見出し画像

水辺が好きだ

水辺が好きだ。

いつからだろう。
ずいぶん小さい時からだ。
水が流れている場所が、とてつもなく好きだ。
近くの公園には、小山があり、そこの山頂から下に向かって小川が作られていた。
夏場だけ放水されることになっていた。
もうわくわくして。
毎日水辺で遊んでいた。
流れを見る。触れる。浴びる。浸かる。
小さな魚がいる。やごが泳いでいる。
ぼうふらもいる。あめんぼもいる。
ザリガニもいる。
葉っぱが流れてきて、目の細かいところで水流が勢いを増し、
すこし目詰まりを起こしたり。

そんな環境で、水遊びばかりしていた。
小さい時から、どういうわけか、
水で暮らす小さな生き物とか
水の流れとか、
流れる音とか、
そういうのが大好きだった。

そんな環境で育ったから、大人になった今現在も、
水場がとてつもなく好きだ。
自然と生き物が暮らす様子を、
間近で見て、肌で感じて、
自然と触れ合った。
この体験は、今の自分の趣味嗜好に大きな影響を与えている。

いつだか、O-157が流行った時があった。
その時、公園にある水場という水場は、
かなり封鎖されてしまった。
とても悲しかったことを記憶している。
大好きな遊び場が奪われてしまったからだ。
自分はテレビゲームよりも、水場で遊んでいる方が
断然好きな少年だった。

それから大人になり。
十年以上経ち、地元に帰ると、
もう公園の放水はされなくなっていた。
夏場だけ行われていた放水。
財政的問題もあるのだろう。
衛生上の問題もあるのだろう。

干からびた水の流れる道が、それを物語っている。
もう、何年も水が流れた形跡が無い。

つい最近、放水の中止に加え、
ついには貯水場が埋め立てられてしまった。
貯水場から山頂にポンプで水を汲み、
そこから流す仕組みであったが、
老朽化と財政難で放水が中止された今、
いっそのこと貯水場を埋め立てて、
運動できるスペースにしてしまった方が良い、
という判断なのだろう。

今は昔の名残として、山頂から続く水が流れる道が
残るばかりだ。
しかし、手入れもされておらず、石の橋は朽ちて
通行するのさえ危ないくらい崩壊してしまっていて、
荒れ果てている。
実に寂しい。

こんな公園は、都内には実はいくつもあるのではないか。
時代と共に、子供の遊び場が無くなるということが
叫ばれて久しいが、子供の遊具に加え、
こういった水が流れる仕組みの公園は、
徐々に数を減らしているのではないだろうか。

だからこそ、親水公園というのはかなりアツい。
もう、公園の名前になってしまっている。
ここから水の流れが無くなるはずがない。
まぁ、親水公園というのは、たいてい、
小川が流れている公園ということで、
水を循環させるとか、そういう大掛かりな
設備まではないように思う。
その点、山頂から水を流すという地元の公園とは
財政的にも維持がまだ楽なのだと思う。

親水公園も、子供の頃から大好きだった。
結構大きめの魚も泳いでいる。
ザリガニとか、比較的大きな生き物もいて、
そんな様子を眺めるのが大好きだった。
未だに、都内をサイクリングして、
親水公園を通るときには、必ず足を止めてしまう。
水の流れを、注意深く眺めて、
魚は住んでいるのかな、どんな生き物がいるのかな、
と探してしまう。

海とは違って、こういう小川の良いところは、
川底が見えることだ。
かなり浅く、川自体も狭いから、
もう完全に自分の扱える規模感、という感じがして。
流れもそんな早くないし、
茂みの中にひっそりとしている生き物の様子とかを
間近で見ることができる。

将来、住むのであれば、親水公園の近くに住みたい。
毎日、散歩するたび、水の流れを眺めることができる。
毎日わくわくできる。
特に、何か特別な生き物がいるわけではない。
むしろ、何も見つけられない方が多い。
でも、川底が見える小さな流れを、
眺めているだけで、自然と心が落ち着く。

この感覚が分かる人がいるだろうか。
こういうことを、人に話すことってほとんどないし、
そもそも話題になることがない。
よって、話す機会が無い。
あえて話すようなことでもないし、
まして熱心に語るようなことでもない。
きっとあまり理解してくれないのではないか、という気がしてならないから。
でも、中には親水公園が堪らなく好きという若者もいるはずだ。
親水公園や、運河のほとりで、
一日中、川の流れをひたすら眺めるだけの会を開いてみたい。
釣りはしない。ただ、川そのものや、そこに住む小さな生き物を眺めるだけというかなり落ち着いたやつ。
こういうのに趣を感じる人っているのかな。あまりいないかも。
でも、少しはいると思う。居てほしい。
アウトドアなんだけど、一般にアウトドアという単語から想像するそれではなく、ただ外という意味だけでアウトドア。
中身はインドアに近い運動量。
都内の親水公園を巡る旅とかしたら、かなり楽しそう。

さすがに、30歳を過ぎた独身男が、
週末にこんなこと一人でやっているとは言えない。
「サイクリングしてます」と言うのが関の山だ。
こういうスローな趣味を持った方はいないだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?