見出し画像

Instagramのチェックアウト機能と寄付

写真共有アプリであるInstagramが新機能「チェックアウト」を19日より試験運用するとのニュースがあった。
今日はこの新機能と寄付との相性について考えてみたいと思う。

チェックアウト機能とは何か

チェックアウト機能とは、Instagram内で気になった商品を直接購入することができる機能を指す。
まずはアメリカのみでリリースされ、今時点でNIKEやユニクロ、Prada等の23ブランドが参画しているとのことだ。

ショッピング機能との違い

このニュースを見た時、「これまでもInstagramから商品を買うことができたのでは?」と思った人もいるかもしれない。
確かにこれまでもInstagramには「ショッピング機能」があった。

では今回リリースされた「チェックアウト機能」と「ショッピング機能」の差は何なのか。それは「決済が行われる場所」だ。

これまでのショッピング機能は、ユーザに以下のフローで利用されてきた。

1,インスタグラムで気に入ったアイテムを見つける

2,写真をタップし、表示されるタグを選択

3,商品の詳細情報を確認し、商品の「ウェブサイトで見る」ボタンを選択

4,ECサイトへ遷移

5,(ECサイト上で)決済

それがこれからは以下のフローに変わる。

1,インスタグラムで気に入ったアイテムを見つける

2,写真をタップし、表示されるタグを選択

3,商品の「購入(Check on instagram)」ボタンを選択

4,(instagram上で)決済

つまり、商品を購入する際にこれまでのように「アプリから離脱してECサイトに遷移する」必要がなくなるということになる。

結果、手数料はECサイトではなくInstagramに支払われるため、彼らにとって新たな収入源が得られるようになるという事だ。

ユーザ目線で考えたときの利点

ユーザ目線で考えると、これまでECサイト毎に行っていたユーザ登録(既に登録されている場合はサインイン)する手間が省ける、ということが一番大きい利点だと思う。わざわざサイト毎にユーザ登録し、住所やクレジットカード情報を入力するのは手間でしかない。
「欲しい」と思った時のテンションを下げることなく、購入手続きに移ることができるのは、購入率を大きく上げるように「一見」思える。

購入率は本当に上がるのか

でも根本的な話になるけれど、Instagramの写真から購入に繋げるのは少し難しいのではないかとも思う。
そもそもInstagramはビジュアルがメインのプラットフォームであり、「消費行動の入り口」にはなれど購入前に行われる「情報収集」や「比較・検討」のフェーズを用意できないことには、購入に繋げることは難しいのではないだろうか。

SNSを利用した一般的なカスタマージャーニーをざっくりと纏めると、以下のようになる。

1,オンライン:気になる商品を発見、販売店/アイテムに関する情報収集
2,オフライン:店舗に出向き、試着。
3,オンライン:販売店を比較・検討して価格の安い店舗から購入
4,オフライン:家で服を着て写真を撮り
5,オンライン:SNSにアップ

Instagramのチェックアウト機能で商品を購入するということは、上述の「1」のタイミングで購入するということだ。日本にこのような「衝動的なお金の使い方」をする人が、果たしてどれだけいるのだろうか。

寄付に可能性があるのでは

じゃあこのチェックアウト機能は、日本との親和性が一切ないのか、というとそうでもないと思う。例えば寄付なんかどうだろうか。寄付はそういった「衝動的なお金の使い方」にむしろ向いている気がする。

これまでの日本の歴史を鑑みても、日本は強烈な課題意識を持った時、いつだって団結し「復興のための行動」をとってきたように思う。
また日本には寄付が集まりずらい、とよく言われるけれど震災等の「有事」の際には寄付がしっかりと集まっている。

大切なのはみんなが「強い課題意識を持つこと」、そして課題意識を持った「その瞬間を掴んで寄付に繋げること」だと思う。

Instagramの「チェックアウト機能」はまさにそんな使い方にとても適しているように感じた。

ターゲット層に影響力を持つインフルエンサーに課題に関する投稿をしてもらい、フォロワーへ強烈な課題意識を持たせることで「寄付行動の入り口」から「寄付の決済完了」までを一気に狙うというのはどうだろうか。

なぜ寄付には「情報収集」や「比較・検討」が必要ないと言えるのか

消費者が商品を購入する前に「情報収集」や「比較・検討」をしたがるのは、見返りを求めるからだと思う。せっかく買って自分のものにするのだから、より良い条件がないか、より見返りのある方法がないかと考えるのは普通のことだ。

一方で見返りを求めない、つまり課題意識や大義に基づいた寄付のような行動であれば、条件の良さについてそこまで気にすることはない。
もちろん寄付先がしっかりと運営されているか否かの判断は必要だし、より手数料の低いサイトがないかの確認は必要だと思う。でもそのふるい分けだったり、信用だったりをインフルエンサーが担保しているからこそ、意思決定を早めることができるのだと思う。

後このやり方はインフルエンサーだけでなく、フォトジャーナリストにも応用が利くと思う。彼らの作品に対して寄付が行えるようにすれば、彼らの活動の幅を広げる事ができるようなお金の流れを生み出す事ができると思う。結果、ユーザーが課題意識を持つきっかけを増やす事ができるし、とても合理的だと思う。

と思うままに色々と書いてきたけれど、「チェックアウト機能」のニュースはとても興味深く、その影響についていろいろと考えさせられたので、思考の整理としてここに記しておく。

最後までお読みいただきありがとうございます〜!よろしければシェアしていただけると嬉しいです!