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スウェーデンのスタートアップ企業が手掛ける、手に特化したパワースーツとは

スウェーデンのBioservo Technologiesによる、手の動作をアシストするパワースーツを取り上げる。同社はジェトロ初となる、日本の社会課題解決をテーマとした海外スタートアップコンテストでアワードウィナーとなった企業だ。

パワースーツとは、人が装着することで動作や姿勢をアシストする機器のこと。パワードウエアやアシストスーツなどとも呼ばれている。日本でも、パナソニックの「パワーアシストスーツ」をはじめ、荷物の上げ下げの際に腰の負担を軽減するタイプが数社から出ているので、ご存じの方も多いだろう。

アシストだけでなく、データ収集とデジタル評価も可能

昨今の欧米ではロボットが力仕事の多くを担うようになり、腰や肩などよりも手に関するけがや症状が特に多くなってきているとのことで、Bioservo Technologiesはそこに注力している。

手にかかる負荷を軽減するパワースーツの開発を行う同社は、仕事時に装着するプロフェッショナル仕様の「Ironhand(アイアンハンド)」*1と、病気、けが、脳卒中、あるいは高齢者などヘルスケア領域で活用する補助グローブをすでに製品化している。

https://www.bioservo.com/

Ironhandは、グローブ、パワーパック付きのバックパック、2本のアームストラップで構成されている。使用者の手指が物をつかむ動作に準じて把持力と持久力を補足することで筋肉の緊張度を和らげ、エネルギーの消耗減少をサポートする仕組みを持つ。

専用アプリを使ってスマホやタブレット端末から設定が行えるだけでなく、力の加減、感度、バランスなどのカスタマイズ調整やデータ保存もできる。

さらに、使用中のデータ(把持回数、各指に掛かる力、デューティーサイクルなど)を収集し、それを基に客観的なデジタルリスク評価を作成することで、人間工学専門家よる分析にも貢献できるという。けがをしない、させないといった「ウェルビーイング経営」の視点での活用もありそうだ。

国内では、西尾レントオールが2020年にIronhandを建設業やメンテナンス業に向けてレンタル・販売する契約を結んでおり、2022年3月には「Ironhand 2.0システム」を新たに10台発注している*2。

社会課題解決に国を超えたオープンイノベーションが不可欠

Bioservo Technologiesは、ジェトロが2021年に行った、日本の社会課題解決をテーマとした海外スタートアップコンテスト「Japan Challenge for Society 5.0 -Accelerate Innovation with Japan-」の採択企業であり、2022年2月にアワードウィナー15社のうちの1社として選ばれている。

同コンテストは「『課題先進国』ともいわれる日本が抱えるさまざまな社会課題は国内だけで解決できるものではなく、また、政府や自治体、企業など、単独での解決も難しい」として、海外の革新的なビジネスモデルや技術を持つスタートアップとの新たな協業・連携、いわゆる「オープンイノベーション」を後押しする目的で開催されたものだ。

「環境配慮型社会への転換」「労働力減少への対応・生産性向上」「都市・地域のバランスのとれた成長」の3課題をテーマに世界中から提案を募ったところ、募集期間内に53か国・地域から292件の提案があり、2021年12月には18か国・地域の45社が採択されている。今後、日本への招聘による日本企業・自治体とのマッチングサポートも検討しているという。

アワードウィナー企業の一覧と各社の公式サイトは以下から確認できるので、興味ある方はぜひ他の企業についてもご覧いただきたい。新たなインスピレーションにつながるかもしれない。

文:遠竹智寿子
フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員

トップ画像:© Bioservo Technologies (publ) – All rights reserved.

*1 https://www.bioservo.com/professional/
*2 https://www.bioservo.com/press-releases/nishio-has-placed-orders-for-10-ironhand-2-0-systems/

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