マガジンのカバー画像

コラム・エッセイ「特筆すべき点P」(無料)

93
脈絡のない思いつきを長々と書いているシリーズです。
運営しているクリエイター

#テレビ

もうビールをゴクゴクできない

『TVブロス』2017年掲載のコラムを加筆修正したものです。  25歳未満の人間は、酒のCMに出演できないのだそうだ。  人に教えてもらって驚いた。最近決まった自主規制で、未成年の飲酒につながりかねない、とかそういう理由で自粛しているのだという。  実際に調べてみた。 「飲酒に関する連絡協議会」が2016年に定めた「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」によれば、確かに「テレビ広告において、25 歳未満の者を広告のモデルに使用しない。また、25 歳以上で

悼む人(お茶の間で)

『TVブロス』2018年3月掲載のコラムを加筆修正したものです。  芸能人の訃報に胸が痛む。私はその人のことを知らないし、向こうも私のことを知らない。  にもかかわらず、私の内部を構成するパーツの一部が欠損したかのような痛みを、訃報で感じることが「できてしまう」。不思議なことだ。  寝入り端によく空想していることがある。私はどこかの農村で生まれ育ち、百姓としての毎日を過ごしている。  妻と子がいて、隣人はみな親戚のようなものだ。その世界の私が出会う人間は生涯で100人に満

地元民の矜持

(TVブロス2015年9月掲載のコラムに加筆と修正を加えたものです)  2015年に、『止まりだしたら走らない』(リトルモア)という短編小説集を出版した。収録されている短編の中に、いつもディスカバリーチャンネルで海外の映像を眺めては「生きているうちにそこへ行くことはないだろう」とぼんやり考える女性の話がある。  テレビを見ながら行く予定のない場所に思いを馳せるのは、ある意味「正しいテレビの使い方」だ。だが、逆の出来事もある。「地元がテレビに映る」という事態である。かなりの