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『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』夢を持つ意味を教えてくれる、優しい物語

夢は見るもの?叶えるもの?
いやいや、それよりもっと大切なのは……

“持ちつづけて、悩みつづける”

ものってことでしょ?

今回は泣かなかった!号泣には至らなかった!
しかし、心に新たな希望を宿してくれる、そんな優しい作品だった。

前作『映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』は2019年公開作の中でダントツのナンバーワン作品だった。


それは子供向け作品にも関わらず、人生を歩むには避けては通れない「永遠の別れ」をテーマにしながら、一切妥協しない姿勢で作られた映画だったからです。

言い換えれば、それは子供たちを一歩大人にさせようと、大人が本気で創り上げた、少し心の痛みを伴うギフトでした。

僕は前作をYouTubeで話したとき、涙を堪えながら、作品の本質をお葬式に例えて解説をしました。

(詳しくはYouTubeの過去の動画を参照下さい)

【至極個人的なレビュー#10】『映画 すみっコぐらし』は、お葬式の話ッ⁉︎【『アナ雪2』にない大切なことが『すみっコ』にある!】 https://youtu.be/Nyc4wu0AB_w

その号泣だった前作に次ぐ今作『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』のテーマは“アイデンティティ”です。


自分は何者なのか?どうありたいのか?何を願うのか?、そんな「自分が自分であるには?」という、自己意識にまつわる物語です。

こう言ってしまえば、このような話は今まで数多も在りますが、その自己意識を“夢”というキーワードを使って演出しています。

夢といえば、やりたいこと、将来や人生の目標という印象になりがちですが、この映画ではそれよりももっと手前の“持つこと”に関する提言がなされます。

今回、すみっコ達は魔法の世界からやってきた魔法使いの兄弟の末っ子(という認識で良いのか?)ファイブが、元の世界に戻れなくなり、戻れるようになるまで共同生活をするところから物語が始まります。

故郷を離れ、ひとり寂しい思いをするファイブを励ますすみっコ達。

その優しさに、恩返ししようとファイブは、すみっコ達の夢を魔法で叶えようとするのですが、未熟な魔法なゆえに、間違った形で夢を叶えてしまいます。

体型に悩むネコは体型に悩まなくなり暴飲暴食、自分探しに必至だったペンギンは自己肯定感マンマンで横柄な態度になり、人に認めて(食べて)貰いたいカラアゲは自己嫌悪で鬱に陥ります。

つまりファイブは、すみっコ達の“夢を叶えた”のではなく、夢から生じる“不安や努力を取り去って”しまったのです。

夢という概念には、実に多くの要素や感情が複合的に組み合わさっています。

その夢には、自身のコンプレックスがあるからこそ抱けるものや、将来への不安や悩みが拭えないからこそ湧きたつ希望がある。

夢の裏側には、不安や孤独、自分に対しての卑下や批判のような暗部がある。

しかし暗部があるからこそ、すみっコ達の中で湧きあがる夢(=生きる希望や自身への探究)が成り立っている。

こんな難しいテーマを、子供向けアニメでありながら、しっかり妥協せずに、尚且つ分かり易く見せる見事な描写だと思います。

この映画は、夢を叶えることや、人生の目標に到達することへの賞賛ではなく、夢をただ持つこと、言い換えれば人生を生きる中で悩みを持つことこそが、あなた自身のアイデンティティに既になっているよ!と優しく訴えかけてくれる映画です。

「夢を持つことは、悩みもセットなんだよ。悩みがあることは、そこに生きる希望やアイデンティティが芽生えている証拠だから、大丈夫だよ!」

そんなふうに感じさせてくれる映画です。

そしてそして!
前作の『映画すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』を観た方は、エンドロールの最後の最後まで見て下さい!

前作の主役だった“あのコ”もちゃんと出てきます!すみっコ達は忘れてません!

ここで前作ファンは、ちょっぴり泣いちゃいますよね。

大人も子供も、老若男女、超絶オススメです!
ほら観に行けー!すぐ行けー!

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