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アイドルゲーム「シャニマス」に登場するオタク・ベストテン

アイドル育成ゲーム「アイドルマスターシャイニーカラーズ」では、プロデューサーとしてアイドルの成長を見届ける膨大なシナリオを楽しむことができる。

アイドルに不可欠なものと言えば、その活動を支えるファンだ。シャニマスはなぜか、アイドル周辺のファンやオタクの描写が妙に多い。そして、妙にリアリティがある。

今回はランキング形式で「シャニマスに登場するオタク」を紹介していきたい。


※この記事にはシャニマスコミュのネタバレが含まれています。イベントコミュは「many screens」まで、現行のプロデュースアイドルやサポートアイドルのコミュについても書かれています(2020/09/10)


⭐第10位 限界ファミレス店員

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出典:p-ssr『潮騒のシーショア』「君は誰かにとっての太陽」

小学生アイドル小宮果穂とプロデューサーが打ち合わせを兼ねた昼食をとっているときに注文を取りに来たウエイトレスさん。

小宮果穂と、彼女が所属するグループ「放課後クライマックスガールズ」の大ファンで、「あのっ、握手してもらってもいいですか!?」と声をかける。

「お姉さんも! お仕事がんばってください……っ!」と逆に果穂からエールをもらい「っ……はいっ……! ありがとうございます! それじゃあ……あっ――それでは、失礼いたします!」と、異様にリアルなオタクの挙動を残して退場した。ボイスのない脇役だが、誰が読んでも涙声になって目も潤んでいるとわかる描写が秀逸なオタク。このあと手を洗えたのだろうか。


⭐第9位 樹里ちゃんのほっぺ

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出典:西城樹里G.R.A.D.「――――へ」

西城樹里がパーソナリティを務めるラジオに応募してきたリスナー。

ラジオネーム「樹里ちゃんのほっぺ」というギリギリ気持ち悪いセンスが強烈なインパクトを残したオタク。ストーリーを再生してまず冒頭に出てくるテキストであり、心の準備もできないうちから濃度の高いオタクを見せつけられることとなった。

おたより自体は「最近、樹里ちゃんの活躍ぶりに驚いています。全部追いかけたいけど、それが大変なくらい(笑) 樹里ちゃんが色々なことに挑戦してくれて、前よりも積極的に活動してくれてる感じがしてすごく嬉しい! 忙しいと思うけど、病気や怪我に気を付けて、いつも素敵な樹里ちゃんでいてね。これからも応援しています!」という比較的無難な内容だったが、随所に古参アピールの気配が漂っているところに妙なリアリティがあるオタク。


⭐第8位 これから冬優子のオタクになる人

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出典:『Straylight.run()』「SING IT!!」

デビューしたてのアイドルユニット「ストレイライト」が、草の根活動として客の呼び込みをしている際に遭遇した通行人。この時点ではストレイライトのことをまったく知らないので、正確にはオタクではない。

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しかし黛冬優子の媚び媚びな誘い文句に反応して出た「ちょ、ちょっと見てこっかな……!」というわずかなセリフのあからさまに鼻の下が伸びている感が見過ごせなかったためノミネートした。間違いなくこのあとライブを観に行って、黛冬優子のオタクになっている。


⭐第7位 黛冬優子

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出典:『アジェンダ283』「しっかりたのしむこと」

そんなアイドル「黛冬優子」自身がここでオタク側でノミネート。環境問題とゴミ拾いが主軸となって進む異色のイベントストーリー「アジェンダ283」における言動が選考理由となった。

同事務所のユニット「アンティーカ」が河原に捨ててあるマンガを読みながら騒いでいる様子を見て、ライバル心を燃やすシーン。

「キレイめ揃いで、ごみ持っててもなんかキマっちゃう――どうせ田中摩美々か三峰結華が今日のオシャレ写真をアップすんのよ。計算された盛りと引きのね……! 真似して勝つのは簡単じゃないわ。ただでさえSNSをやってない幽谷霧子の映り込みは貴重なんだし、月岡恋鐘と白瀬咲耶だって別メンバーが撮ればいつもと違う表情になったりする――」

