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東京は坂道が多い

グーグルマップのストリートビューのサービスが提供されるようになってから,インターネットに接続したパソコンから,まるで通りを歩くような画面を見ることができるようになりました.データがある場合,現在のストリートビューだけでなく,少し前の様子を見ることもできます.将来,何十年分ものデータが蓄積されれば,あたかもタイムマシンのようなサービスになるでしょう.

 街は変わらないようで,実はダイナミックに変化し続けています.人々が暮らしている住宅地域では,古くなった建物から一軒づつ建て替えられて,新しくなってゆきます.通勤や通学で,そこを足早に通る人々には一瞬「建て替えているんだ」と思うくらいでしょう.建物が完成すれば.建物は,ずっとそこにあったかのように,街に溶け込んでゆきます.以前の街並みは,やがて,人々の記憶から消えて行きます.それはとても自然なことです.

 東京の街には坂道が沢山あります.様々な車が通る大きな坂道から,階段になっていて人しか通れない小さな坂道まで,いろいろあります.だいぶ昔に,よく行ったことのある階段の坂道をストリートビューで見てみたら,階段の周りの建物はほとんど建て替えられて,私の記憶とは異なる景色になっていました.でも,よく見てみると坂道の階段や手摺りは昔のままのようでした.

 別に全く気にする必要のないことですが,今日,あなたが通勤や通学で急いで上った坂道には,昔にも同じように坂道を上った人たちがいます.その人たちが,その時何を考えていたのかはわかりません.明るい気分の人もいれば,暗い気分の人もいたことでしょう.街はモノだけでなく,大勢の人々の思念でできているのです.デザイナーはそれを忘れてはいけません.

 私たちは,どんなに些細なことでもかまいませんが,常に何か新しいもの創りだして行かなければなりません.何か新しいものをです.何も思いつかない時は,坂道の階段をゆっくりと登りながら,時の流れを考えてみるとよいかもしれません.そこを曲がったら...明日の風が吹いていますよ,たぶん.

それでは,また,何時か何処かで.

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