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市川豊玉

2006年に長女が生まれた。

僕は女兄弟がいないので、
雛祭りも雛人形も経験がない。

お宮参りも初めてだったが、
ちょうど日本独自の美意識や、
日本古来の伝統文化に惹かれ始めていた。

祖父、父と受け継がれた俳句の趣味も、
僕が受け継ごうと考えていた。

雛人形は伝統工芸であり、
いい出遭いを求めて浅草橋に行く。

人形店で気に入った作家を探した。
すぐに見つかった。

市川豊玉という。

清らかな表情に魅せられた。
同じ顔はふたつとない。

百貨店にも川越にも行き、決め手はなかったが、
逆にこの人しかいないとは思った。

浅草橋の本店で買い揃えた。

次の子が男の子だったら、とか、
飾る場所や保管場所は、とか、
考えなかったところが、いかにも僕らしい。

将来を考えるようになったとはいえ、
その時の最善を考えることは変わらない。

だから、飾ったり仕舞ったり、
毎年大変だけれども、この表情を見て、
やはりこれに決めてよかったと毎年思う。

この豊玉を飾る人は何処かで、
同じような思いをしているかもしれない。

娘の成長を願い、感謝する。
桃の節句に、俳句を詠む。

初めてのことばかりだった。
僕は父親として、未知の世界を探検する。

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