と、怒涛のオタク愛憎アナライズを披露した。

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対面では三峰結華のことを「ゆいにゃん♪」と呼び「ふゆゆ」と呼ばれる関係なのだが、見えないところでは相手をフルネームで呼んでいるという事実はかなり衝撃的だった。


⭐第6位 ラジオネーム樹里ちゃんファンさん

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出典:西城樹里G.R.A.D.「元気をくれてありがとう」

またしても西城樹里のエピソード。アイドル生電話のコーナーに当選したラジオネーム「樹里ちゃんファン」さんがここでランクイン。名前の通りかなり熱心な西城樹里のファンで、直接アイドルと話せた感動でいきなり泣き始める。その後「伝えたいことがある」と言って、予め用意してきた樹里宛ての手紙を朗読するのだが、

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ボイスどころか固有のアイコンもないのに18行にわたって西城樹里への思いを語り続けた勇者。しかし手紙の内容は西城樹里を少しでも知る者なら完全に納得できるものなので、誰もそれを笑ったりはしないのだ。


⭐第5位 解釈違いの小学5年生

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出典:『many screens』「大入御礼」

イベントストーリー「many screens」にて、小学生アイドルの「小宮果穂」にハガキを送ってきた小学5年生のファン。

「many screens」は、アイドルユニット「放課後クライマックスガールズ」がラジオで落語『死神』に挑戦するというストーリーなのだが(よくそんな話やろうと思ったな)、ここで最終的に主人公を死に至らしめた死神を演じたのが小宮果穂。

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果穂は特撮ヒーローに憧れ、正義の味方を目指している。そんな彼女が意地悪な死神を演じたことでショックを受けた小学5年生の果穂ファンは「悪い果穂ちゃんを見たら、悲しくなります」という気持ちを送った。結果的に、このハガキが果穂を思い悩ませることになってしまう。

子どものファンと子どものアイドルの間で生まれてしまった悲しい行き違いだが、大人のオタクもぜんぜん克服できてないことなのでノミネート。


⭐第4位 拝むオタク

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出典:杜野凛世W.I.N.G.「見つめる先に」

アイドル「杜野凛世」の握手会で登場。手違いでプロデューサーとはぐれてしまった凛世が握手会中にも不安を隠せないでいると、参加していた凛世のオタクたちが助け舟を出す。

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ファン1「もしかして具合悪い? なら休んだほうがいいよ。俺たち待ってるからさ」

ファン2「マジ? 凛世ちゃん調子悪いの? やべぇ……俺、中止でもいいよ……!」

この時点でなんか面白いが、入選したのは3番めのファン。


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ファン3「そうそう、凛世ちゃんが早く治るように俺ら拝んどくから、一回、楽屋戻ってきなよ」


祈るんじゃなくて拝むんだ。


⭐第3位 咲耶「様」のオタク

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出典:白瀬咲耶G.R.A.D.「ラブレター・フロム」

元モデルの王子様系アイドル「白瀬咲耶」に手紙を送ったファン。


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モデル時代からの白瀬咲耶ファンであり、ユニットアイドルの一員として売れてきていることを喜んではいるものの、かつての凛々しくカッコいい「咲耶様」ではない、バラエティ的な仕事をこなすようになった現在について不満を抱いている。

「モデルの頃の咲耶様に戻って欲しいです」という言葉は、偶像を見せるアイドル業がどうしても生み出してしまう失望を象徴している。実際、タイムラインに本当にこういう人がいた。


