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家業を継ぐ、ということ。

半年前、noteで自己紹介しました。

新型コロナウィルスの混乱の中、2月に代表を交代して、バタバタと日々の業務に対応して迎えた4月。自分が家業の質店を手伝い始めるところまでを文字にしたら、なんだか妙に気持ちがスッキリしてしまって、その後何を書いたらいいのやら迷ってるうちに、半年が経ってしまいました。

昔のことを思い出して、当時何を考えていたのか書き留めておきたいのだけれど、なにせもう10年以上前の話。ひとまずタイトルだけ書き出してみることにしました。

「ルーペをうまく使えるようになるの巻」
「Facebookで先輩たちに厚かましく何でも聞いちゃうの巻」
「相場観をなんとかマニュアル化することはできないか模索するの巻」
「資格を取ったら説得力が増して意見がいえるかもしれないの巻」
「いろんな団体に首を突っ込んで促成栽培の巻」
「真贋を見極めるという終わりなき旅」

唐突に最後、「旅」になってしまったけど、
これをひとつひとつ書いていこうかな・・・と当初思って下書きに残したまま、

としまえんの閉園のほうが気になって、そっちを先に書いてしまいました。


というか、タイトルを書き出しただけでもう満足してる自分がいます。

・・・

質屋の息子として育ったものの、店を手伝うまで、商売の詳しいことは全然分かってなかった。当時20代半ばの私が、突然そこにポンと放り込まれても、なにから手伝えばいいのか謎だらけ。

ウチの場合は前にも書いたとおり、私と入れ替わりでお辞めになった番頭さんが父の仕事の先生でもある人だったから、その方と少しでもご一緒してノウハウを引き継ぐ余裕があればよかったんだけど、残念ながら入れ替わりで辞めてしまったために、引き継ぐというよりは、残存物を見て内容を紐解きながら、私なりの外様の感覚で、オカシイところをアップデートしてく感じだったかな。

当たり前だけど、私が入る直前まで普通に機能してた商売なわけだから、ともすれば、「現状維持でいいじゃないか」となりがち。でも、そのマインドによって、この店が時代に取り残されている、と率直に思ったのも事実。現状維持する部分と、変えなければならない部分のバランス。

仮に私の言っていることが正しくても、急に入った若造が頭ごなしにこれも違うあれも違うって言っても説得力に欠けると思ったし、慎重にきちんと理由を探らないといけない気がしたし、それを見極めて具体的に改善していくまで、なんだかんだでやっぱり2年くらいはかかった。1年通してどんな営業活動があって、売上があって、出費があって、みたいなものをまずは経験して、さらに次年度以降は具体的に改善点を洗い出して、着手していくような感じで。

ベンチャーとかに比べたら笑っちゃうくらいスピード感はおそすぎなんだけど、なんというか、家業の事業承継ってドラスティックに改革できる跡継ぎさんもいると思うけど、このゆっくりした改革のプロセスが合っている会社さんも多いんじゃないのかな、、と勝手に思ったりして。

うまく回ってそうにみえる事柄でも、固定観念を取っ払って、本質的にそれが最善なのかをイチから考え直す作業。お世話になっている税理士さんや司法書士さん、金融機関の担当者、修理などでお世話になっているジュエリーや時計の専門家たちに素朴な疑問をぶつけて教えてもらったり、もちろんネットで調べたり本買って勉強したり、それでもまだやっぱり変だな、というところは、父親に進言して相談してみたり。土台になる基礎から見直してく感じ。その繰り返し。

やっぱり現状維持するよりは、変えようと新しい試みに取り組んで思い切って仕組みを刷新してみるほうが、結果的によくなることのほうが多かった。自分は負けず嫌いなところがあるから、誰かに自分の意見やアイディアを提案するときには、とことん理論武装して非の打ち所のないプランにしてから提案に向かう傾向にあるので、そこまで的外れな改善はしない自信はあった。本質的に正しいのかを見極めるために、過去残していた書類には全部目を通したし、質蔵や倉庫の隅から隅までチェックして把握して「これなんのために保管しているのかわからないもの」をとにかくなくしていった。

その上で、「色々調べた結果、私が指摘して改善したい事柄は厳選されてかなり確度が高いから、優先度高く改善するべきなんだ」っていうのをどうやって周りに説得力をもって伝えられるか、というところがキモで、資格をとったり、別の専門家を連れてきたり、同業者にアドバイスをもらったり、面倒でも何枚も具体的に文字や数字を紙に書いて説明したり、とにかく自分勝手に発想したんじゃないんだぜ、こういう客観性があるんだぜ、ウチの常識は世間の非常識だぜ、っていうのを、外堀から埋めていったりした。これって、別に目新しいことでもなんでもなくて、一般企業でも対クライアント業務でも、他人を説得するときって往々にしてこういうプロセスを踏むんだとは思う。

質屋の窓口での接客スキルということでいえば、未経験からのスタートだし決して即戦力ではないんだけど、仕組みづくりとか経営管理とかそういう部分には幸いなことに興味も適性もあったから、とにかく改善してよくするんだ、っていうモチベーションは高かった。

あと、自分の時間がしっかり取れるようになったのも嬉しかった。閉店時間が決まってて、帰宅時間が決まってるって、こんなに気持ちが楽なものなのか、とか思ったよ。

父の名誉のためにいえば、私が店を手伝い始めた頃、大赤字で業績が大幅に傾いていた、とかではなくて、長い不況とともに当然売上も利益も緩やかに下がっていたけど、あまり対策をしていなくて、危機感があまりない中で後回しにしてきた事柄からだんだんほころびが出始めていたような状態。財務的にもやや安定度に欠ける、、といったところ。

そこへ、私が参入し、気持ち的には日産に来た当初のカルロス・ゴーンのごとく、こことここをコストカットしよう、財務体質を改善させよう、みたいなのが最初の数年間だったように思う。

自分がこの商店の救世主なんだ、って自己暗示にかけながら日々奮い立たせてたな。そんな感じ。

ということで、
次回、「ルーペをうまく使えるようになるの巻」
(本当に書くの!?)

今後ともどうぞご贔屓に。。



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