
ことを目標としていて、
その目的は浅表部に停滞している邪を体外に追い出してやることなので、
もし汗が出ている状態で葛根湯を服用してしまうと、
汗が流れるのを助長させてしまい、体力を消耗してしまうことに繋がるんです。
(もしも汗が出る場合だと汗を止めるように別の薬を使用します)

実は葛根湯は、比較的体力がある人に使用する必要があります。
でもこの比較的体力があるって曖昧すぎて判断しづらいですが、
普段の生活を難なくされている方は体力があると判断しても大丈夫だと思います。

極端な話ではありますが、
普段から少し歩いただけで息切れをするようなヒョロヒョロのおじいちゃんが、
風邪だろうからと、滝のような汗をかいている状態で葛根湯を服用すると、
簡単にポックリ逝くことだってあり得るので注意が必要です。

上のおじいちゃんの例はほんとに極端な例ですが、風邪っぽい症状だからといって
なんでもかんでも葛根湯を服用しといたらいいだろう。
は若い人達にとっても、とても危険なことなので、
もし葛根湯好きの方(そんな人おるか?)がいるようでしたら注意しましょう。

それでは改めて最後の文節です。

「之(これ)を主(つかさど)る。」と読みます。
「之」とは、原文の葛根湯の前に書かれた諸症状のことですね。
「主る」は担当する。
でいいかと思います。

以上のことをまとめると、
太陽病項背強几几無汗悪風葛根湯主之
とは、
「あかん。。わし風邪ひいたかもしれんわ。。
 何か首とか背中凝るねん。寒気するし汗も出えへん。」
こんな時は葛根湯を飲むんだよ!
となります。

ほんとはもっというと、
太陽病にも種類があり、
他の症状がある時には
同じ太陽病であっても違う方剤を使用することになるんですが、
ここで説明するには長くなっちゃうので興味がある方は・・・(また丸投げ)

丸投げしたところでお開きにしたいと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました!

いかがでしたでしょうか。

今回は葛根湯を軸に漢方についてざっくりとお話させてもらいました。

冒頭申し上げたとおり、
① へ〜、そうなんや〜
② ようわからんけど、なんかおもろいやん
③ で?

いずれかの感想を持って頂けたかと思いますが、
欲を言えば、
④私も僕もわしもオイラも学びたくなった
の新たな感想を持って頂けたなら嬉しいなあ☺️

今回の記事を機に東洋医学に関しての知識や学んだことなどをメモとして
noteに書いていきますので、
そんな私の単なる自慰行為で誰かの探究心や好奇心をくすぐることができればいいなあと思っています。

🙏


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