⭐第2位 さなぴー

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出典:和泉愛依p-ssr『メイ・ビー』「おつかれ~!」

ギャルJKアイドル「和泉愛依」の同級生「さなぴー」として登場。

正確には、というか、普通に考えて「さなぴー」はオタクではない。しかし、抱えている情念が屈折した「それ」なのでノミネートしてしまった。

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愛依は極度のあがり症で、普段は明るく楽しいが舞台上では全く喋れなくなってしまう。そこでミステリアスなクールキャラを演じることにしているのだが、さなぴーはそれを「やらされている」と感じ、偶然遭遇したプロデューサーに噛み付く。


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「無理やりやらされている」という思い込みからプロデューサーに辛く当たるさなぴーは、さながら「"アイドルではない和泉愛依"のオタク」のように見える。

小学5年生の果穂ファン。咲耶「様」のファン。そしてさなぴー。重ねたはずの理想がズレてしまうことで湧いてくる、どうしようもない負の感情が様々な角度から描かれている。


⭐第1位 おむすび恐竜

出典:桑山千雪G.R.A.D.「千雪って人が」

やさしいお姉さんアイドル「桑山千雪」の深夜ラジオ番組「パジャマ・ジャム・ジャミング」に投稿してきたオタク。

「パジャマネーム『おむすび恐竜』さん(20)からのお便り」


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「『いつも聞いてるよ、千雪』」



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……と、多くのプレイヤーの血を瞬間的に沸騰させた。


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桑山千雪が所属するユニット「アルストロメリア」は、こういうファンシーで花畑な雰囲気で、23歳の桑山千雪はもと雑貨屋店員、Olive(っぽい雑誌)を愛読する少し夢見がちなところのある女性。

その桑山千雪に、


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「『いつも聞いてるよ、千雪』」

である。米つぶをくっつけた恐竜が秘密のお花畑に土足で踏み込んできた。

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これを受けて千雪は「――わ、千雪って呼ばれちゃった……! 私の弟もね、『千雪』って呼び捨てにするんです~」と切り返す。さりげなく「千雪」呼びを「弟」のイメージに寄せ、自分のフィールドに持っていったあたりに桑山千雪の上手さが見える。しかし、


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「それじゃあ、私も呼んでいいのかな」
「――いつも聞いてくれてありがとう、おむすび恐竜」


向こうのインターネットで殺害予告とかされてないだろうか。おむすび恐竜の安否が心配だ。ということで「シンプルに気持ち悪い」という理由から「おむすび恐竜」が1位になった。


⭐番外 SNSのオタク

シャニマスにはたびたびSNS描写が挟まれるが、その表現に妙なリアリティがある。よくある類型化されたネット書き込みとは一線を画した「あ、こういうオタクいるわ」を描くのがうまい。


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たとえばこういう「こんな役回りもこいつはイケる」という謎のプロデューサー目線。「キレキレ」という語彙も絶妙に現代のオタクだ。

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あんまり応援してないアイドルを名字で呼ぶ感じもそれっぽい。

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(出典:『ストーリーストーリー』「からっぽの家」「家の物語の話」)

よく戯画化される「○○たん~」的なオタクと一般人の間にいるネットオタクの「ちょっと距離を置いて評価してる感じ」がすごい。


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特に好きなのが上の「聞いちゃうなこれ おもしろい」という一言で、この位置にある言葉をよく掴んだなと感動した。「いる」んですよ。バカにするでも美化するでもなく、現実に「いる」ネット民の言葉が誇張0でゲームに反映されている。「聞いちゃうなこれ」って……。わかる、なんかそういう距離のとり方ある……!


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(出典:『many screens』「あげサゲ!!!!!」)

アイドル本人からリプライが来たときの焦り方も絶対見たことある。


⭐「いる人」として「ある気持ち」を描く

全体的に不穏なシーンからの引用が多くなってしまったが、シャニマス自体はそこまで暗いゲームではない。ただ、物語的な都合で省略されがちな細部を描く意志があり、その過程でザラついた質感のあるリアリティも再現されているのだと思う。

シャニマスはアイドルだけじゃなくて周囲に出てくる人たちの描写も凝ってて面白いです、という話でした。

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