おみやげ(2015/02/14)

仕事が休みだったので、中野に行って人気のカレー屋さんでカレーを食べ、ブロードウェイの時計屋さんをプラプラ巡ってたら、突然、大学で同じゼミだった同級生から数年ぶりに連絡が来た。

彼は地元が岩手で、大学で上京し、卒業後また東北に戻って今は仙台で働いている。どうやら2日前から社員旅行で東京に来てるらしい。

「朝から浅草で観光してるんだけど、みんな東京知らんからさぁ。ガイド役が大変よ。今日帰るんだけど夜は空いてるから、ご飯でもどう?」

帰りの新幹線が20時なので、遠くにいても移動が面倒だからと東京駅周辺でご飯を食べることになった。

待ち合わせ場所の「KITTE」1階に到着すると、彼はおみやげを持って立っていた。

「ご飯食べに行こうって誘って、一番はじめにOKしてくれた人におみやげ渡そうって決めてるんだ。いつも東京来るときそうやって必ずおみやげひとつ買うの。もし2つ3つ買って一人しか捕まらなかったら寂しいもんね。ま、色々声かけたんだけど、今日は大地しかこなかったけど。ちょうどいい。はい、おみやげ。」

「仙台味噌かすてら」と書かれた紙袋を彼は照れくさそうにボクに渡した。

どこでご飯食べるか決めてなかったので、5階にある飲食店のなかから選ぶことにした。彼は最初ラーメン屋さんに入りたそうだったけど、ラーメンはすぐに食べ終わるからやめようと説得し、お好み焼き屋さんに入った。

ボクは生ビール、彼は「兵庫の地酒飲み比べ3点セット」を注文した。

「兵庫のお酒なんて全然知らないもんね。ほら、見て、この三種類の銘柄。一つも知らないもん。兵庫だよ。知らないよね。兵庫。でもうまい。」

お好み焼きを食べながら、今取り組んでる仕事のことやお互いに知ってる大学時代の思い出話、昨日生まれて初めてディズニーランドに行ったこと、仙台は復興需要で活気があること、街コンは偶然の出会いではないから嫌いだけど合コンはアリらしいこと、あと、同級生が今どこでどんな活躍してる、みたいな話をした。

会話の途中で彼がふいに「そうなんすよね」と敬語になるので、そのたびに2人で笑った。

「オレ仙台に友達いないからさ、会話するとすれば会社の先輩とかだから。タメ口で話すことなんてほとんどないからね。」
彼が少し訛りながら笑顔で言うので、どんなリアクションをしていいか迷ったけど、「だろうね」とボクは答えた。

彼は大学の頃からなんとも言えず不思議な男だった。毎晩筋トレをしたいからという理由で滅多なことでは徹夜で遊ぶこともなかったし、夜は22時頃に寝るって言ってたし。女友達は結構いたんだろうけど、彼女の話とかあんまり記憶にないし。で、そのつかみどころのないところがまた魅力でもあった。

あっという間に時間は過ぎ、あっさりとお会計を済ませた帰り際、

「突然誘ったのに付き合ってくれてありがとう。次会うのは東京オリンピックの時かな」

と、本気かボケかわかりづらい間合いで投げかけてきたので、

「いやいや。結構まだ先よね、東京オリンピック。その前に何かしらで来るでしょ、東京。また誘ってよ」

と、当り障りのない返ししかできなかった。けど、次彼が東京に来るときもこんな感じで突然連絡が来て、突然会って、またあっさり別れるんだろうな、とか思った。

別れてから有楽町駅まで独り歩きながら、前日まで全く予定してなかった突然のイベントに翻弄されながらも、なんだか充実した1日だったなぁなんて、ついさっきまでの出来事をニヤニヤしながら思い返したりしていた。(了)

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