アーセナルバードのプロペラについて(ACE COMBAT 7 ‘SKIES UNKNOWN’)

はじめに

エースコンバット7公式コメンタリーを観ていたところ、ふとある点が気になりました。
「アーセナルバードのプロペラってどんぐらいの速さで動いてんの?」
というのも、動画内でこんな発言があったのです。

やはりこのスケールからするとあれですね
この内側の2基の大きいプロペラ、これ直径100メートル近くありますね
これ普通に回すとプロペラの翼端近くがすぐ音速を超えちゃって、超音速プロペラでないと大変ですよね
だから多分ゆっくり回してるんですよね
ゆっくり回して推力になる、そういう特殊な設計になってるんですね

ACE COMBAT Superweapon Official Commentary #3 Arsenal Bird
https://youtu.be/T6aNikeTcbY?si=qFcY-B6Xa7C0OVM0

ところが、ゲーム内で見ても映像を観ても、ゆっくり回転しているようにはとても見えません。これは一度、実際の速度を求めてみなければ!ということで……

検証開始

……Mission3にやってきました。
使用機はX-02S〝ストライクワイバーン〟ミハイ塗装。襲い来るMQ-101(護衛UAV)をガン無視してアーセナルバードの真後ろにつき、スクリーンショットを撮ります

大空を遊弋するクソ鳥。

アーセナルバードの全幅は1,100メートルと判明しているので、この画像から全幅とメインプロペラ直径の比が判れば、プロペラの直径が判ります。
ただ、このままではアーセナルバードが左に傾いているせいで正確な値が出せません。そこで、画像編集ソフト「GIMP」を使ってアーセナルバードを水平にし、「ペイント3D」でピクセル(px)数を調べます。

キモい形をしているメインプロペラ。どうやら大小2つの4翅プロペラを反転させている模様。

アーセナルバードの全幅は1035px、メインプロペラ(大)の直径は83pxと判明しました。
アーセナルバードの全幅が1035px=1100mなので、1px≈1.06m。 よって大プロペラの直径は83px≈88mと判ります。

プロペラの直径が判ったので、あとはプロペラの回転数が必要です。回転数の単位は「rpm(rounds per minute: 毎分回転数)」が一般的ですが、今回は誤差を少なくするために「rps(rounds per second: 毎秒回転数)」を用います。

この動画の0:17付近の映像を0.25倍速にし、ストップウォッチを片手にプロペラが一回転に要する時間を測ります。
結果は2.8秒。0.25倍速でこの時間なので、等倍にすると0.45秒で一回転している計算になります。
0.45秒で一回転ですので、毎秒回転数(rps)≈2.22となります。

計算

さて、これで全ての材料が揃いました。以下に示しましょう。

メインプロペラの半径(r)≈44メートル
毎秒回転数(s)≈2.22回転
(π≈3.14)

ここから、メインプロペラの翼端速度(v)を求めていきましょう。
プロペラ半径r(単位: m)と回転数s(単位: rps)から翼端速度v(単位: mps)を求めたい場合、v=2πrsとなります。
この式に従って値を代入し、計算を行います。

[r≈44, s≈2.22, π≈3.14]
v=2πrs
≈2π*44*2.22
=195.36π
≈613.43

vの単位はmps(メートル毎秒)なので、メインプロペラの翼端速度は約613.43mpsであると判明しました。
もう既に結果が見えているような気もしますが、一応音速で割ってマッハ数を出しておきましょう。

[1Mach≈340.29mps]
613.43mps≈1.79Mach

……なんとプロペラの翼端は実にマッハ1.8という超音速で動いていたことが判明しました。ギリ許容範囲とか言えるレベルの速さじゃありません
一応超音速プロペラというもの自体は存在しますが、アーセナルバードのプロペラはやや変則的な形ではあるものの、通常のプロペラのように見えます
もし金剛不壊の機体・プロペラで無理矢理飛んでいたとすれば、アーセナルバードはUAVなぞ搭載しなくても、敵の近くを飛ぶだけで激烈なソニックブームと轟音で敵を追い払えたかもしれません(というか射出されたUAVも粉々に砕けるか吹き飛ばされるかで役に立たないでしょうね)。

超音速プロペラを備えたリパブリックXF-84H〝サンダースクリーチ(雷鳴)〟。「screech(金切声)」という愛称の由来である轟音は、近くで作業をしていたクルーを失神させたこともあった。
(画像出典: Wikimedia Commons "File:Republic XF-84H Thunderscreech Republic XF-84H, 51-17060-FS-060 on display at Edwards Air Force Base, 1950's (16148472550).jpg")


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