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寄り添いの閾値を設計する。プロジェクトの優しさを決める。

ターゲットへの寄り添いの程度

コンセプトワークで言葉を起こすときに「どの程度、寄り添うか」が大きな課題になることが多い。メッセージを届ける相手(ターゲット)なのか、ステークホルダー(インナー)なのか、その対象はさまざまだけれど、公共性の高いプロジェクトにおいては、その初期段階で「寄り添いの閾値を決めておく」ことが大切だと感じることが多い。

対象に寄り添う程度を「寄り添いの閾値」と呼んでいる。

寄り添いの閾値を適切に設定することは、メッセージの最適な伝達だけではなく、ステークホルダーやチーム内での言語をつくっていくことでもある。

ケレンのネガティブ

「モノを売る」ときの広告的な手法においては、ケレンの度合いが重要になるけれど、パステル(弊社)ではマーケティング系の仕事が少ない。公共分野や医療や福祉の分野でメッセージを伝えるときに、ケレンはあまり必要ないといつも考えている。

なぜなら、奇抜さがネガティブになることが多いからである(ここを説明すると長くなるので割愛する)。ケレンは、ある種のショックを与えることを目的としているが、もしショックを与えるのであれば、新しい視点を提供するべきであって、既存のモノやコトを奇異なる表現で言語化することではない。

言葉には、一定の「やさしさ」が必要になるし、クリエイティブ側が不要と考えても、絶対条件として求められることがある。どこまでターゲットの立場になって考えるか。どのように受け取られるか、感情的な摩擦やストレスを与えない表現を考えなければならないことが多い。

感覚値の設定と共有:寄り添いの閾値

しかし、やさしさは幼さにつながる。優しさは易しさにもなるからである。つい「やさしくしすぎてしまうこと」に気を配る必要がある。とはいえ、「それは寄り添いすぎ」「これは離れすぎ」という感覚は、もちろん定量評価も明確な定義もできない。線引きは難しい。

コンセプトテキストを立てることの大切さはきっとここにあって、そこで使う言葉をステークホルダーで吟味することによって、寄り添いの閾値が見えてくる。コンセプトテキストはプロジェクトや企画の言語化や編集的な情報整理だけではなくて、その過程で調整する寄り添い具合でチーム内の違和感を最小化し、共通言語や認識をもつことである。

これが、デザインや色彩設計のトンマナにも大きく影響するし、コピーを書くときにも指針になる。だから、理想的には、アウターに使えないコンセプトテキストは必然的に良くないと思う。適切な寄り添いの閾値が設定されていないのなら、それはコンセプトを正確に表現できていないから。

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