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読書感想文:「BANK 4.0」

著者のブレット・キング氏はフィンテック企業の「Moven」(何故かエンタープライズ向けサイトにしか行けない)の創業者で、金融とテクノロジーを掛け合わせた領域において、ずっと情報を提供している人物とのこと。

ただ、それが故に、本書については、あまりにもテクノロジーよりになっているように思う。大筋として、今後、金融業界に対するテクノロジー(特にAIやブロックチェーン等)の影響については、異論はない。ただ、現状の金融機関が果たしている役割と取り組みについては、(個人的な印象ではあるが)過小評価している気がする。

おそらく、自分がそう感じるのは、本書の主なポイントがいわゆる「家計」を対象としている銀行の活動に焦点があたっているのだからだと思う。個人を中心とした「家計」との接点という点において、アントファイナンスの事例や音声UIなどの浸透といった論点は、意味のあるものかと思っている。

しかしながら、それ以外の金融機能については、多くは語られていない。
個人的には、本書の第1章で述べられている「第一原理」についての話が、この本で一番価値があるように思う。

第二次世界大戦中に基本コンセプトが出来上がっていた宇宙用ロケット。数十年が経ち、イーロン・マスクが現代の技術で1からロケットを作り直すのであれば、どうするかという問いからスペースXのファルコンを作ったという話などが紹介されている。

上記の例は非常に有名な例ではあるのだけど、金融がもつ機能と、それを達成するための方法を、現代及び将来のテクノロジーをベースに考え直すというアプローチは、非常に興味深いと思う。

それ以外であれば、最後のまとめのセクションを読みながら、興味のある該当箇所を読むだけで、フィンテックに関する情報を集めている人であれば、十分に思える。

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